最近、宇宙を移動するための新しい推進力のアイデアが、次々と出てきている。太陽帆船と化学推進という典型的な議論に加えて、第三の方法として、原子力ロケットエンジンの可能性がある。NASAのInstitute of Advanced Conceptsは、Positron Dynamicsという企業に、新しいタイプの核分裂フラグメントロケットエンジン(FFRE)を開発するための助成金を提供した。FFREは、化学エンジンの馬力とソーラーセイルの寿命のバランスを取ることができる。
FFREはそれ自体新しい概念ではないが、実用化には膨大な技術的ハードルがある。比推力が高く、出力密度が非常に高いという長所があるが、複雑なプラズマ浮遊を必要とするなどの短所もある。
Positron Dynamics社は、他の研究分野から派生した2つのブレークスルーを利用することで、このバランスを崩したいと考えている。ひとつは、核分裂性物質を超軽量のエアロゲルに封入する方法。もうひとつは、これらの核分裂粒子を封じ込めるために超伝導磁石を実装することだ。
FFREは、地球上でエネルギーを生み出す原子力発電所と同じ核プロセスを利用している。しかし、電気だけでなく、推力も発生させることができ、しかも非常に大きな推力を得ることが出来る。しかし、地球上の核分裂炉で使われているようなウラン燃料を棒状にして宇宙へ送ることは現実的ではない。
そこで、燃料を人間が開発した最も軽い物質に埋め込むことで、その問題を解決した。エアロゲルは、非常に空気の多い物質で、トップの画像のように、人が持つと空気のように見える。核分裂反応のための燃料粒子をエアロゲルに埋め込めば、燃料を一緒に保持しながらも、全体の構造を軌道に乗せられるほど軽くすることができる便利な方法となるはずだ。
しかし、エアロゲルの構造そのものは、核分裂片がバラバラになったときにそれを閉じ込めるのにはあまり役立たない。そこで、超伝導磁石の出番となる。
超伝導磁石は、核融合実験プラントにおいて、核融合燃料を加熱するために必要なプラズマを閉じ込めるために使用されるが、通常の物質では破壊されてしまうため、超伝導磁石を使用することが一般的である。核融合研究への関心が高まる中、高出力磁石の研究にも注目が集まっている。
FFREに高出力磁石を搭載することで、核分裂片をすべて同じ方向に流すことができ、事実上の推力ベクトルとすることができる。また、核分裂片がエンジンの他の部分を破壊することがないという利点もある。
今のところ、これは非常に理論的なものであり、克服すべきハードルがたくさんある。しかし、それこそがNIACの目的であり、初期段階のプロジェクトに資金を提供し、そのリスクを軽減しようとする試みなのだ。いつの日か、FFREは、多くのロケット科学者が夢見るスピードと燃費のスイートスポットに到達することが出来るかもしれない。
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この記事は、ANDY TOMASWICK氏によって執筆され、Universe Todayに掲載されたものを、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際)に則り、翻訳・転載したものです。元記事はこちらからお読み頂けます。
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