宇宙には、我々の想像を遙かに超える天体が数多く存在する。それは、ブラックホールだったり、中性子星と言った、名前がよく知られているものもあれば、アルコールを噴出したり、ダイヤモンドの塊の星だったりと、珍しい物も見つかっている。
そんな中、以前より推測がなされてきた「ダイヤモンドの雨が降る惑星」について、最新の研究では、この特異な現象は、どうやらこれまで考えられていたよりも、宇宙では割と一般的な存在なのではないかということが明らかになった。
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地球上ではダイヤモンドは希少価値のある宝石として珍重されているが、他の惑星では岩石のようにありふれたものであるかもしれない可能性がありそうだ。天王星や海王星のような氷惑星では、極度の圧力によって水素や炭素などの元素が圧縮され、固体のダイヤモンドが形成され、それが大気中を雨のように降ってくると考えられている。この現象は直接的には検出されていないが、2017年に研究チームがそのプロセスを実験室で再現できたと報告している。
彼らは、世界で最も強力なX線レーザーであるリニアック・コヒーレント光源(LCLS)を炭化水素材料のサンプルに照射することでそれを実現した。これにより、炭化水素のサンプルは瞬時に6,000℃まで加熱され、数百万気圧の強力な衝撃波が発生し、小さな 「ナノダイヤモンド」が形成されたのである。
今回、SLACが主導し、Helmholtz-Zentrum Dresden-Rossendorf (HZDR)、ドイツのロストック大学、フランスのÉcole Polytechniqueによる共同チームは、氷の巨大惑星である海王星と天王星の状況により近い状態を再現し、そこでダイヤモンドが形成されるのかどうかを調べる実験を行った。
2017年の段階で、実験では技術的にダイヤモンドの雨の可能性が示唆されたが、研究チームによると、実験に用いたポリスチレンなど、元の炭化水素材料は、これら氷の巨大惑星の内部に存在する元素を正確にシミュレートしていなかったという。これらの惑星には酸素も大量に存在するため、研究者たちはこの重要な元素を導入できる他の材料を調査した。
そして、これらの惑星の組成をより正確に再現するために、食品包装やペットボトル、容器などによく使われるPET樹脂を使用した。PETには、炭素、水素、酸素がバランス良く含まれているのだ。
ペットボトルからダイヤモンドを生成
ペットボトルに衝撃波を発生させるために、研究者らはSLACのリニアックコヒーレント光源(LCLS)にある極限状態物質(MEC)装置で高出力光レーザーを使用した。そして、LCLSのX線パルスを用いて、プラスチックの中で何が起こっているかを調べた。
X線回折と呼ばれる手法を用いて、材料の原子が小さなダイヤモンド領域に再配列している様子を観察したのだ。そして、小角散乱という、これらの領域が同時にどれだけ速く、どれだけ大きく成長したかを測定する方法を用いた。
この方法で、ダイヤモンドの領域は最大で数ナノメートルの幅まで成長することがわかった。また、材料中に酸素が存在することで、ナノダイヤモンドがより速い速度で成長することを発見した。
HZDRの物理学者でロストック大学教授のDominik Kraus氏は、「酸素の効果は、炭素と水素の分解を加速させ、ナノダイヤモンドの形成を促すものでした。炭素原子がより容易に結合し、ダイヤモンドを形成することを意味します。」と語っている。
海王星や天王星のダイヤモンドは、今回の実験で生成されたナノダイヤモンドよりもはるかに大きく成長し、数百万カラットに達する可能性があると研究者は予想している。
このダイヤモンドは、惑星の氷の層をゆっくりと通り抜け、数千年かけて固い惑星の核の周りに厚い輝きの層を形成する可能性があると、研究者は指摘している。
研究者たちは、ダイヤモンドの存在下で超イオン水が形成される証拠も発見している。
この新しく発見された水の相は、しばしば「高温の黒い氷」と呼ばれ、非常に高い温度と圧力で存在する。
このような極端な条件下では、水分子は崩壊し、酸素原子が結晶格子を形成し、その中で水素原子核が自由に浮遊する。
SLACの科学者であり共同研究者であるSilvia Pandolfi氏は、「地球のコアは主に鉄でできていることがわかっていますが、軽い元素の存在が溶融や相転移の条件をどう変えるかは、多くの実験でまだ調べられていません。私たちの実験は、これらの元素が氷惑星でダイヤモンドが形成される条件をどのように変えることができるかを実証しています。もし私たちが惑星のモデルを正確に作りたいのであれば、惑星内部の実際の組成にできるだけ近づける必要があります。」と述べている。
この新しい研究は、他の惑星でダイヤモンドの雨がどのように形成されるかの全貌を明らかにし、薬物送達、医療センサー、非侵襲手術、持続可能な製造、量子エレクトロニクスに幅広く応用できるナノダイヤモンドの新しい生産方法につながる可能性があるとのことだ。
太陽系で最も遠い惑星である天王星と海王星についてはほとんど知られていないため、ダイヤモンドの雨の研究は仮説にとどまっている。
1980年代にNASAのボイジャー2号がこの2つの氷惑星を通過したことはある。そのデータは現在も研究に利用されている。
しかし、NASAのあるグループは、この惑星への新しいミッションの可能性について概説しており、おそらく今後10年のうちに打ち上げられる予定だ。
「それは素晴らしいことだ」とKraus氏は言った。
たとえ10年か20年かかるとしても、より多くのデータが得られることを大いに期待しているという。
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