日産が全固体電池の試作生産設備を公開 – NASAなどと協力し2028年度の実用化を目指す

masapoco
投稿日 2022年4月9日 14:19
solid battery nissan image

日産自動車は2022年4月8日、バッテリーの長寿命か、高速充電を実現するという「全固体電池」の積層ラミネートセル試作生産設備を公開した。2028年度中の実用化を目指すという。

同社はこの設備を神奈川県横須賀市の総合研究所内に設置し、全固体電池の技術開発を推進するという。

全固体電池は、これまで電気自動車(以下EV)で課題となっていた充電時間、バッテリー持続時間について大幅な革新が見込める“ゲームチェンジャー”となる技術として期待されている技術だ。リチウムイオン充電池比で約2倍となる高いエネルギー密度や、優れた充放電性能による大幅な充電時間の短縮、バッテリー自体の長寿命化、そしてこれまで以上に安価な材料の組み合わせによるバッテリーコストの低減等が見込まれ、ピックアップトラックなども含めた幅広いセグメントへの搭載が期待でき、EV普及の促進剤になると言われている。

同社は、長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」において、2028年度までに自社開発の全固体電池を搭載したEVを市場投入することを目指している。また、全固体電池の実用化により、2028年までにバッテリーパックの価格をkWhあたり75ドルに、そして最終的にはkWhあたり65ドルまで下げることが可能と考えているようだ。このkWhあたり65ドルという価格は、ガソリン車と同等までEVの価格を下げることにつながり、より一層EVの普及に繋がるだろう。

また、同社は電池の性能向上には材料の選定が重要と考えており、アメリカ航空宇宙局(NASA)などと連携していると説明。EV市場で優位に立ちたい考えだ。

カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究者も参加する日産とNASAのパートナーシップは、今回の試作セルの先を見据えている可能性がある。今日の固体電池の設計では、リチウムイオン電池の基本的な部分(主に可燃性の液体電解質)が変更されているが、コバルトやニッケルなどの希少金属(レアメタル)や高価な金属の使用など、他の部分はほぼそのまま流用される形になっている。このようなレアメタルを排除することで、バッテリーが将来的に安価になるだけでなく、より環境面、倫理面での改善も期待できる。なぜなら、コバルトの採掘には、人権侵害や環境破壊がつきものだからだ。

AP通信によると、このパートナーシップは、潜在的な特性を決定するために混ぜ合わせることができる材料の大規模なデータベースからなる「独自の材料情報学プラットフォーム」を作成するとのことだ。

全固体電池に関しては、他の自動車メーカーも開発に取り組んでいる。

Volkswagenが支援するQuantum Scapeは、2024年に販売を開始する予定であり、Fordは、開発中の全固体電池を10年以内に実用化できると述べている。また、トヨタは昨年、2020年代半ばまでにバッテリーの製造を開始したいと述べたが、まだ技術研究を続ける必要があると述べている。現時点では全固体電池の製造コストはまだまだ高い。実用化にはしばらく時間がかかりそうだ。



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