ブラックホールが衝突するとニュートリノも生成される

masapoco
投稿日 2022年11月7日 11:36
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天文学者が初めて宇宙のランダムな方向からやってくる超高エネルギーニュートリノを検出して以来、彼らはその発生源を突き止められずにいた。しかし、新しい仮説は、ブラックホールの合体という、ありそうもない発生源を示唆している。

ニュートリノは極めて幽霊のような粒子である。電荷を持たず、弱い核力によって通常の物質とまれに相互作用するだけである。何兆個ものニュートリノが、1秒間に1平方センチメートルの体内を通過する。そのため、ニュートリノを捕らえるには、本当に巨大な観測所が必要だ。最も大きいのはアイスキューブ・ニュートリノ観測所(ICNO)で、南極の氷床に沈められた一連の検出器だ。時折、ニュートリノが水の氷の分子にぶつかると、観測所が検出できる閃光を放つのだ。

アイスキューブは長年にわたって数え切れないほどの事象を見てきたが、いくつかの事象は際立っている。中には、ニュートリノが非常に高エネルギーで、それを発生させるもっともらしいシナリオを考え出すのが難しいほどだ。

そこで新しい研究では、ブラックホールが最も高いエネルギーのニュートリノに関与している可能性を示唆している。しかし、これはブラックホール単体では機能せず、ブラックホールは電気を帯びたプラズマに囲まれていなければならない。そのプラズマは、降着円盤を形成しながらブラックホールを取り囲むように旋回する。降着円盤の中の非常に強い磁場と電場は、ブラックホールを巻き込んで、物質をジェットとして外部に送り出すことができる。

2つのブラックホールが合体すると、ジェットの方向が変わり、時には合体によって放出された重力エネルギーによって、ジェットが加速されることもある。

新しい研究の著者らは、もし条件が整えば、合体の際のジェットの増強が、非常に高いエネルギーのニュートリノの動力源になることを示唆している。

アイスキューブが検出した高エネルギーニュートリノの観測された数と一致させるために、著者らはこれらのブラックホールがそれほど頻繁に合体する必要がないことを示唆している。もしニュートリノが超巨大ブラックホールの合体によって発生するのであれば、10万年から1000万年に1度、1立方ギガパーセクの体積の中で衝突すればよいことになる。そして、もしニュートリノが恒星規模のブラックホール合体によって発生するのであれば、1立方ギガパーセクごとに毎年10回から100回発生すればよいことになる。

この結果は、恒星質量のブラックホールと超巨大ブラックホールの両方の合併率の予想範囲内にあるため、有望な数字と言える。つまり、メカニズムとしては、もっともなことなのだ。今後さらに観測を重ね、このような高エネルギー粒子の起源を突き止めることができる事が期待される。

研究の要旨

最近、LIGOやVirgoによって恒星質量のブラックホールの合体が検出されたことは、このような合体がよく起こることを示唆している。さらに、銀河の中心部にある超巨大ブラックホールも合体することが分かっており、通常、一生のうちに少なくとも1回、場合によっては何度も合体していることが予想される。ジェットが存在する場合、これらの合体はほとんどの場合、ジェットの方向転換とそれに伴うジェットの歳差運動を伴い、ジェットが周囲の物質と相互作用を起こし、非常に高いエネルギーの粒子、ひいては高エネルギーのガンマ線やニュートリノを発生させるのだ。この研究では、このような合体がどのような条件下で、アイスキューブ・ニュートリノ観測所で測定された拡散性天体ニュートリノ束の発生源となり得るかを調べる。計算における主な自由パラメータは、合体の頻度と重力で放出されたエネルギーからニュートリノに移行するエネルギーの割合に関するものである。我々はSMBHの合体率は約10-7から10-5Gpc-3yr-1の間にあるはずであることを示す。このような合体の際にニュートリノに移行するエネルギーの割合は、約10-6-3⋅10-4の間にあることがわかった。恒星質量のBBHの合体では、合体速度は約10-100Gpc-3yr-1で,ニュートリノと重力波のエネルギーの期待比はSMBHと同程度の約2・10-5・10-3になる。これらの値は合理的なパラメータ範囲にあり、検出されたニュートリノのフラックスレベルでのニュートリノ生成が現実的な可能性であることを示している。



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