世界の温室効果ガス排出量の3.5%を占めるといわれる航空機による輸送は、二酸化炭素やメタンなど、年間約13億トンのガスを排出している。これを削減するためには、航空機の電動化が重要な鍵となるが、これは言うほど簡単なことではない。ヘリコプターの代わりに電気式垂直離着陸機(eVTOL)を使うことは可能だが、旅客機や貨物機のような大型の航空機には大量の電力が必要で、現在のオール電化技術では到底対応しきれない。
MITのガスタービン研究所のエンジニアは、少なくとも1メガワットの電力を生み出すことができる電気モーターを開発している。現在の電気モーターは数百キロワットが限界で、eVTOLの中には最大600キロワットのものもあるが、メガワットの電気モーターならガスタービンと組み合わせても十分で、ジェット機の環境への影響を軽減できる。最終的には、バッテリーや燃料電池から電力を供給して、化石燃料を使わずに航空機を動かすことも可能だ。
エンジニアたちは、今年発表した一連の論文の中で、このシステムについて説明している。“スーツケースほどの大きさ”のこのモーターは、熱交換器と高速ローターで構成されている。熱交換器は、トルクを伝達しながらすべてを冷やす。ローターには極性の異なる磁石とコンパクトなステーターがあり、銅のコイルが複雑に連なっている。このシステム全体は、モーターと同じ大きさの30枚のカスタム回路基板で構成される分散型パワーエレクトロニクスシステムと対になっています。ステーターの電流を高周波で変化させ、磁界をモーターの動作に必要な高速で走らせる役割を担っている。
それぞれの部品はすでに個別にテストされているが、エンジニアはこの秋に組み立てる前に、安全性を確認するためにテストを続ける予定だ。そこから先は、いくつかの難題に直面することになる。一説には、理想的な出力は17kW/kgとされているが、モーターは1kgあたり最低13kW/kgの出力がないと意味がない。また、航空機の空力的なデザインも重要な要素だ。また、新しい航空技術には、規制のハードルがつきものだ。もし、このシステムが実用化されれば、数メガワットのモーターにスケールアップすることも検討されるだろう。
論文
- Paper: “Design and Manufacturing of a High-Specific-Power Electric Machine for Aircraft Propulsion”
- Paper: “A Megawatt-Class Electrical Machine Technology Demonstrator For Turbo-Electric Propulsion”
- Paper: “Design and Optimization of an Inverter for a One-Megawatt Ultra-Light Motor Drive”
- Paper: “Novel Channel-type Heat Exchanger for a Megawatt-Class Integrated Motor Drive Technology Demonstrator”
- Paper: “High Speed Rotor System for a Megawatt-Class Integrated Motor Drive Technology Demonstrator”
参考文献
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