現在、世界中で最も使われているバッテリーと言えば、「リチウムイオン電池」だろう。
リチウムイオン電池は、その信頼性と高いエネルギー密度により、スマートフォンや電気自動車など、あらゆる場面で用いられている。しかし、リチウムは希少で高価であり、電池が損傷したり、不適切に使用されると爆発したり、燃え上がる危険性がある。特に、世界の潮流が再生可能エネルギーや電気自動車にシフトしていく中で、より安価で安全な代替品が必要とされている。
今回マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、入手しやすく安価な材料で、新しいタイプの電池を設計した。このバッテリーの材料は、アルミニウム、硫黄、塩という非常に一般的で安価な材料から作られる。この電池は低コストであるだけでなく、火災や故障に強く、非常に高速に充電できるため、家庭の電力供給や電気自動車の充電に役立つ可能性がある。
MITのエンジニアは、試行錯誤の結果、一方の電極にアルミニウム、もう一方の電極に硫黄を採用し、電解質としてクロロアルミン酸塩を溶かすことに成功した。いずれも安価でありふれた材料であるだけでなく、可燃性ではないので火災や爆発の心配もない。
実験では、この電池は何百回もの充電サイクルに耐えることができ、充電も非常に速く、1分以内に完了するものもあることが確認された。また、価格も同じサイズのリチウムイオン電池の6分の1である。
このアルミニウム-イオン電池は、200℃までの高温で作動するだけでなく、高温の方がより効率的に動作する。110℃では、25℃のときよりも25倍も速く充電できるのだ。そして重要なのは、電池がこの高温に達するために外部エネルギーを必要としないことである。通常の充電と放電のサイクルで、電池は十分に高温に保たれるのだ。
電解液に用いる塩の種類は、融点が低いという理由で選ばれたが、偶然にも別の利点がある。それは、デンドライトの形成を自然に防いでくれることだ。デンドライトとは、2つの電極の間で徐々に成長してショートを起こす金属のことで、電池、特にリチウムイオン電池にとって大きなハードルとなっている。
参考:リチウムバッテリーの劣化を結晶成長の観点から制御する(名古屋大学・宇治原研究室)
研究チームによると、この電池の設計は、再生可能エネルギーから各家庭に電力を供給するような、数十キロワット時の規模に最も適しているという。また、急速充電が可能なため、電気自動車の充電ステーションとしても有用だろう。ただし、規模によっては、溶融塩電解液とアルミニウムやニッケルの電極を用いたバッテリーなど、他の設計タイプの電池の方がより効果的に機能する可能性がある。
このアルミニウム-硫黄電池の特許は、この設計を説明した研究の著者の一人が共同設立したアバンティという分社にライセンスされている。まずは、この電池を大規模に製造し、ストレステストを実施するとのことだ。
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