最先端AIは果たして創造力を有していると言えるのだろうか?この議論は未だ結論の出ない話題ではあるが、1つの指標として、最先端のAI言語モデルである、OpenAIのGPT-4が、創造性の中核的指標である発散的思考を測定するためにデザインされたテストにおいて、人間の参加者を凌駕したことが、アーカンソー大学の研究によって明らかになった。
このAIの能力の探求は、単一の正解を持たない問題に対してユニークで複雑な解決策を生み出す可能性を示している。
発散的思考とは、例えば “両親と政治の話をしないようにするにはどうしたらいいか?”といったような、予想される解答が一つもない質問に対して、独自の解答を生み出す能力のことである。この研究で、GPT-4は人間の参加者よりも独創的で、詳細な答えを出したのだ。
「The current state of artificial intelligence generative language models is more creative than humans on divergent thinking tasks(人工知能の生成言語モデルの現状は、発散的思考タスクにおいて人間よりも創造的である)」と題された彼らの研究は、創造性を測定するために3つの特定のテストを利用した:
- 代替使用課題:代替使用課題:参加者は、ロープやフォークといった日常品の創造的な使い道を考えるよう求められた。
- 結果課題:この課題では、参加者は仮定のシナリオの潜在的な結果、例えば、人間が睡眠を必要としないことの意味を思い描くことが求められた。
- 発散連想課題:この課題では、参加者は意味的に関連性のない名詞を10個作成し、密接に関連する概念を超えて考えることに挑戦した。
回答は、回答数、回答の長さ、単語間の意味の違いについて評価された。最終的に著者らは、「全体として、GPT-4は、回答の流暢さをコントロールした場合でも、発散的思考課題のそれぞれにおいて、人間よりも独創的で詳細なものであった」としている。言い換えれば、GPT-4は発散的思考課題の全テストにおいて、より高い創造的潜在能力を示したのである。
しかし、研究者たちは、これらの結果は重要ではあるが、創造性の1つの側面、つまり創造的可能性を示しているに過ぎないことに注意を促している。
創造性というのは今回テストされた発散的思考によってのみ定義されるのではなく、創造的活動への積極的な参加や成果も含まれることを強調している。
アーカンソー大学の心理科学博士課程の学生Kent F. Hubert氏とKim N. Awa氏は、AIと人間の創造性の決定的な違いを指摘した:「AIには主体性がなく、創造的能力を活性化させるためには人間との相互作用が必要ですが、そうでなければ休眠状態のままです」。
さらに、この研究ではAIの反応の適切さは評価されていないため、人間の参加者が創造性とリアリズムの必要性のバランスをどのようにとっているのかという疑問も残されている。AIはより多くの回答や独創的な回答を提供したかもしれないが、人間の参加者は、現実世界に根ざした回答でなければならないことに制約を感じたかもしれない。
Awa氏はまた、精巧な回答を書こうとする人間のモチベーションは高くなかったかもしれないと認め、「創造性をどのように運用するのか?このようなテストを人間に使って、本当にさまざまな人に一般化できると言えるのだろうか?創造的思考を幅広く評価しているのだろうか?そのため、発散的思考の最も一般的な尺度が何なのかを批判的に検討する必要があると思います」と、述べている。
この研究は、人間対AIの創造性を決定的に測定するものではなく、大規模言語モデルの能力が進歩していることを示すものである。
AIが人間の創造性に取って代わるかどうかという真の疑問には、まだ答えがない。むしろ著者らは、AIがインスピレーションの源であり、人間の創造性を高めるツールであり、創造性の障壁を克服する道を約束するものであると想定し、将来を楽観視している。
AIと創造性の交わりは、人間と機械のコラボレーションに新たな可能性をもたらし、AIが創造的プロセスを支援し、前例のないレベルのイノベーションをもたらす可能性のある未来を垣間見せてくれる。
論文
- Scientific Reports: The current state of artificial intelligence generative language models is more creative than humans on divergent thinking tasks
参考文献
- University of Arkansas: AI Outperforms Humans in Standardized Tests of Creative Potential
研究の要旨
ChatGPTのような一般にアクセス可能な人工知能(AI)の大規模言語モデルの出現は、AIの能力の意味合いについて世界的な議論を引き起こした。AIに関する新たな研究は、創造的な可能性が人間特有の特性であるという仮定を覆すものであり、人間の認識とAIが客観的に創造できるものとの間には断絶があるように思われる。ここでは、AIと比較して人間の創造的可能性を評価することを目的とした。本研究では、人間の参加者(N = 151)とGPT-4が、代替使用課題、結果課題、発散連想課題の回答を提供した。その結果、AIはヒトと比較して、各発散的思考測定に沿った創造性が強固に高いことがわかった。特に、回答の流暢さをコントロールした場合、AIの方が独創的で精巧であった。本結果は、AI言語モデルの現状が、人間の回答者よりも高い創造的可能性を示していることを示唆している。
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