ウェブブラウザのデフォルト検索エンジンを切り替えることはちょっと手間のかかる作業だが不可能ではない。だがわざわざそれをする人はほとんどいないだろう。つまり、デフォルトの座を獲得すれば、その後の地位は安泰な訳だが、Googleが複数のブラウザ、スマートフォン、プラットフォームでデフォルト検索エンジンの地位を獲得するために費やす費用は我々の想像を遥かに超える物だった。なんと、2021年の単年だけで総額263億ドル(3兆9350億円)もの巨額のコストを費やしてきたのだ。
10月27日、Googleは司法省の独占裁判において検索事業の弁護を開始した。最初の証人として召喚されたのは、Googleの検索担当上級副社長であるPrabhakar Raghavan氏で、同氏は2021年にGoogleが一般的なスマートフォンやウェブブラウザのメーカーと結んだデフォルト契約が「同社にとって最大のコスト」であったと証言ていることが報じられた。
Raghavan氏の証言で初めて明らかになったのは、Googleは2021年にデフォルト契約のために263億ドルを支払っており、検索エンジンのデフォルト状態に投資しているように見える一方で、同年の検索広告による収入は1464億ドルに上るということだ。この数字は、Googleの検索広告収入が約460億ドル、トラフィック獲得コストが約71億ドルだった2014年から「大幅に」増加している。
Raghavan氏は、263億ドルのうちApple社に支払われた金額については言及していない。しかし、CNBCの報道によると、プライベート・ウェルス・マネジメント会社Bernsteinの試算によると、GoogleはAppleに対し、デフォルト特権の対価として今年最大190億ドルを支払う可能性があるという。
Raghavan氏の証言に先立ち、Googleはこの情報を開示することを拒んでいた。Bloombergによると、「そのような透明性は将来の取引に悪影響を及ぼす可能性がある」とGoogleは主張していたようだが、Amit Mehta判事はこれを退け、今回具体的な数字が明らかになったのだ。
Raghavan氏の証言は、Googleが司法省の主張する、司法省が違法ではないかと指摘する既定契約によって検索で優位に立ったという主張に対抗するためのものだった。Googleは、これらの契約は合法であると主張し、Raghavan氏は、Googleの優位性はこれらの契約によるものではなく、製品の改善と革新への絶え間ない投資によるものであると証言した、とThe New York Times紙は報じている。
Raghavan氏は法廷で、Googleは自らをすべての競争相手の上に立っていると考えるのではなく、関連性を失わないために投資と革新を余儀なくされていると述べた。
Raghavan氏によれば、Googleは他の検索エンジンだけでなく、幅広いライバルとの競争に直面しており、Bingではなく、AmazonやTikTokをトップ・ライバルと見ているとのことだ。特に若いユーザーの中には(Raghavan氏によれば)、検索エンジンを “Googleじいさん”という蔑称で呼ぶ人もいるという。Raghavan氏は、「アメリカ人が1日にネットサーフィンに費やす時間は約23分であるのに対し、アプリケーションを使用する時間は約4時間である」という調査結果を引用し、Googleが若いユーザーを失えば、脅威はさらに大きくなるという調査結果を示したとNYT紙は報じている。
Rutersによると、月曜日に証言に立つGoogle CEOのSundar Pichai氏は、Googleのスマートな投資が今日の検索帝国を築いた原因について、さらなる洞察を提供する可能性が高い。しかし、Pichai氏はまた、なぜGoogleがデフォルト契約に多額の投資をしているのか、もしそれが競争の先を行く巨大企業の戦略の重要な部分でないのなら、という司法省の質問にも直面することになるだろう。
Sources
- Bloomberg Law: Google Paid $26 Billion to Be Default Search Engine in 2021 (1)
- CNBC: Google paid $26 billion in 2021 to become the default search engine on browsers and phones
- The New York Times:
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