今週初めに開催されたGoogleの年次健康イベント「The Check Up」で、同社は、医療用大規模言語モデル(LLM)の改善や、がん治療、母体の健康や乳がん発見のための超音波検査、結核(TB)検診にAIを活用するパートナーシップなど、健康に関する人工知能(AI)の研究についての最新情報を発表した。
最大のニュースは、Googleの医療LLM、通称Med-PaLMに関するもので、ChatGPTと米国医師免許試験(USMLE)の問題に対するパフォーマンスに関する争いが続いている。
LLMは、その中核をなすもので、要約、予測、テキスト生成など、自然言語処理の幅広いタスクを実行するために設計されたツールである。Googleは昨年、LLMであるPathways Language Model (PaLM)を発表した。その後、PaLMを医療分野向けにチューニングしたMed-PaLMを発表し、今回そのアップデート版であるMed-PaLM 2を開発したのだ。
初代Med-PaLMは、USMLE形式の多肢選択問題や自由形式問題で合格点を獲得し、さらにその回答の根拠を示すことが出来た。Med-PaLM 2は前モデルを上回り、最近では85%のスコアを獲得し、「“エキスパート”医師レベルのパフォーマンスを発揮している」と、発表されている。
発表では、このツールが類似のAIモデルを凌駕していることも指摘されているが、Googleは、実世界での適用にはMed-PaLM 2のさらなる改良が必要であるとしている。このモデルは、科学的事実性、正確性、医学的合意、推論、バイアス、有害性など14の基準に対してテストされ、その後、世界中のさまざまな分野の臨床医と非臨床医を含む専門家によって評価されたと報告されている。
しかし、これらの評価では、医学的な質問に対して効果的かつ適切に回答するモデルとしてのギャップが浮き彫りになったので、Googleはさらなる研究とテストを通じてその解決を目指す。
また、Googleは、Mayo ClinicとAIによるがんの放射線治療の改善に向けた正式な合意を発表しており、これは両者が近年行ってきたこれまでの取り組みを発展させたものだ。
放射線治療は、CTスキャン上に線を引き、治療中に損傷を受ける可能性のあるがんを近くの健康な組織から分離するのに役立つ「輪郭形成」プロセスを必要とするため、一般的ではあるが時間のかかるがん治療であると発表されている。
今回の提携では、AIがこのプロセスの合理化に役立つかを調査している。2つの組織は、「AIを用いた放射線治療モデルに関する研究を近日中に発表する予定である」と、述べている。
同様に、Googleは、政府系病院における母親と赤ちゃんの健康状態の改善に取り組むケニアの非営利団体Jacaranda Healthと提携し、画像解釈を改善し、母親と赤ちゃんの転帰を高めるためのAI支援超音波診断の潜在的役割を探求すると共有した。
また、台湾の長庚記念病院(CGMH)と提携し、乳がん検診に超音波を使用するための探索的研究を開始した。乳がん検診には通常マンモグラフィーが使用されますが、高額な費用と検診プログラムの不足により、CGMHの患者層の多くはマンモグラフィーにアクセスできない状況にある。
このため、パートナーシップでは、AIを用いた超音波による早期乳がん検出の有用性を検討している。
最後に、Googleは、アフリカ国内の結核ケアに大きな経験を持つ非営利団体Right to Careと協力し、サハラ以南のアフリカでAIを活用した胸部X線ベースの結核検診のアクセシビリティを向上させる予定だ。
これらの取り組みは、健康AIやその他のデジタルヘルスソリューションを促進するためのGoogleの大きな事業の一部である。
Google Cloudは11月、Hackensack Meridian Health、Lifepoint Healthなどと共同で、患者ケアと医療システムの効率化を目指す3つの新しいHealthcare Data Engine(HDE)アクセラレータを開始した。
アクセラレータは、医療システム全体の相互運用性とデータの統一を改善し、デジタルトランスフォーメーションを支援することを目的としている。SDOH(健康の社会的決定要因)の活用と健康の公平性の促進、患者体験とフローを強化するためのオペレーション強化、ケアの質を向上させるためのバリューベースケアと相互運用性の促進に重点を置いている。
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