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核融合技術はエネルギーゲームを変える転換期を迎えている

私たちの社会は、持続可能で安全かつ安価なエネルギー生成手段を提供しながら、2050年頃に二酸化炭素の排出をネットゼロにするという壮大な課題に直面している。

これまで、これらの条件をすべて満たす可能性のある核融合発電の開発は、ほとんどが公的機関から資金提供を受けてきた。しかし、何かが変わりつつある。

核融合産業協会の調査によると、世界の核融合産業に対するプライベートエクイティ(訳注:証券取引所で売買できない未公開株のこと)投資は、2021年の21億米ドルから2022年の47億米ドルと、わずか1年で2倍以上に増加している。

では、このような最近の変化の原動力は何だろうか?実は、ワクワクするようなことがたくさんあるのだ

それを探る前に、ちょっと寄り道して、核融合発電とは何かをおさらいしておこう。

原子を“結合”させる

核融合は、太陽と同じように、2つの重い水素原子を極度の熱と圧力で結合させ、膨大なエネルギーを放出させる仕組みだ。

従来の原子力発電所の核分裂のように原子を分裂させて大量のエネルギーを放出するのとは真逆である。

核融合を大規模に維持することは、安全でクリーンな、ほぼ無尽蔵の電力源を生み出す可能性を持っている。

太陽は、その中心部で約1500万℃の荷電粒子プラズマによる核融合を維持している。地球上では、太陽のような巨大な質量で燃料を圧縮することができないため、数億℃の温度を目指しているのだ。

しかし、ほとんどの核融合炉は、強い磁場を用いて高温のプラズマを「瓶詰め」にして閉じ込めている

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“トカマク”と呼ばれるドーナツ型の磁気閉じ込め装置は、核融合発電の有力な設計案の一つであり、世界中で多くの実験が行われている。 (Christopher Roux, EUROfusion ConsortiumCC BY)

一般に、核融合発電の実用化に向けて克服すべき主な課題は、核融合反応の開始に必要なエネルギー以上のエネルギーを生成する自立的な核融合反応を起こすために必要な、激しく燃えるプラズマを収容できる環境を提供することである。

官民一体となった取り組み

核融合開発は、1950年代から進んできた。そのほとんどは、基礎科学に対する政府の資金援助によって推進された。

現在では、世界各地で民間の核融合企業が増え、核融合エネルギーの商業化に向けて邁進している。これには、政府の意識改革が欠かせない。

米国と英国政府は、戦略的研究プログラムを補完するために、官民パートナーシップを育成している。

例えば、ホワイトハウスは最近、「商用核融合エネルギーのための大胆な10年後のビジョン」を策定すると発表した。

イギリスでは、政府が核融合発電機を国の電力網に接続することを目的としたプログラムに投資している。

実は技術も進歩している

官民一体となった資金調達に加え、核融合炉に必要な技術も飛躍的に進歩している

2021年、MITの科学者とCommonwealth Fusion Systemsは、記録的な磁石を開発し、「大幅に小型化し、低コストで、より速いタイムラインで」SPARCという小型核融合装置を建設することができるようになった。

近年、いくつかの核融合実験も、1億度以上のプラズマ温度を維持するという重要なマイルストーンに到達している。中国のEAST実験、韓国のKSTAR実験、英国のトカマクエナジー社などがそれである。

これらは、太陽内部の状態を再現し、核融合を促進するために極めて高温のプラズマを長時間閉じ込めることができる、前例のない能力であることを示している。

2月には、世界で最も強力なトカマクである欧州合同トーラスが、世界記録となるエネルギー閉じ込めを達成したと発表した。

そして、純発電量を実証する次のステップの核融合エネルギー実験であるITERは、フランスで建設中で、現在約80%が完成している。

核融合への道も磁石だけではない。2021年11月、カリフォルニア州ローレンス・リバモア国立研究所の国立点火施設は、慣性閉じ込め核融合の歴史的な前進を達成した。

200個近い強力なレーザーを集中させて、鉛筆の消しゴムほどの大きさのターゲットを閉じ込め圧縮することで、短時間に核融合エネルギーを発生させる小さな核融合「ホットスポット」を作り出したのだ。

オーストラリアでは、HB11という会社が、高出力レーザーと磁場の組み合わせによる陽子-ホウ素核融合技術の開発を進めている。

核融合と自然エネルギーは両立できる

核融合への投資が、他の再生可能エネルギーや化石燃料からの脱却を犠牲にすることがないようにすることが重要である。

太陽光、風力、揚水発電など、現在の再生可能エネルギー技術の採用を拡大する一方で、次世代の電力生産のためのソリューションを開発する余裕はあるのだ。

この戦略は、米国が最近発表した「Net-Zero Game Changers Initiative」でも示されている。この計画では、核融合の商業的開発と並行して、急速な脱炭素化への道筋をつけることに資源投資の照準を合わせている。

COVID-19ワクチンの迅速な開発は、その一例だ。

多くの科学者、エンジニア、そして今や政府や民間投資家(そしてファッションデザイナーまでも)が、核融合エネルギーは夢物語ではなく、追求する価値のあるソリューションであると判断していることは明らかだ。今まさに、核融合発電を現実のものとするための最良のチャンスなのだ。

本記事はThe Conversationに掲載された記事「How far has nuclear fusion power come? We could be at a turning point for the technology」について、Creative Commonsのライセンスおよび執筆者の翻訳許諾の下、翻訳・転載しています。

著者紹介
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Nathan Garland

Lecturer in Applied Mathematics and Physics, Griffith University

応用数学、物理学の講師、研究者。ブリスベンのグリフィス大学を拠点に活動。米国ロスアラモス国立研究所にてポスドク。数学、物理学、高等教育に関心を持つ。

Twitter: https://twitter.com/n8sci

著者紹介
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Matthew Hole

Senior Research Fellow, Mathematical Sciences Institute, Australian National University

物理学、数学、電気工学の学位を持ち、シドニー大学でプラズマ遠心分離機の物理学に関する博士号を取得。2001年から2002年にかけて、英国原子力庁で革新的な球形トカマクコンセプトによる核融合発電の研究に従事。2003年から2004年にかけては、シドニー大学物理学部で宇宙プラズマ物理学に従事。2005年からは、現在ホール博士がリーダーを務めるANUのプラズマ理論モデリンググループのデュワー教授と共同で研究を行っている。

同フォーラムは、大学、政府研究所、民間企業、一般市民から集まった160名以上の科学者や技術者からなるコンソーシアムで、現在も拡大中である。同フォーラムは、世界最大の科学プロジェクトである核融合エネルギー実験「ITER」へのオーストラリアの参加を支持し、核融合エネルギーの科学を推進することを目的としている。

また、IAEAの国際核融合研究会議の共同議長、Plasma Physics and Controlled Fusionの編集委員、アジア太平洋物理学会プラズマ物理学部門のオセアニア・ASEAN担当副会長も務めている。

Webサイト:http://maths.anu.edu.au/ptm

Twitter: https://twitter.com/MatthewHole11

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