「データセンターが熱いなら宇宙に作れば良いじゃない」という発想かどうかは分からないが、欧州委員会は、フランスのThales Alenia Space(タレス・アレニア・スペース)社に、欧州のネット・ゼロ・エミッションとデータ主権のための先進宇宙クラウド(ASCEND)に関するフィージビリティスタディ(実現可能性調査)を依頼した。ASCEND (Advanced Space Cloud for European Net zero emission and Data sovereignty)と名付けられたこの計画は、データセンター設置による地球の気候への影響を軽減するために、地球を周回する軌道上にデータセンターを設置する事の影響と、その実現可能性を調査する。
これまで、Apple、Amazon、Google、Intel、Microsoftなど、多くの企業が、データセンターの二酸化炭素排出量を減らす方法を研究し、深海にデータセンターを置くことや、寒冷な地域でデータセンターを冷やすためのエアコンの電力を抑えることなどが考えられてきたが、これほどまでに壮大な計画はなかったろう。
データセンターを宇宙に送ることで、宇宙の真空と、太陽に直接さらされない-157℃の低温を通して、より確実に冷やし、動作させることができるというものだ。このプロジェクトは、欧州連合(EU)による7年間955億ユーロ(1兆4,000億円)の科学研究プログラム「Horizon Europe」一環で、Thales Alenia Spaceは、プロジェクトの実現可能性を評価するために、課題とコストについて検討するとのことだ。
ASCENDのフィージビリティスタディでは、Thales Alenia Space社が、環境(Carbon 4、VITO)、クラウドコンピューティング(Orange、CloudFerro、Hewlett Packard Enterprise Belgium)、ロケット(ArianeGroup)、軌道システム(ドイツの航空宇宙センターDLR、Airbus Defence and Space、Thales Alenia Space)に関する専門知識を持つ企業コンソーシアムを主導している。
計画では、データセンターを宇宙軌道に送り、太陽光発電で地球を周回して運用し、データ通信は高いスループット性能を持つ光通信技術でつなぐ。このプロジェクトは、2050年までにカーボンニュートラルを達成するという欧州のグリーンディール目標の達成に貢献する可能性があり、Thalesは、欧州の宇宙とデジタルエコシステムにおいて「前例のない発展」になる可能性があると述べている。
この研究の最初の目的は、これらの宇宙インフラの製造と打ち上げによる炭素排出量が、地上のデータセンターで発生する排出量より大幅に少なくなるかどうかを評価することだ。
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