ポータブル電源とは、「モバイルバッテリーの大容量版」と思ってもらうとイメージしやすいのではないだろうか。あらかじめ充電しておけば、スマホやタブレットはもちろん、ノートパソコンや果ては電子レンジなどの家電まで動かす事が出来る大容量のバッテリーだ。
コロナ禍で人気が出たレジャーとして、まず思い浮かぶのが「キャンプ」ではないだろうか。そのキャンプを快適に過ごすことが出来るアイテムとして、ポータブル電源の需要が増えているのだ。
外でも扇風機が使えたり、ノートPCを繋いで大自然の中でのワーケーションなんてことも出来たり、用途は無限大だ。
だが、ポータブル電源はもちろんアウトドア用途にのみ用いられるものではない。もう一つ大きな需要として、「災害用の備え」がある。最近頻発する地震や大雨などの災害時、停電への備えとして、ポータブル電源は大きな味方になってくれるだろう。
今回、そんなポータブル電源の中で、特にオススメの製品「EcoFlow RIVER Pro」をご紹介する。
EcoFlow RIVER Proの概要
Eco Flowとは
EcoFlowは2017年に設立したばかりのポータブル電源をメインに手がけるスタートアップ企業だ。ドローンで圧倒的シェアを誇るDJI出身のエンジニアが設立し、これまでにもいくつもの製品を手がけてきた。初期には主にクラウドファンディングでの製品開発を行っており、2018年Indiegogoでは1億2000万円以上、日本でも2020年クラウドファンディングサイト「Makuake」で当時史上最高調達額の2億8000万円を集めるなど、大注目のメーカーだ。
Eco Flow RIVER Proの外観と仕様
そんなEcoFlowの手がけるポータブル電源。魅力はなんと言っても「機能とデザインの調和」だろう。このデザイン性は、Appleがポータブル電源を作ったらきっとこんなデザインになるのではないかと思えるくらい、パッと見ポータブル電源とは思えないほど、シンプルかつ美しく近未来的なデザインだ。
サイズは、縦:25.3cm 横:28.8cm 奥行き:18.5cmとなる。重量は7.6kgだ。
前面には、ディスプレイとUSBポート(USB-C x 1、USB-A x 3)、DC-5521プラグx2、シガーソケット出力、LEDライトが配置されている。本体での操作はほとんどOn/Offのみになり、細かな設定はアプリから行う形となっている。それもあり、UIはとてもシンプルだ。
LEDライトは、低輝度・高輝度・SOSの3種類の点灯に対応している。
また、向かって左側面には充電用の端子。コンセントからの充電、車のシガーソケットから、そして別売りとなるがソーラーパネルからの充電と3系統の充電が出来る様になっている。
反対の向かって右側面には給電用のACコンセントが3口備えられている。出力は合計で600Wまで対応している。
コンセントの上には排気用のファンが見える。大きな出力を伴う使い方以外ではほとんど動かずとても静かだ。
ちなみに、右側面の左下には「エクストラバッテリー」接続用のポートもある。ここに接続することでバッテリー容量を2倍にすることが可能だ。
上部にはシルバーカラーの持ち手が付いている。適度な太さと丸みを帯びた造形で、握り心地も良い。
底面はゴム足となっており、自宅内で床に置いても傷が付かないように配慮された設計だ。
EcoFlow RIVER Pro仕様
基本情報 | |
---|---|
重量 | 7.6kg |
寸法 | 28.8x 18.5 x 25.3 cm |
充電温度範囲 | 0-45°C +/- 3°C |
放電温度範囲 | -20-60°C +/- 3°C |
カラー | サイバーブラック |
充電方法 | AC壁コンセント、12Vシガーソケット、ソーラーチャージャー |
フル充電時間 | 1.6 時間(AC) 7.5時間(12V シガーソケット) 4.5時間-9時間(2x110Wソーラーチャージャーを快晴状態の天候で使用した場合) |
充電スペック | |
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充電方法 | AC壁コンセント、12Vシガーソケット、ソーラーチャージャー |
フル充電時間 | 1.6 時間(AC) 7.5時間(12V シガーソケット) 4.5時間-9時間(2x110Wソーラーチャージャーを快晴状態の天候で使用した場合) |
バッテリー情報 | |
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容量 | 720Wh (28.8V) |
電池素材 | 三元素リチウムイオン |
保存性 | 1年(フル充電後) |
寿命 | 800回以上 (80%+) |
管理システム | BMS、過電圧保護、過負荷保護、 過熱保護、短絡保護、低温保護、低電圧保護、過電流保護 |
テストと認証規格 | RoHS |
出力規格 | |
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AC出力(x3) | 600W (サージ1200W),100V AC( 50Hz/60Hz) |
USB-A出力(x2) | 各ポート最大12W、5V DC、2.4A |
USB-A急速充電(x1) | 最大18W、5V DC、 9V DC、12V DC、2.4A |
USB-C出力(x1) | 最大100W、5V DC、9V DC、12V DC、15V DC、20V DC、5A |
シガーソケット出力(x1) | 最大136W、13.6V DC、10A |
DC5521 出力(x2) | 各ポート最大13.6V DC、3A |
※1:ポータブル電源DC入力対応範囲は10V ~25Vです。24Vシガーソケットは実際25Vを超えている場合が多く、対応可能範囲オーバーすると24Vシガーソケット充電に対応できなくなります。予めご了承ください。
EcoFlow RIVER Proレビュー
実際に使ってみた
使用方法は至って簡単だ。電源を入れると待機状態になるため、後は出力ポートのON/OFFを切り替えたのち、電化製品を接続すればいい。
試しに扇風機を接続してみたが、全く戸惑うことなく使う事が出来た。それもこれも驚くほどシンプルなUIのおかげだろう。また、ディスプレイも実際にどの程度電力が使用されているのか、残りどれくらいの時間使えるのかが表示されるため、これはかなり助かる。
EcoFlow RIVER Proは容量が720Whのバッテリーを搭載しているが、実際にどういった機器がどのくらいの長さ使えるのかは、下記の表にまとめてみたので参考にして頂きたい。
EcoFlow RIVER Proの使用可能時間一覧
ホームバックアップ
電化製品 | 使用可能時間 |
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LEDライト(10W) | 64時間(DC) 22時間(AC) |
冷蔵庫(150W) | 4-8時間 |
ブレンダー(300W) | 2-4時間 |
テレビ(110W) | 5-10時間 |
プロジェクター(65W) | 7.5時間 |
ドライヤー(1200W) | 0.9ー1.8時間 |
コーヒーメーカー(1000W) | 24-30杯分 |
アウトドア用途
電化製品 | 使用可能時間 |
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スマートフォン(11Wh) | 53回 |
ノートPC(49.9Wh) | 13回 |
カメラ(7.7Wh) | 83回 |
Nintendo Switch(16Wh) | 40回 |
ドローン(60Wh) | 8回 |
電気ケトル(1200W) | 0.9時間 |
電気フライパン(1200W) | 0.9時間 |
炊飯器(1200W) | 0.9時間 |
※実際の動作時間は製品の使用方法や変換効率などによって異なります。あらかじめご了承ください。
良かった点
良かった点まとめ
- 近未来的なデザイン
- 他社製品に比べて軽い
- 約1時間半で満充電出来てしまう高速充電
- 使いやすいアプリで細かい設定が出来る
- ドライヤーなどの高出力機器も安心して使える
- USB-Cが100Wまで対応
- UPS機能
- バッテリーに優しいパススルー充電対応
- 日本国内向けに100V仕様になっている
近未来的なデザイン
既に外観はご紹介したが、他社のポータブル電源とは一線を画すのが、このEcoFlowのデザイン性の高さだろう。持ち手の部分の滑らかな曲線のデザインや、細かなボタンのデザイン、ポートの配置など、全体的に落ち着いたデザインでインテリアにも溶け込みやすく、リビングやキッチンの隅に置いておいても違和感がないオシャレなデザインだ。
他社製品に比べて軽い
EcoFlow RIVER Proは、エネルギー密度が高い「三元素リチウムイオンバッテリー」を使用していることもあり、同じバッテリー容量ならば他社が多く採用している「リン酸鉄リチウムバッテリー」に比べて軽く、コンパクトにする事が可能だ。そのこともあり、他社製品比べて1~2kgと大幅な軽量化が実現できている。
持ち運ぶ際は車に乗せることが多いと思うが、使用場所を変える際には軽い方が女性などは助かるだろう。
約1時間半で満充電出来てしまう高速充電機能
EcoFlowの「X-Streamテクノロジー」により、バッテリーを使い切った状態から80%までがわずか1時間で充電が完了するという。実際に計測してみたところ、我が家では56分で80%まで充電がされていた。ちなみに満充電までは1時間半だった。フルスピードでの充電時は600W以上の電力で充電されており、時々廃熱のためにファンが回る音が聞こえるが、静音モードにすることで(時間はかかるが)ほぼ無音で充電することも可能だ。
他社製品は同容量の物ならば平均して4~5時間で充電が行われる事を考えると、この充電スピードは圧倒的だろう。
ドライヤーなどの高出力機器も安心して使える
RIVER Proを特徴付ける機能としてまず挙げられるのが、「X-Boostテクノロジー」だろう。通常、ポータブル電源では定められた最大出力以上の機器を接続した場合、過負荷(オーバーロード)となってしまい、ポータブル電源は自動的にシャットダウンし、機器を使用することは出来ない。それに対してこのX-Boostテクノロジーを搭載したRIVER Proは、定格出力600Wを越える製品でも、独自技術でその電圧を下げ、定格出力を越える製品でも使えるのだ。例えば、定格出力1200Wになるドライヤーでも、このX-Boostテクノロジーを使う事で自動的に600W出力に電圧を抑え、オーバーロードを回避し、使用する事ができるという画期的な機能だ。
実際にドライヤーを使って見たが、ご覧のように全く問題なく動作している。ただし、本来1200Wで動くものを600W相当の出力に抑えられているので、熱や風量は控えめだ。
また、「X-Boostテクノロジー」は全ての機器に対応しているわけではなく、一部の機器(精密機器などの電圧保護機能が付いた製品)はX-Boostテクノロジーが働かないので、実際にテストしてみる必要はあるだろう。
使いやすいアプリで細かい設定が出来る
EcoFlowは本体にWi-Fi接続機能が備わっており、Wi-Fiに接続することでスマートフォンのアプリで色々な遠隔操作ができるようになっている。
アプリは、上のリンクや各アプリストアから「EcoFlow」と検索すれば出てくるため、インストールすれば簡単に使う事ができる。
アプリでは、バッテリーの状態を見ることが出来る。充電時はあとどれくらいで充電が終わるのか、給電時はどのくらいの時間給電可能なのかと言った情報が一覧で表示される。
また、ACやDCの出力をアプリからもON/OFFすることが可能だ。
アプリの機能で特に助かるのが細かな設定が出来る事だろう。かゆいところに手が届く設定が出来る様になっている。
本体のファームウェアアップデートをはじめ、充電を100%以下に抑えておく機能や、ビープ音を消す機能、ファンの制御など、細かな設定が可能だ。
特に、ビープ音は夜のキャンプ時や、深夜に自宅で使う際など、切っておいた方が無難だろう。
また、バッテリーの劣化を抑えるためにも、「充電レベル」の設定で、充電が80~90%程度で止まるように抑えておく設定などはやっておきたい。
USB-Cが100Wまで対応
USB-Cポートは出力が100Wまで対応している。これにより例えばMacBook ProのようなUSB-Cポートを使って大きな電力を必要とするデバイスにも安心して対応出来る。
バッテリーに優しいパススルー充電対応
EcoFlow RIVER Proは、家庭用のACコンセントからRIVER Pro本体を充電しつつ、RIVER Proのコンセントから電化製品に給電を行う場合、優先的に電化製品に給電が行われる「パススルー充電」に対応している。
このパススルー充電だが、「コンセント」→「RIVER Proのバッテリー」→「家電製品」という形ではなく、「コンセント」→「RIVER Proの回路をスルー」→「家電製品」という形で、「パススルー」によりバッテリーの消耗が伴わないため、バッテリーに優しいのが特徴だ。
モバイルバッテリーなどでも良く聞く「パススルー充電」だが、一部のモバイルバッテリーやポータブル電源ではバッテリーに充電しつつ、バッテリーから給電するものもあり、バッテリー寿命に影響があるものもあるため、ここはよく確認して置く必要があるだろう。
その点、EcoFlow RIVER Proのパススルー充電は、本当の意味での「パススルー」方式となっている点で安心だ。
あまりこのような使い方もないかと思うが、次に紹介するUPS機能と合わせると、非常時に備えるためのポータブル電源が、普段から役立てることが出来るようになる。
UPS(無停電電源装置)機能
EcoFlow RIVER Proは、UPS機能を備えている。具体的には、
- 自宅のACコンセントからRIVER Pro本体にAC充電中
- RIVER Pro本体のACコンセントから他のデバイスに給電
上記2つを同時に行っている場合、電流は壁のACコンセントからRIVER Pro本体を通過しデバイスに行くため、デバイスへの給電はRIVER Pro本体ではなく、壁のACコンセントとなる。その上で、停電などによりACコンセントからの電力供給が停止した場合、30ms以内にバッテリーから直接電力供給が行われるモードに自動的に切り替わることで、繋がれているデバイスへの給電を続けることが出来るのだ。
筆者は現在、実際にこのような形でデスクトップPCに繋いで使っている。
こうすることの利点は、パススルーで給電しつつ、バッテリー残量が減ったときは自動的に充電も行っておいてくれ、更に急な停電時はUPS機能によりデスクトップPCへの給電を行い機器を保護してくれる事が見込める点だ。注意点としては、満充電の状態を維持するとバッテリーの劣化が早まるため、あらかじめアプリの設定で満充電の設定を80%程度にしておくのがいいかもしれない。こうすることで、バッテリーの寿命を延ばすことが出来る。
ただし、0msでの切り替えには対応していないため、データサーバーやワークステーションのような完全なUPS機能を必要とするデバイスに使用するのはオススメしないとのことだ。
残念だった点
残念だった点まとめ
- ハンドルが出っ張っており保管の際にかさばる
- USB-Cポートが1つしかない
- バッテリー寿命が他社の一部機種に比べて短い
- Qi対応の無線充電機能が欲しかった
ハンドルが出っ張っており保管の際にかさばる
ハンドルのデザインはとても美しく気に入ってるのだが、出来る事ならば折りたたみというか、かさばらないように本体に収納できて上部が平らになってくれると尚良かったかなと思う。倉庫にしまうときなどに助かるだろう。そこが少し残念だった。
USB-Cポートが1つしかない。
これは特に最近はUSB-Cを利用するデバイスが増えてきたこと、EUがスマホやタブレットにUSB-Cポートを義務付ける決定をしたことから、今後は更にUSB-Cデバイスが増える事が予想できるため、1ポートしかないのはちょっと心許ない。ここは残念な所だ。
Qi対応のワイヤレス充電機能が欲しかった
なくてもいいけど、あると嬉しい機能として、Qi対応のワイヤレス充電機能が欲しかった。特に最近はワイヤレス充電対応機器も増えていることもあり、RIVER Proのハンドルの下部分の空間などにでもこれがあったら嬉しかったなというところ。
バッテリー寿命が他社の一部機種に比べて短い
本製品は、リチウムイオンバッテリーが「三元素リチウムバッテリー」を使用していることもあり、他社製品の「リン酸鉄リチウムイオンバッテリー」に比べると、サイクル数が少なくなっている。これは頻繁にキャンプで使う機会のある人には気になるところだろう。とはいえ、本製品の800回というサイクル数も、毎日キャンプで使いまくると言うような極端な生活でもしなければ、まず問題にならない十分なスペックだ。非常用として用意しておく場合も、同様にサイクル数よりも他の要素で判断すべきだろう。
EcoFlow RIVER Proまとめ
EcoFlow RIVER Proについて色々とご紹介したが、「圧倒的な高速充電」と「ドライヤーも使えるX-Boostテクノロジー」によって、他者のポータブル電源とは一線を画す性能を有していることがお分かり頂けるだろう。
キャンプに行く前に充電を忘れていたことに気付いた場合も、1時間で80%も充電出来てしまうというのは、思った以上に便利だ。
EcoFLow Technology社のポータブル電源は、数あるポータブル電源の中でも並み居る強豪を抑えて評価が1位になるほど優れた物なので、自信を持ってオススメ出来る。
ポータブル電源を検討されているならば、まず最有力候補に挙がるのが本製品ではないだろうか。
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