現代のインターネットを介した通信に欠かせない物として暗号技術がある。これは、メッセージの当事者以外が万が一傍受した場合でも、意図した受取人以外には意味をなさずに解読できないようにメッセージを作り変える技術だ。特にクレジットカード情報や個人情報など、個人の秘密や財産に関わる情報は不正に解読されないように、高度な暗号化技術で守られている。ただし、現代の通信暗号技術は、「現代のスーパーコンピューターでは何万年かかっても解読できない」という前提に立って作られている物であり、今後量子コンピュータのような全く次元の違う計算機が登場した場合は意味をなさなくなってしまう。そのような未来に備えて、量子物理学の基本的な法則によって、情報を抜き取ろうとする物が最終的に傍受できる情報量を制限する方法が考案された。それが量子暗号である。その中でも「デバイスに依存しない」スキームである量子鍵配送は実現が待ち望まれていたが長い間実現しなかった。
今回、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の研究者を含む国際研究チームは、高品質な量子もつれに基づく量子鍵配送を初めて実験的に実証し、従来の方式よりもはるかに高い安全性を保証することに成功した。
- 論文
- 参考文献
- ETH Zurich : A key role for quantum entanglement
- Science News : Quantum entanglement makes quantum communication even more secure
本論文の著者であるRüdiger Ubanke教授と博士課程学生Kirill Ivanov氏は、「長年にわたり、量子鍵配送方式には驚くべき利点があることが分かっています。量子鍵配送の最新方式は現在、一般に『デバイス非依存型量子鍵配送』と呼ばれており、これを実験的に実現することが、この分野の大きな目標となっていました。だからこそ、このような画期的な実験がついに実現したことに興奮を覚えます」
実験では、2つの単一イオン(送信側と受信側)が使用され、光ファイバーで結ばれた別々のトラップに保持された。この基本的な量子ネットワークにおいて、イオン間のエンタングルメントが、数百万回にわたって記録的な高忠実度で生成された。
このような高品質のエンタングルメントの安定した供給源なしには、プロトコルを実用的に役立てることはできなかっただろう。エンタングルメントが適切に利用されているかどうかを検証することも、同様に極めて重要だった。理論的には、データ処理、暗号鍵の効果的な抽出、実験中の最適性能の確保に、大きなブレークスルーが必要だった。
この実験では、「正当な当事者」であるイオンは、同じ研究室に置かれていた。しかし、その距離をキロメートル単位まで広げるには、明確なルートがある。そのような観点と、最近のドイツや中国での関連実験のさらなる進展により、理論を実用的な技術にする見通しが立ってきた。
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