2022年はAIによる創作(と言えるかどうかは別として)が大いに話題になった年だったのではないだろうか。
DALL・EやStable Diffusionに代表されるような画像生成AIや、つい先日公開され話題となっている対話型文書生成AI「ChatGPT」が思い出されるが、Google傘下のDeepMindがまた驚きのAIツールを発表した。
「Dramatron」と名付けられたこのAIは、あなたの創作アイデアを膨らませる手助けをしてくれるようだ。
- 論文
- 参考文献
- DeepMind(GitHub.io):
- Endgadget: DeepMind created an AI tool that can help generate rough film and stage scripts
小説や演劇のアイデアを思いついたけれど、中々脚本まで手が回らないという事は、作家の多くが経験している。今回、DeepMindが発表したDramatronは、いわゆる「共同執筆」ツールで、そんな作家の悩みを解決してくれる一助となるかも知れない。
Dramatronは、ストーリーそのものを作るわけではないが、作家が入力したアイデアに基づき、キャラクターの説明、プロットのポイント、場所の説明、台詞を生成することができる。そしてDramatronが出力したものを作家はまとめ、編集することで、適切な脚本に書き換えることが出来る様になるのだ。OpenAIのChatGPTのようなものだが、大ヒット映画の脚本に編集できるような出力が可能とのことだ。
始めるにはOpenAIのAPIキーと、Dramatronが「不快なテキスト」を出力するリスクを減らしたい場合は、PerspectiveのAPIキーが必要だ。実際の「Dramatron」はこちらのページからアクセス出来る。
Dramatronの開発チームが本日発表した論文によると、出力された内容には、脚本家も納得しているとのことだ。このツールをテストするために、研究者は15人の劇作家と脚本家を招き、脚本を共同執筆してもらっている。論文によると、脚本家たちは、AIの出力が定型的になる可能性があることを発見し、このツールを使って完全な戯曲を作ることはないと述べているようだ。しかし、世界観の構築や、プロット要素やキャラクターの変更など、他のアプローチを検討する際には、Dramatronが役立つとも述べている。また、AIは「クリエイティブなアイデア出し」にも役立つとのことだ。
ある劇作家は、Dramatronの助けを借りて書いた「大幅に編集され書き直された脚本」を使った4つの劇を上演した。DeepMindは、この公演では、即興のスキルを持つ経験豊富な俳優が、「演技と解釈によってDramatronの脚本に意味を与えた」と述べている。
AIツールの使用は、著作権や、脚本の功績を誰が(あるいは何が)得るべきかという問題を提起するかもしれない。昨年、英国の控訴裁判所は、AIは特許に発明者として法的にクレジットされることはできないと判決を下した。DeepMindは、Dramatronが言語モデルの学習に使用したテキストの断片を出力することができ、これが制作された脚本に使用された場合、盗作の非難につながる可能性があると指摘している。「可能な緩和策の1つは、人間の共同執筆者が出力から部分文字列を検索して、盗作の特定に役立てることです。」とDeepMindは述べている。
研究の要旨
言語モデルに対する作家の関心はますます高まっている。しかし、このようなモデルは長期的な意味的一貫性に欠けるため 長文創作における有用性に限界がある。そこで、言語モデルを階層的に適用することで、この制約を解決する。我々はこれを「Dramatron」と名付けた。Dramatronは、プロンプトの連鎖によって構造的な文脈を構築することで、一貫性のある脚本を生成することができる。また、Dramatronは、タイトル、キャラクター、ストーリービート、場所の説明、およびダイアログを含む、首尾一貫した脚本やシナリオを生成することができる。我々は、Dramatronがインタラクティブな共同創作システムとして有用であることを、ユーザーを用いて説明する。15名の演劇・映画関係者を対象としたユーザー調査により、Dramatronのインタラクティブな共同創作システムとしての有用性を実証している。参加者は、Dramatronを用いて演劇の台本や脚本を共同執筆した。参加者は、Dramatronを用いて演劇の脚本や脚本を共同執筆し、自由形式のインタビューを行った。インタビューに答えてくれた人たちや、舞台を観劇した独立したレビュアーからの批評を報告する。Dramatronと階層型テキスト生成の両方が、人間や機械との共同創造にどのように役立つかを説明するために、作品の上演を観賞したレビュアーの批評を報告する。最後に、Dramatronの共同創作への適合性、倫理的配慮(剽窃や偏向を含む)、および人間-機械間の共同創作について考察している。また、このようなツールの設計と展開のための参加型モデルについて述べる。
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