先週、10億ドルの評価額で大規模な資金調達を行った「DeepL」が、同社の翻訳製品に新たな機能「Write」を追加した。これは、これまで翻訳一本でやってきたDeepLにとって初の拡張機能となる。
DeepL Writeは、DeepLの代名詞であった翻訳ではなく、文章の修正を行ってくれるツールだ。Writeを使うと、ユーザーは入力した文章の文法や句読点の間違いを見付け、不自然な言い回しを修正してくれたり、創造的な表現のための提案を提供し、更に、文章のトーンを変更するオプションも提供するとのことだ。Writeは、DeepLの翻訳機と同じニューラル・ネットワークをベースにして開発されている。
同様の機能は既に「Grammarly」で実現されているため、既視感があるかも知れない。Grammarlyは現在、3,000万人以上のアクティブユーザーと約5万社の企業やチームに利用されているとのことだ。
後発のDeepLに果たして勝算があるのかとの声もあるだろうが、そもそもDeepLは、GoogleやMicrosoftなどが既に提供していた“機械翻訳”という分野に飛び込み、その精度の高さから他社を追い抜いた歴史がある。実際のDeepL Writeの使い勝手・精度がどの程度なのか興味深いが、それ如何によっては十分勝算もあるだろう。また、DeepLというサービスの既存ユーザーの中には、これまでDeepLとGrammarlyを組み合わせて使っていたユーザーも少なくはないようで、同社の製品の中だけで完結する事もまた魅力的だろう。
実際、「我々は、翻訳の面では常にレースモードにあります。我々は大きな敵に慣れており、それを乗り越えて突き進むことが我々の文化の一部なのです。」と、DeepL CEOのJaroslaw Kutylowski氏はTechCrunchのインタビューで述べている。
DeepL Writeは、当初は英語とドイツ語の2つの言語間、もしくは単一言語の言い換え機能を実装し、実際にWriteがどのように使われているかを見て、それを改善し、新機能や新しい言語など、Writeの開発方法を考える予定とのことだ。基本的な翻訳ツールと同様、Writeは登録不要で無料で利用できる。
このサービスの肝は、「オプション」にあるようだ。基本的な文法や句読点の誤りを検出することに加え、Writeに入力されたすべての文章を書き直すのではなく、スタイル、トーン、フレーズ、ディクションなどの選択肢をユーザーに提供することに重点を置いているとのことだ。
プレスリリースの中で、DeepLがWriteに取り組むことにしたきっかけは、ユーザーのDeepL翻訳を、同社が想定していなかった使い方をしていることに気付いたからのようだ。
よく利用するユーザーの方々が、原文と訳文を入れ替えて逆翻訳を繰り返し、推敲のヒントを得ていると知ったのが、文章作成専用ツールの開発に着手するきっかけとなりました。
DeepL
「人間の脳は言葉の使い方が正しいかを受動的に理解するのは得意ですが、能動的に理解するのはそれほど得意ではありません。外国語はもちろんですが母国語でも正しい言葉を見つけるのに苦労することは多々あります。DeepL Writeを使えば、ただ単に間違いを訂正できるだけでなく、文章をよりよくするためのアイデアやインスピレーションも得られます」 と、DeepLのCEOのJaroslaw Kutylowski氏はプレスリリースの中で語っている。
今後は精度をさらに高め、円滑なコミュニケーションを実現できるように、AIを継続的にトレーニングしていくとのことだ。
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