私たちは磁場を惑星や恒星の一部と考えている。地球や太陽は比較的強い磁場を持っているし、中性子星やブラックホールの降着円盤のようなエキゾチックな天体もそうだ。しかし、磁力線は銀河全体、さらには銀河間空間の広大な空隙の間にも走っている。磁場は文字通りいたるところにあるが、その理由についてはよくわかっていない。ひとつの考え方は、宇宙の初期にかすかな磁場が形成されたというものだ。もしそうだとすれば、ダークマターの分布からそれを証明できるかもしれない。
原始磁場とダークマターを対応させるというアイデアは、少し微妙だ。私たちの知る限り、ダークマターは通常の物質と重力的に相互作用するだけだ。磁場とは相互作用しないので、磁場が存在するだけではダークマターには何の影響もないはずだ。しかし、磁場は電子のような帯電した通常の物質と相互作用し、その電子はダークマターと重力的に相互作用する。
つまり、銀河間磁場は、その磁力線に沿って電子やイオン化した銀河間水素を集める傾向があり、銀河間空隙のその領域は、空隙の他の部分よりもわずかに密度が高くなるということだ。このため、ダークマターも電界線に沿って少し集まることになる。重力の影響は極めて小さいが、宇宙の歴史全体から見れば、その影響は積み重なることになる。もし宇宙初期に磁場が形成されたのであれば、ダークマターも磁力線に沿って存在するはずだ。
Physical Review Letters誌に掲載された最近の論文で、著者らはこの効果がダークマターのミニハローを生み出すと主張している。銀河が重力クラスタリングによってダークマターのハローに囲まれているように、かすかなダークマターのハローが原始磁力線の周りに存在し、磁力線に沿ってイオン化した物質を重力で引っ張るはずである。
この考え方で興味深いのは、電荷を帯びたイオンや電子が時間とともに始原の磁場と相互作用し、磁場を打ち消す傾向があるということだ。イオンと電子は合体して中性の水素を作ることもできるので、現代の宇宙では、通常の物質には初期の磁場の痕跡は残っていないだろう。しかし、ダークマターのマイクロハローは依然として存在し、遠方の光源の重力レンズを通して見ることができる。これらの暗黒物質の細長い糸は、宇宙における初期の磁場の唯一の証拠かもしれない。
この研究は純粋に理論的なものであり、現在の望遠鏡はマイクロハローの重力レンズ効果を測定できるほど感度が高くない。しかし、ダークマターが、長い間見えなくなっていたものであっても、宇宙の歴史をその構造で担えるというのは興味深い。
論文
- Physical Review Letters: Dark Matter Minihalos from Primordial Magnetic Fields
この記事は、BRIAN KOBERLEIN氏によって執筆され、Universe Todayに掲載されたものを、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際)に則り、翻訳・転載したものです。元記事はこちらからお読み頂けます。
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