クフ王の墓とされるギザの大ピラミッドにおいて、宇宙線を用いたマッピングの結果、これまでに未発見だった新たな空洞が存在することが明らかになった。
科学誌『Nature Communications』に掲載された新しい論文「Precise characterization of a corridor-shaped structure in Khufu’s Pyramid by observation of cosmic-ray muons」では、科学者たちがピラミッド自体に入ることなく回廊構造を探検した方法が詳しく紹介されている。
これは、もともと宇宙用に開発された技術が、私たちの住む地球についての知識を深め、さらには我々「ヒト」という種の歴史を探求するのに役立つことを示すものだ。
この新しい論文について、科学者たちは、今回の結果が、大ピラミッドがどのように建設されたのかについての理解を深めるのに役立つと説明している。特に、ギザの大ピラミッドとして知られるクフ王のピラミッドで観察されたシェブロン構造の役割についての理解を深めるのに役立つ可能性があるとのことだ。
大ピラミッドの建設は、歴史上の大きな謎の一つであり、非常に重い材料が使われたことから、一部では宇宙人による建設が囁かれる程だ。
ピラミッドは数千年前から存在しているが、その内部についてはほとんど知られていない。これは、ピラミッドの通路の多くが封鎖されており、無理に開けると内部の歴史的遺物が破損する恐れがあるためだ。
クフ王のピラミッドはおよそ4500年前に建設され、現在も世界最大級の考古学的遺跡として存在している。2016年と2017年、ピラミッド内部で新たな空洞が次々と発見された。その中には、ピラミッドの北面側にあるシェブロン構造物のすぐ後ろに収められている、いわゆる「大空洞」と回廊状の構造物が含まれていた。これらの構造物は、「北面コリドー」と名付けられている。これらの構造物については、これまでほとんど知られていなかった。
今回、ミューオンラジオグラフィという手法を用いて、この空洞のサイズと形について、新たな詳細が明らかになったことが、ScanPyramidsチームによって報告されたのだ。
宇宙線と呼ばれる宇宙からの高エネルギー粒子が地球の大気に衝突すると、ミューオンが発生する。ミューオンは、ピラミッドのような構造物に降り注ぐと、部分的に吸収される性質がある。
ミューオンラジオグラフィーは、ピラミッドを通過する宇宙線を特殊なセンサーで検出し、ピラミッドの内部を正確にマッピングするものだ。簡単に言うと、通路のような空洞のある空間は、より多くの宇宙線を通過させることが出来る。そのため、検出された放射線を正確に計算することで、内部の正確な3Dマップを作成することが出来るのだ。
この方法により、今まで漠然としていた空洞について、長さが約9m、横断面が約2m×2mの回廊であることが判明した。
また、内視鏡を使用して回廊内の画像を撮影することが出来る様になったことも報告されている。画像はアーチ型の天井を持つ回廊の姿を鮮明に写しだしている。これは、ピラミッドが作られて4,500年以上経つ中で初めての画像となるだろう。
しかし、エジプト考古最高評議会のMostafa Waziri氏はCBSニュースに、この空の回廊の目的は何だったのか、ピラミッドの奥にあるその奥から何が発見されるのか、依然として不明であると述べた。
ピラミッドの構造的な負担を軽減するために作られた可能性が高いというが、「その下に何があるのかはまだわからない」という。「もっと回廊があるのだろうか?部屋はあるのだろうか?何か機能があるはずだが、まだわからないし、予測もできない」。
論文
- Nature Communications: Precise characterization of a corridor-shaped structure in Khufu’s Pyramid by observation of cosmic-ray muons
参考文献
- ScienceNews: Muons unveiled new details about a void in Egypt’s Great Pyramid
- CBS: Cosmic rays help reveal corridor hidden in Egypt’s Great Pyramid of Giza – but what is it?
研究の要旨
クフ王のピラミッドは、いまだ多くの謎を秘めた世界最大級の考古学的遺跡である。2016年と2017年、ScanPyramidsチームは、大規模構造物の調査に最適な非破壊技術である宇宙線ミューオンラジオグラフィーにより、これまで知られていなかった空洞の発見をいくつか報告しました。これらの発見のうち、北面のいわゆるシェブロンゾーンの奥には、少なくとも5m以上の長さを持つ回廊状の構造が確認されている。このため、このシェブロンの謎めいた建築的役割との関連で、この構造物の機能をよりよく理解するために、専用の研究が必要だった。ここでは、名古屋大学の核乳剤フィルムとCEAの気体検出器を用いた優れた感度の新しい測定結果を報告し、長さ約9m、横断面約2.0m×2.0mの構造物を明らかにした。
コメントを残す