Betavolt Technology(北京貝塔伏特新能科技有限公司)という中国企業が、モバイル機器に適した「原子力電池」を開発していると発表した。同社はすでに、15×15×5mmの大きさで100マイクロワットの電力を供給するとされる最初のモデル「BB100」を発表している。今後2年間で、同社はこの技術を発展させ、1ワットの電力を供給し、より大きな電力を必要とする場合にモジュール式に組み合わせることができる小型バッテリーを作りたいと考えているとのことだ。
原子力電池は、放射性崩壊の際に放出されるエネルギーを利用して発電する。一般には宇宙探査機の電源として用いられることが多い。これは太陽電池では太陽から遠すぎて機能しない探査機の部品に電力を供給するためだ。しかしそれ以外にも、例えば1960年代にはペースメーカーなど、電池を交換することなく長時間機能しなければならない地上の装置にも使用されていた。
ただし、“原子力”と言う名前からイメージするように、この技術は、プルトニウムのような放射性物質が危険すぎるため、他の用途には使われてこなかった。また、そのサイズの問題や、十分な電力を供給することが難しいと言う問題があり、携帯電話のバッテリーなどには用いられることがなかった。
そうした点で、今回Betavolt Technologyが発表したモバイル機器向けの原子力電池というのは興味深い物だ。同社は、半導体層として機能する厚さわずか10マイクロメートルの人工ダイヤモンドの層が、崩壊するニッケル同位体が放出するエネルギーから発電するような結晶構造からなる原子力電池を考案した。
Betavolt Technologyが既に販売している「BB100」モデルは、サイズは15×15×5mmで、100マイクロワットの出力を誇り、最長50年間電力を供給できるという。また、摂氏マイナス60度から120度までの温度で確実に動作するとのことだ。
同社は今後2年以内に、この技術をさらに発展させ、最大1ワットの電力を供給する小型バッテリーを製造できるようにするつもりだが、これが成功するかどうかはまだわからない。より大きなエネルギーが必要な場合は、モジュール方式で電源を組み合わせることもできるとのことだ。
Betavoltは、原子力電池の用途として、スマートフォンの他にセンサー、小型ドローン、マイクロロボットなどのデバイスへの応用を想定している。これらが実現した場合、充電やバッテリーの交換がいらなくなる可能性がある。
同社は、ニッケル63が銅に分解されるため、システムから放射線が漏れることはなく、有毒化学物質も発生しないと主張している。だが、破損時にどういったリスクが起こりうるかは明かされていない。
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