宇宙望遠鏡の開発には、長い間、打ち上げフェアリングという制約があった。打ち上げフェアリングは、宇宙に打ち上げることができる鏡の大きさを制限し、その結果、多くの観測装置の感度を制限してしまうのだ。このような制約があるにもかかわらず、これまでに最も成功した望遠鏡のいくつかは、宇宙を拠点とするものだった。しかし、宇宙にあることの利点をすべて享受しているにもかかわらず、太陽のような星のハビタブルゾーンにある太陽系外惑星を今のところ発見することはできていない。
そこで、NASAの先端概念研究所(NIAC)から資金提供を受けたのが、「DICER(Diffractive Interfero Coronagraph Exoplanet Resolver)」と呼ばれる新しいプロジェクトだ。
すでに恒星のハビタブルゾーンにある惑星はいくつか見つかっているが、太陽のようなG/Kクラスの恒星の周りにある惑星は見つかっていない。計算上、地球のような恒星の周りにあるハビタブルゾーンにある外惑星を効率よく見るには、望遠鏡に20mの鏡が必要だと推定される。しかし、そのような巨大な鏡を宇宙に運べるようなロケットは、今のところまだ開発されていない。
DICERで何が出来るだろうか?
DICERは、望遠鏡に30mに相当する光学面を持たせながら、1枚の固体鏡を必要としないように特別に設計されている。レンセラー工科大学の天体物理学者Heidi Joe Newberg氏が考案したもので、回折格子と呼ばれる装置を使用する。
回折格子は、光を波長ごとに分割し、1本の光から虹を作り出す装置で、分光器などによく使われている。DICERの場合、この回折格子は1枚あたり数十メートルの長さがある。しかし、それでも現代のロケットのフェアリングにすっぽり収まる大きさだ。
また、フェアリングの制限を回避するために他の設計原理を利用しようとする代替ミッション設計のように、異種部品間の緊密な調整を必要とすることもない。しかし、星からの光を遮断するコロナグラフのような、望遠鏡を支える巨大なインフラは必要だ。
このような技術的な工夫の結果、30光年先の太陽のような星のハビタブルゾーンを周回する太陽系外惑星を効率的に見ることができる宇宙望遠鏡が誕生する。つまり、私たちの第二の故郷に最も近い惑星を見つけることができるのだ。
しかし、そこまで行くにはまだ長い道のりがある。NIACは非常に早い段階のプロジェクトを支援しており、今のところ、このプロジェクトにはアイデアと基本的な概念実証の設計以上のものはないように思われる
しかし、NIACがより多くのリソースを集めるようになれば、新しいチームメンバーや新しいフィージビリティスタディが始まり、状況は変わっていくかも知れない。Newberg博士は、「この設計が実現可能であることを確認するために考慮しなければならない光学、熱、機械、打ち上げ/配備のトレードオフが無数に存在する」とさえ認めている……。これこそNIACが得意とするプロジェクトであり、最終的にはこれらのトレードオフが真に驚くべき発見につながるかもしれないのだ。
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この記事は、ANDY TOMASWICK氏によって執筆され、Universe Todayに掲載されたものを、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際)に則り、翻訳・転載したものです。元記事はこちらからお読み頂けます。
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