Appleは今週、(恐らくMacの)スペシャルイベント「Scary fast」を開催する。Scary fastイベントでは、M3シリーズチップを搭載したMacBook ProやiMacの登場が予想されているが、同社がこれに関連して最も力を入れてアピールするのが“ゲーム”ではないかと、各所で予想が繰り広げられている。それもこれも、Appleが10月31日のイベントでゲームをアピールすると予想されるだけの兆候が、既にこれまでの同社の動きから垣間見えるからだ。
Mチップのゲーム性能の向上
これまでMacでゲームをすること(特にAAAゲームに関して)があまり現実的ではなかったのは、まぎれもなくハードウェアだ。端的に言えば、数年前の最高のMacは、現在の最高のMacに比べて圧倒的にパワー不足だった。2010年代後半に発売されたIntelMacは、要求の厳しいAAAタイトルをプレイするのに適していなかったのだ。これらのマシンには熱の問題があり、一部のモデルはスペックが貧弱で、ハードウェアのアップグレードパスも限られていた。一部のゲームに対応できるシステムは、「ゴミ箱」Mac Proのような最高級モデルだけだが、Mac Proはそもそもゲーム用途ではなく、価格も数十万円(場合によっては数百万円)であり現実的ではなかった。
Appleはハードウェアをユーザー自身でアップグレードするための手段は提供していないが、Appleシリコンはそうした状況を改善する物だ。今回「Scary Fast」でデビューすることが期待される3nmプロセスで作られたM3 SoCプラットフォームは、M1とM2の進化を改良したもので、電力と効率の面で大きな改善が見られ、AppleがMacゲームに再挑戦する絶好の機会を提供するだろう。Appleはハードウェアを修正し、印象的なパフォーマンスと優れた熱閾値を誇っている。あとはゲーマーとデベロッパーにアピールすることが必要だ。
既にA17 Proでゲーミング性能をアピールしている
おそらく、AppleがMacゲーミングを推進すると計画している事を予想させる最大の要素は、iPhone 15 Proシリーズでゲーミングを焦点に据えたことだろう。新しいA17 Proチップによって、AppleはiPhoneに初めてハードウェアアクセラレーションによるレイトレーシングを追加する。これは非常に大きな追加であり、Appleは『バイオハザード ヴィレッジ』でiPhoneにおいて印象的なパフォーマンスを発揮し、『Assassin’s Creed: Mirage』のようなAAAタイトルをiPhoneに提供することを約束している。しかしこの動きは、macOSゲームにとって想像以上に大きな意味を持つ。
これは必ずしも、「Scary Fast」イベントでmacOSへのゲーム移植のプレビューが見られることを意味するものではない。しかし、Appleが現在、ゲームを製品やソフトウェアのビジョンの一部と見なしていることは確かだ。
macOS Sonomaの大部分はゲーム関連だった
この1年間、macOSリリースの大部分は、ゲームに費やされていた。Appleはこのリリースで、開発側(Game Porting Toolkit)と消費者側(Game Mode)の両方にゲーム関連機能を追加し、macOS Sonomaを充実したリリースにした。「ゲームモード」はフルスクリーンゲームをプレイしているときにゲームパフォーマンスを優先し、バックグラウンドでの活動を制限するように設計されている。
しかし、Macで利用できる高品質なゲームがなければ、ゲームモードはそれほど重要ではない。そこで登場するのがGame Porting Toolkitだ。このツールキットを使えば、開発者はゲームのシェーディングやグラフィックコードの翻訳レイヤーを簡略化し、ゲームを簡単にMacに移植できる。このツールキットは、Apple Developerアカウントを持っていれば誰でも使うことができるが、ゲーム開発者向けに設計されている。Appleはこの2つのmacOS Sonoma機能の開発に時間をかけており、Macゲームに非常に力を入れていることがうかがえる。
Appleがゲームに全面的に取り組むような重要な動きをする場合、通常はそのエコシステム全体に一貫性を持たせようとする。結局のところ、それがAppleの売りなのだ。エコシステムは、iPhoneからMacまで、Appleの製品ポートフォリオ全体で機能するように設計されている。ここ数カ月、ゲームがAppleの計画の中でこれまでよりもずっと大きな部分を占めるようになる事を見てきた。「Scary fast」イベントでは、これが明らかになることだろう。
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