市場において圧倒的な影響力をもつ企業であるAppleは、米国を含む全方位から反トラスト法(日本でいう独占禁止法)違反の疑いの目で見られているが、それに対して同社は政治的ロビー活動にかつてないほど多くの費用を投じているようだ。
Bloombergの新しいレポートによると、Appleは2022年上半期にロビー活動費として、過去最高の460万ドル(6億2000万円)を費やしており、また、AppleのTim Cook CEOが国内で最も政治的に活発なテック企業の最高責任者の一人となったことを報告している。
今年上半期には、前年同期より150万ドル多い460万ドルを記録した。Appleは水曜日に、第2四半期のロビー活動費用が190万ドルに減少したことを明らかにしたものの、第1四半期に費やした270万ドルは、前年同期比で約85%増となっている。
2021年に入ってから、Appleは反トラスト法闘争の主要議員とつながりのあるロビー活動団体を新たに3つ登録した。また、Appleや他のハイテク巨大企業との戦いを主導するミネソタ州選出の民主党議員、Amy Klobuchar氏の元側近を社内に招き、議事堂の廊下から直接ロビイストを引き抜いている。
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報告書は、Appleのロビイストが試した戦術の一部も詳しく紹介している。例えば2021年当時、Appleと結びついたロビイストは、下院司法委員会とエネルギー・商業委員会の間の政治的な争いをかき乱そうとした。その試みは最終的に失敗に終わった。
反トラスト法上の緊張が高まる中、テクノロジー業界全体でロビー活動が活発化している。例えば、米国の議員たちは、Appleにサードパーティのアプリストア、サイドローディング、代替決済メカニズムを許可するよう強制できる新しい法案を検討している。
しかし、他のロビー活動の試みはうまくいっている。上院で審議中の「アメリカの選択と革新法」は、企業が反競争的行為の疑惑をかわしやすくなるよう修正された。Bloombergは、Appleのロビイストがこの変更を「強く推し進めた」と報じている。
また、同社CEOのTim Cook氏自身も、以前は見られなかった積極的な政治活動を行っているようだ。
Apple社の社長は、そのスター性で政府の監視の目をそらそうとし、今では定期的に上院議員に電話をかけたり、会ったりしている。彼はここ数カ月で少なくとも2回、ワシントンを訪れている。6月には、ダークスーツにネクタイ姿で上院の地下にいるところを目撃され、モンタナ州の民主党議員John Tester氏や、サウスダコタ州の少数党幹事John Thune氏、アイオワ州のJoni Ernst氏、ミズーリ州のRoy Blunt氏など多数の共和党上院議員に面会している。テスター氏の広報担当者は、クック氏と面会したことを確認した。Thune氏、Ernst氏、Blunt氏は、コメントの要請に応じなかった。
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他のロビイストも注目している。あるロビイストはBloombergに、「どこに目を向けても、Appleもそこにいて、彼らの言い分を主張していることがわかる」と語っている。
ちなみに、Appleのこうした取り組みはもちろん米国国内のみではない。これ以前にも、日本の公正取引委員会からの調査・指摘に応じる形で「リーダー」アプリの仕様を変更することを実施している。これは日本での独占禁止法に反しないための措置と言えるだろう。
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