Appleは、長らくサードパーティによるアプリマーケットの解放をユーザー、開発者双方から望まれていたが、App Storeの誕生からこれまで、それを解放することはなかった。だがついに先日、EUのデジタル市場法に対応する形で、EU圏内のみでサイドローディングを可能にする、歴史的な変更を行った。
だが、この変更はAppleにとって受け入れがたいものだったようで、EU諸国におけるiPhone向けのサードパーティー・アプリ・マーケットプレイスの導入が、ユーザーにとってプライバシーとセキュリティの大きな問題となる可能性があると、Apple幹部のPhill Siller氏は警告しているようだ。
Siller氏は、Fast Companyに次のように説明している。「これらの新しい規制は、デベロッパーに新しい選択肢をもたらす一方で、新しいリスクももたらします。それを回避することはできません。ですから、私たちはそのようなリスクを最小限に抑えるために、できる限りのことをしています」。
「サードパーティストアフロントの導入は、悪意のあるコードを含むアプリがiPhoneにインストールされる新たな方法があることを意味し、エンドユーザーに多くの問題を引き起こす可能性がある」と、Appleは主張している。AppleのApp Storeのみによるアプリのインストールを可能とするアプローチとApp Store Reviewプロセスは、問題を引き起こすアプリを排除するもので、2022年には、プライバシー、セキュリティ、コンテンツ基準を満たさないという理由で約170万件の申請が却下された。
サードパーティーストアがAppleほど厳格な審査プロセスを持っていない可能性があるため、Appleは、アプリストアに関係なく、iPhoneにインストールする前にすべてのアプリを公証するなど、セキュリティを向上させるためのさまざまな要素を導入している。
「マーケットプレイスを構築し、アプリをインストールし、そのプロセスをユーザーがコントロールできるようにするためのツールを提供するために、開発者向けに600以上の新しいAPIを用意しました。我々は多くのコア・エンジニアリングを行ってきたし、これからも続けていくつもりです」と、Siller氏は述べている。
また、ユーザーはアプリをインストールする前に、そのアプリの基本的な詳細を示す情報シートを見ることができるようになり、マーケットプレイスの選択についても、より多くのコントロールが追加された。
それでもSiller氏は、Appleの保護措置には限界があり、公証では実際のコンテンツはチェックされず、アプリが安全で悪意のないものであるかどうかだけがチェックされるため、代替のストアフロントからのアプリのコンテンツを実際にコントロールすることはできないと付け加えた。
「最終的には、私たちがApp Storeで許可していないもの、つまり私たちが安全または適切でないと考えたものがあります。他のマーケットプレイスが同じ条件や制限を持つかどうかは、我々が決めることは出来ません」。
Appleは、家族や政府からの長年の意見に基づき、特定の種類の好ましくないコンテンツがApp Storeに掲載されるのを防ぐためのルールを設けているが、「そのルールは、他のマーケットプレイスで適用されることはないのです。その結果、ユーザーや家族が好ましくないコンテンツやその他の体験に遭遇するリスクが高まるのかと言えば、そうだと言わざるを得ないでしょう」。
特にSiller氏は、サードパーティのアプリマーケットプレイスからしか入手できないアプリについて心配している。「そのような状況では、多くのユーザーはマーケットプレイスについてよく知らないまま『OK』と言わざるを得なくなるでしょう」と、Siller氏は述べている。
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