Appleは、本日開催された同社の新製品発表イベント「Wanderlust」イベントにおいて、iPhone 15シリーズを始めとする新製品を発表した。様々な製品が発表されたが、最も注目なのはこの記事でご紹介するiPhone 15 ProおよびiPhone 15 Pro Maxだろう。前モデルと比較していくつかの大きなアップグレードが行われている。
「これは私たちがこれまでに作った中で最高のProのラインナップであり、最先端のチタニウムのデザイン、画期的な新しいワークフローを実現する史上最高のiPhoneのカメラシステム、そしてiPhoneではこれまで見たことのないような性能とゲームの新しい幕開けとなるA17 Proチップを備えています。iPhone 15 ProとiPhone 15 Pro Maxは、Appleのデザインと業界初のイノベーションの最高峰を象徴し、ユーザーが創造性を発揮できるようにしながら、日々の体験を豊かにします」と、Appleのワールドワイドマーケティング担当シニアバイスプレジデント、Greg Joswiak氏は述べている。
iPhoneとして初めてチタン素材を採用
昨年のiPhone 14シリーズに引き続き、iPhone 15シリーズにおいても、標準モデルとProモデルとの差別化が進められている。
まず一つ目の大きな変更は、iPhone 15 ProおよびiPhone 15 Pro Maxでは、これまでのステンレス素材に代わり、新たに航空宇宙素材として用いられる“グレード5”のチタン素材が用いられている事だ。これはいわゆるチタン合金という物で、チタン90%、アルミニウム6%、バナジウム4%で構成される素材だ。ステンレスよりも硬度が高く(ビッカース硬さは300程度)、強度があり、それでいて軽量となっている。これにより、iPhone 15 Proモデルではこれまでと同等の堅牢性を維持しつつも、軽量化が図られている。
素材自体の軽量化もさることながら、前述のステンレスよりも高い強度を持つチタンの採用により、フレーム自体を薄くすること、またディスプレイのベゼルが薄くなったことにより、iPhone 15 ProモデルではiPhone 14 Proモデルよりも同等のディスプレイサイズを維持しながらも小型化が実現されている。iPhone 15 Proでは、高さ・幅が共に0.9mm薄くなり、重量も19グラム軽量化がなされている。iPhone 15 Pro Maxでは、高さが0.8mm、幅が0.9mm薄くなり、重量は19グラム軽量化されている。(ただしどちらの機種も厚さは0.4mm増加している)これにより、iPhone 15 ProとiPhone 15 Pro MaxはApple史上最も軽量なProラインナップになっている。
ただしチタンにも欠点はあり、熱伝導率についてはあまり良好ではない。チタンの熱伝導率は17(W/mK)であり、アルミニウムの186(W/mK)と比較するとかなり低い。そのため内部はアルミニウムフレームが採用され、放熱面でも工夫が凝らされている。(そもそも強度を考慮しても内部にまでチタンを用いる必要もないだろうが)業界初の熱機械的処理により外側のチタンフレームと内部のアルミニウムフレームは強固な接合がなされているとのことだ。
USB-Cを初採用
iPhone 15シリーズでは、iPhone史上初めてUSB-Cコネクタが採用された。これはEUの規制によるやむを得ずの対応とも言えるが、ユーザーにとっては歓迎すべき変化だ。ケーブルが統一されるだけではなく、転送速度も最大10Gbpsとのことで、iPhoneからMacへのデータ転送でストレスを感じることが少なくなるだろう。
カスタマイズ可能な“アクションボタン”
事前のリーク通り、iPhone 15 ProおよびiPhone 15 Pro MaxにはApple Watch Ultraで登場したような、様々な機能を割り当てることが出来る“アクションボタン”がこれまでのミュートスイッチと置き換わる形で採用されている。
このアクションボタンは、デフォルトではこれまで通りミュートスイッチの様に機能するが、それ以外にも割り当てられる機能は多岐にわたり、カメラやフラッシュライトなどのよく使う機能や、ショートカットを割り当てて自分だけのボタンにカスタマイズすることも可能だ。
実際のアクションボタンのカスタマイズ画面は以下のような形となる。新たなiPhone 15 Proモデルのチタンフレームが反映されたUIがスタイリッシュだ。
世界初の3nmプロセスチップ“A17 Pro”
iPhone 15 Proモデルで採用された新たなチップでは、“Bionic”を捨て、新たにチップも“Pro”を冠するようになった。
世界初の3nmプロセスを採用した“A17 Pro”チップが採用され、大きな飛躍を見せている。
CPU性能は最大10%アップ、Neural Engineは最大2倍高速になっているが、このA17 Proの最大のアップデートはGPUにある。
これまでのA16 Bionicでは5コアだったGPUが6コアになり、パフォーマンスが最大20%向上したことに加えて、ハードウェアによるレイトレーシングに対応したのだ。レイトレーシングによって、ゲームではグラフィック品質を向上させ、よりリアルな映像表現を楽しむことが出来る。これは主にこれまでは据え置き型のゲーム機やPCレベルで実用化されているものだが、A17 Proでは、ソフトウェアベースのレイトレーシングと比べて4倍高速な処理が可能となり、iPhoneでも実用的なレベルとなっている。
「バイオハザード ヴィレッジ」「バイオハザード RE:4」「Death Stranding」「アサシン クリード ミラージュ」など、モバイルへの移植が初めてとなる美麗なグラフィックを誇るゲームの数々が今後登場し、モバイルゲームの新時代を切り拓く事になるかも知れない。ただし、レイトレーシング処理はそもそもハードな計算を伴うため、バッテリー消費もそれに伴い激増する点は否めないだろう。
加えて地味ながらも大きな変化は、AV1のハードウェアデコーダが搭載されたことだ。AV1はオープンソースの動画圧縮コーデックで、YouTubeやNetflixが採用し推進している規格となる。A17 ProではAV1デコーダによって、CPU負荷を下げ、より低い消費電力で高品質なストリーミングサービスの再生が可能となる。
ただし一方で疑問も残る。A17 Proでは3nmプロセスへの移行したが、これにより全体的な省電力化が期待できるとも言われていた。だが、仕様を見る限りバッテリー持続時間に関しては前モデルと全く変わりがないのだ。これはバッテリー容量の削減が行われた可能性も考えられる。
カメラ
iPhoneの進化と言えばカメラの進化と言うほど、iPhoneは毎年カメラの改善にも力を入れてきたが、前モデルで初めて採用された4,800万画素カメラを更に進化させ、いくつかの新機能が採用されている。
スペック自体は昨年と変更ないが、A17 Proの採用によりソフトウェア面での進歩が見られる。
新たに搭載された“次世代のポートレート”は、よりシャープなディテール、よりあざやかなカラーを実現し、暗所での性能が向上している。
また、地味ながらも嬉しい機能が、ポートレートモードに切り替えなくてもポートレート撮影を行うことが出来る様になった点だ。これは、フレーム内に人、犬、猫がいる時、またはユーザーがタップしてフォーカスした時に、iPhoneが自動で深度情報を取り込んでくれ、後から写真アプリでポートレート撮影したように編集することが出来る機能だ。どこにフォーカスを合わせるかも後から設定出来るので、より撮影の自由度が増している。
メインカメラのデフォルト解像度がこれまでの1,200万画素から、2,400万画素へと変更が行われること。また、24mm、28mm、35mmの焦点距離のどれかをデフォルトとして設定することが可能になった。
加えて、4,800万画素のProRAWに加え、HEIF画像も4,800万画素での保存に対応している。
そして最大の進化は、iPhone 15 Pro Maxに採用される新たな望遠カメラだろう。
iPhone 15 Pro Maxでは、Appleが“テトラプリズム”と呼ぶ新たな機構によって、焦点距離120mm(フルサイズ換算)の光学5倍ズームを実現している。
これを見る限り、どうやら噂のペリスコープレンズではないようだが、詳細は不明だ。望遠レンズで問題となる手ぶれの問題も、光学式手ぶれ補正とオートフォーカス3Dセンサーシフトモジュールを組み合わせた先進的な手ぶれ補正システムによって解消しているとのことだ。
光学5倍ズームは、既に光学10倍を実現しているAndroidデバイスに比べると見劣りしてしまう感も否めないが、iPhoneユーザーとしては着実な進化であり、より写真撮影の幅が広がる事だろう。ただし、そのためには最上位機種であり、最も大きなiPhoneを用いる必要があるが。
その他、細かな点としては、ProResビデオ撮影が4k60fpsに対応した事、Logビデオ撮影への対応、アカデミーカラーエンコーディングシステム(ACES)にスマートフォンとして初めて対応したことが挙げられる。
その他
iPhone 15シリーズは、同時に発表されたApple Watch Series 9、Apple Watch Ultra 2と共に第2世代の超広帯域(UWB)無線チップを搭載しており、これまでの3倍の範囲で接続することが可能になった。これによって、「探す」機能でデバイスを探す際や、「友達を探す」機能によって人混みの中で相手を探すことがより容易になる事が期待できる。
また、iPhone 15 ProとiPhone 15 Pro MaxはWi-Fi 6Eに対応しており、前モデルの最大2倍の速度でワイヤレス接続することが可能だ。
また、iPhone 15 ProモデルはMagSafeだけでなく、Qi2規格にも対応しているため、今後登場するQi2充電器であれば、15Wで充電できる。制限はないようだ。
iPhone 15 ProとiPhone 15 Pro Maxのカラーバリエーションは、ナチュラルチタニウム、ブルーチタニウム、ホワイトチタニウム、ブラックチタニウムの4色展開。
9月15日午後21時に予約受付開始、9月22日に販売開始となる。
価格は、iPhone 15 Proが159,800円から、iPhone 15 Pro Maxが189,800円からとなる。iPhone 15 Pro Maxは、スタート価格は大きく上がったが、ストレージが256GBからとなっているため、実質的には1万円の値上げとなる。
ストレージ容量は、iPhone 15 Proは128GB、256GB、512GB、1TB、iPhone 15 Pro Maxは256GB、512GB、1TBがラインナップされる。
iPhone 15 Pro 及び iPhone 15 Pro Maxの仕様
モデル名 | iPhone15 Pro | iPhone15 Pro Max | |
---|---|---|---|
SoC | A17 Bionic | ||
RAM | 8GB LRDDR5? | ||
ディスプレイサイズ | 6.1インチ | 6.7インチ | |
ディスプレイ解像度 | 2,556 x 1,179ピクセル | 2,796 x 1,290ピクセル | |
ディスプレイ仕様 | LTPO(低温多結晶酸化物) フレキシブルOLED 常時表示ディスプレイ 最大輝度1,000ニト(標準)、ピーク輝度1,600ニト(HDR)、ピーク輝度2,000ニト(屋外) | ||
ディスプレイ リフレッシュレート | 1-120Hz(可変リフレッシュレート) ProMotion | ||
ディスプレイデザイン | Dynamic Island | ||
リアカメラ | (広角) | 4,800万画素 | |
(超広角) | 1,200万画素 | ||
(望遠) | 1,200万画素 | ||
フロントカメラ | オートフォーカス機能搭載 6パーツレンズ F1.9レンズ | ||
バッテリー容量 | 不明 | 不明 | |
本体サイズ (単位:mm) | 高さ | 146.6 | 159.9 |
幅 | 70.6 | 76.7 | |
厚さ | 8.25 | 8.25 | |
重量 | 187g | 221g | |
ボディ素材 | ステンレス | ||
カラー展開 | ナチュラルチタニウム、ブルーチタニウム、ホワイトチタニウム、ブラックチタニウム | ||
有線接続ポート | USB-C端子(通信速度最大10Gbps) | ||
充電速度 | 高速充電(30分で最大50%充電) | ||
その他 | 衛星通信によるSOSメッセージ送信機能が搭載 |
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