Synopsysの半導体設計用AIソリューションが、商用チップのテープアウト100個というマイルストーンを達成した。同社はプレスリリースで、STMicroelectronicsやSK hynixなどの顧客がSynopsys DSO.ai(デザインスペース最適化AI)により、最大3倍の生産性向上、最大25%の総電力削減、ダイサイズの大幅縮小、全体リソースの使用量削減を実現したチップを実現することが出来たと発表している。
ただし、これはAIがチップ設計者の仕事を奪っている事の報告ではない。Synopsisのソフトウェアのおかげで、人間のチップ設計者やハードウェア・エンジニアが反復作業から解放され、AIの増強により、代わりにイノベーションに取り組むことができるようになったと言うのが適切だろう。
「設計と検証のサイクルと労力が削減されたことで、設計チームはより多くの時間をコア・アイデアの革新に費やすことができます」とSynopsisは述べている。エンジニアリングの人材不足が、少なくともAIによって多少なりとも解消されることが期待できると言うわけだ。
Synopsisが達成したマイルストーンは、電子設計自動化におけるAIの利用が急速に主流になりつつあることを示している。さらに、このAIは、チップ設計ビジネスへの参入を検討している産業分野、例えば自動車メーカーにとって特に有用となる可能性がある。シノプシスは、DSO.aiを “箱入りのエキスパート・エンジニア”と表現しているほどである。
従来のデザイン・スペース探索は非常に労働集約的な作業であり、通常、数ヶ月の実験が必要だった。だが、Synopsis DSO.aiは、AI技術を利用してデザイン空間を自律的に探索して最適なPPAソリューションを発見し、チップ設計ワークフローにおける選択肢の探索を大幅に拡大し、多くの雑務を自動化する。
SK hynixのSoC(System on Chip)部門長 Junhyun Chun氏は、「高性能かつ堅牢なメモリ製品を業界トップクラスの数量で提供するには、集中的な最適化が必要ですが、従来は非常に人的負担が大きかった。SynopsisのDSO.aiは設計チームの効率を大幅に向上させ、当社のエンジニアが次世代製品の差別化機能を生み出すための時間をより多く確保できるようになりました。また、DSO.aiが15%のセル面積削減と5%のダイシュリンクを実現した最近のプロジェクトで実証されたように、素晴らしい成果を上げています。」と、述べている。
Synopsisの顧客はDSO.aiのメリットを享受し、素晴らしい成果を上げていると同社は主張している。 具体的には、3倍以上の生産性向上、最大15%の電力削減、完成設計の大幅なダイサイズ縮小、リソースの使用量削減を実現しているとのことだ。また、AIの理想的なタスクは、サプライチェーンの脆弱性の影響を緩和し、コストを削減するためのマルチファウンドリ戦略を促進することであるとしている。
Synopsisはすでに、他のチップ設計および検証ワークフローにおけるAIの活用を拡大することを検討している。AIを用いたチップ設計のブレークスルーの瞬間が訪れるかもしれないようだ。Google、Microsoft、OpenAIのコンシューマー向けAIも話題になっている中、AIの利用が様々な分野に拡大されていく様は誠に興味深い。
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