Adobeは、同社独自の生成AI「Firefly」の大型アップデートを発表し、3つの新モデルと100以上の新機能を追加した。
新たな「Adobe Firefly Image 2 Model」は、より忠実に生成された画像と、ユーザーのよりきめ細かなコントロールを可能にし、「Adobe Firefly Vector Model」は、グラフィックデザイナーが業界初のベクター画像を迅速に生成できるようにする。また、印刷物やオンライン広告のレイアウトを生成するための「Adobe Firefly Design Model」は、業界初となるテキストからテンプレートへの生成機能を提供する。
Adobe Firefly Image 2 Model
Firefly Image 2は、既存のテキスト画像変換システムのアップデート版だ。前バージョンと同様、ライセンスコンテンツとパブリックドメインコンテンツのみを対象としており、商用利用も可能となる。また、100言語のテキストプロンプトに対応している。
Adobeは、より高品質な画像やイラストを生成し、肌、髪、目、手、体の構造を改善することで人間のレンダリング品質を向上させ、より優れた発色とダイナミックレンジを提供し、ユーザーが出力を制御する能力を向上させているとしている。
加えて、これまで以上に容易に、ユーザーの求める画像が得られるように以下の機能が追加となっている。
- 生成Match:提示された画像のリストから選択するか、独自の参照画像をアップロードすることで、簡単に特定のスタイルやブランディングを再現した新しい画像を生成できるようになります。1つの画像から共通のルックやフィールに沿ったアセットをいくつでも作成できるため、一貫性のあるコンテンツの大規模な作成や展開が可能になります。
- 写真設定: カメラの手動設定と同様の写真設定を適用、調整することで、より忠実なディテール(肌の毛穴や植物の葉など)の表現、モーションブラーや被写界深度などのエフェクト、よりフォトリアリスティックな画質を実現します。
- プロンプト候補:より優れたアウトプットを素早く生成するための、プロンプトの改善点や言い換えの提案を受けることが可能になりました(現時点では英語のプロンプトに対応)。美しいアウトプットを生み出すようなプロンプトを提案するように開発に注力しています。
- Adobe Fireflyからライブラリに保存して共有: 生成画像とそのプロンプトをAdobe Fireflyのリンクとして直接共有すれば、その画像がどのように生成されたのかを他のユーザーも確認することが可能になります。これにより、共有されたリンクを使用して、ユーザー同士による作品のリミックスや改善が可能になり、コラボレーションが容易になります。また、Adobe Fireflyの生成セッションをAdobe Creative Cloudライブラリに保存しておけば、他のアプリケーションからAdobe Fireflyを再度開いて作業を引き継ぐような共同ワークフローも実現できます。
Adobe Firefly Vector Model
Firefly Vector Modelのおかげで、アイコン、シーン、モチーフ、パターンなど、編集可能で拡大縮小自在なベクターアートをシンプルなテキストプロンプトから簡単に生成できるようになった。この機能は、Adobe Illustratorデスクトップ版で本日から利用可能となっている。
- 生成Match:他に例を見ない、Adobe Firefly搭載の新機能で、アートボード上に追加されるベクターが既存のアートのスタイルと完全に一致するようにできます。これにより、アートボード上の他のシーン、被写体、アイコン、パターンなどのスタイルにマッチした高品質なベクター出力を生成できるようになり、特定のスタイルに沿ったコンテンツを作成するうえで能力を発揮します。
- グラデーション:従来、グラデーションをベクターで再現するのは困難でしたが、このモデルに搭載された新しいエンジンにより、ベクターグラデーションを編集可能な状態で生成できるようになりました。単一塗りが適用されたパス領域を無数に並べる代わりに形状データが大幅に簡素化されたベクターオブジェクトを生成します。
- グループ化され扱いやすいベクター出力:生成されたベクターグラフィックに含まれるすべてのエレメントは論理的にグループ化され、レイヤー化されます。例えば樹木のアートワークの場合、どの部分を構成するかによってすべての関連パスが自動的にグループ化されているので、最終的なベクター出力を微調整、編集、再利用したいときにとても便利です。
- シームレスなパターン生成:「Adobe Firefly Vector Model」は継ぎ目のないパターンタイルを生成するため、目に見えるギャップが存在しないデザインパターンを無限に繰り返すことができます。
- 正確な形状データ:スムーズかつ正確な、高品質なベクターカーブを出力し、複数の曲線が交差する接合部など細かい部分もインテリジェントに処理されます。
Adobe Firefly Design Model
Adobe Firefly Design Modelは、Adobe Expressで利用可能な、「テキストからテンプレート」を生成するAIモデルだ。これによって、簡単なテキストプロンプトの入力から、SNS投稿、チラシ、ポスターなどのテンプレート出力を得ることができ、中小企業やエンタープライズ企業は、より効率的でパーソナライズされたマーケティングのために、コンテンツ制作を加速させることができる。
- 完全に編集可能なデザイン:Adobe Expressの「テキストからテンプレート生成」(ベータ版)で生成されたテンプレートを使って、印刷、SNS、オンライン広告などの用途に合わせてデザインを調整できます。ユーザーは、Adobe Fireflyで画像生成をした後、プロンプトを引き継いでAdobe Expressで微修正を続けることができ、Adobe Firefly搭載のテキストエフェクトを使用してタイトルをリッチ化できます。
- 自動化されたデザイン:AIが生成したテンプレートや自動生成のテキストおよび画像により、ユーザーは何千ものAdobe Expressテンプレートを選択する時間を節約し、ニーズに最適なレイアウトを特定できます。
- 包括的なコンテンツ生成:ユーザーは、最適なテキストサイズ、色、位置を選択し、必要に応じて画像のトリミングや置換などを行い、簡単なプロンプトからテキストと画像を容易に生成できます。
- 瞬時のエンドツーエンドデザイン:「Adobe Firefly Design Model」は生成AIを活用して、ユーザーのプロンプトと調和した画像、テキスト、トーンを作成し、クリエイターが瞬時に最適な結果を生成できるようにします。
合わせて、AdobeはとCoalition for Content Provenance and Authenticity(C2PA)は、コンテンツのメタデータに追加することで、その出所やAIツールを使用して作成されたかどうかを示すことができる「透明性アイコン」を開発した。このアイコンは、PhotoshopやPremiereなどのAdobeプラットフォームで利用できるようになり、最終的にはMicrosoftのBing Image Generatorでも利用できるようになる。このマークにカーソルを合わせると、コンテンツの所有者と作成に使用されたAIツールに関する情報が表示される。AdobeのContent Authenticity InitiativeのシニアディレクターであるAndy Parsons氏は、このマークをメディアの出所を示す「栄養ラベル」に例えている。Arm、Intel、Microsoft、Truepicを含むC2PAメンバーは、今後数ヶ月のうちに新しいマークを導入する予定だ。
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