銀河の中心には、活発に餌を食べる超大質量ブラックホールが存在し、この広い宇宙で最も過酷で混沌とした環境になっている物と予想されている。
これら巨大なブラックホールは、ガスと塵からなる回転する降着円盤に囲まれている。この光り輝く円盤は、高エネルギーのガンマ線やX線から可視光、赤外線、電波に至るまで、電磁スペクトルにわたって過剰なエネルギーを放出している。
今回、天文学者らは、銀河III Zw 002の中心にあるブラックホールを取り囲む降着円盤の最も明確な証拠を発見した。公式発表によれば、この発見は、”2つの稀で特異な近赤外線輝線”のデータを検討した結果得られたものとのことだ。
観測は、米国ハワイ州マウナケアにあるジェミニ・ノース望遠鏡を使って行われた。
輝線の観測
降着円盤を望遠鏡で直接観測するのは、地球からの距離が遠いことと、大きさが非常に小さいことの2点から難しい。
そのため天文学者は、降着円盤の大きさや振る舞いを決定するために、円盤内から放出される光のスペクトルに頼っている。
この方法論により、天文学者は銀河III Zw 002の降着円盤から発せられる「2本の近赤外線輝線」を世界で初めて検出することに成功した。
「輝線は、励起状態にある原子が低いエネルギー準位に落ち、その過程で光を放出することで生じる。すべての原子は固有のエネルギー準位を持っているので、放出された光は、その起源を特定する指紋のような働きをする個別の波長を持っている」と、プレスリリースでは説明されている。
降着円盤の存在は、特に二重ピークプロファイルと呼ばれる幅広い輝線によって推測される。幅広い輝線領域は、降着円盤の中でこれらの輝線が発生する領域である。
「このような二重のピークを持つプロファイルの検出は、他の方法では解像不可能な領域の形状に、初めて確実な制約を与えます。我々は今、活動銀河の摂食過程と内部構造の明確な証拠を得た」とブラジルの国立宇宙研究所のAlberto Rodriguez-Ardila氏は語る。
降着円盤のメカニズムの解決に繋がる可能性
この場合、検出された2つの輝線は “Paschen-α”と “O I”である。
この観測によって、降着円盤のさまざまな観測が行われるようになった。詳細な解析の結果、”Paschen-α”線の原点半径は16.77光年(超巨大ブラックホールから光が地球1日に進む距離)であることがわかった。
一方、O I線は降着円盤の半径18.86光年のところにある。
この測定から、幅広い線の領域の外側の半径はおよそ52.43光年であろうという予測も導かれた。
「このモデルはまた、III Zw 002の広線領域が地球上の観測者に対して18度の傾斜角を持ち、その中心にある超大質量ブラックホールは太陽の4億~9億倍の質量であることを示している」と、説明されている。
最新の観測は、降着円盤の形やそのメカニズムの理解を深める助けになるかもしれない。降着円盤を観測することで、ブラックホールやそのホスト銀河の発達に関する重要な情報も得られるかもしれない。
論文
- The Astrophysical Journal Letters: First Observation of a Double-peaked O i Emission in the Near-infrared Spectrum of an Active Galaxy
参考文献
- NOIRLab: Accretion Disks: How Big Are They Really?
- bbb
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