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1兆分の1という超高速シャッタースピードカメラで原子のカオスな動きを捉える事に成功

市販のデジカメでは、メカニカルシャッターなら速い物で8,000分の1秒、電子シャッターなら32,000分の1秒という物があるが、私たちを構成する原子のような、ミクロの世界をのぞき込むにはこれでは到底追いつかない。

この度、“1兆分の1秒”という、シャッタースピードを実現する方法が開発され、材料科学において、非常に重要となる、原子のクラスターの集団的なゆらぎである、「動的無秩序」を撮影することに成功したことが報告されている。

動的無秩序は、振動や温度変化などをきっかけに、原子の集まりが一定時間、物質内で特定の動きや踊りをすることだ。この現象を材料で理解することで、よりエネルギー効率の高い固体冷蔵庫やヒートポンプなどの熱電デバイスを作ったり、発電所や自動車の排気ガスから出る廃熱を直接利用可能なエネルギーに変換することができるようになる可能性がある。

それが今回、新しい超高速シャッターシステムによって、動的無秩序が起こっていることをより深く理解することができるようになったという。乱れた原子の集団が動いているため、スローシャッターを使うと「動的無秩序」がぼやけてしまうが、高速シャッターを使うと見えるようになるのだ。

可変シャッター原子ペア分布(vsPDF)と呼ばれるこの新しいプロセスは、約1ピコ秒のシャッタースピードで原子位置を測定するもので、一般的なカメラのシャッタースピードの「100万分の1」(1兆分の1)の速さである。

材料科学、応用物理学、応用数学のSimon Billinge教授は、「この技術は、複雑な材料で起こっている複雑な現象、つまり、材料の特性を向上させる隠れた効果を解明する全く新しい方法を提供してくれます。この技術を使えば、材料を観察して、どの原子が踊っているのか、どの原子が座っているのかを見ることができるのです」

今回、研究者は新たなカメラをテルル化ゲルマニウム(GeTe)という材料に向けた。GeTeはその特殊な性質から、廃熱を電気に変換したり、電気を冷却に利用したりするために広く使われている。

カメラの結果、GeTeはどの温度でも平均して結晶としての構造を保っていることが分かった。しかし、温度が高くなると、原子が熱エネルギーと運動を交換し、材料の自発的な電気分極の方向と一致する勾配を持つ、より動的な無秩序を示すようになったのだ。

これらの物理構造をより深く理解することで、熱電変換の仕組みに関する知識が深まり、より優れた材料や機器の開発が可能になります。例えば、太陽光が届かない時に火星探査機に電力を供給する機器のようなものにだ。

将来的には、Billinge教授は科学者がより動的なカオス系を理解し、彼の手法を使用することを容易にするつもりだ。この技術はまだ完全に自動化する必要があるが、さらに研究を進めれば、より一般的になり、原子の動きが重要な多くの物質系で使用できるようになるはずだという。

例えば、電池の電極の中でリチウムが動く様子を見たり、太陽光が水を分解するときの粒子の動きを調べたりするのに使うことができることも期待できるとのことだ。


論文

参考文献

研究の要旨

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