3D量子カメラに向けた大きな一歩が実現

masapoco
投稿日 2023年2月24日 14:52
laser light

人間の目で何かを見るためには、光に照らされる必要がある。だが、ウィットウォータースランド大学の研究者たちは、「ゴーストイメージング」と呼ばれる技術を改良することによって、光と決して相互作用しない物体を「見る」方法を発見したという。

この技術は、量子力学と古典力学を組み合わせた現象を利用するもので、量子もつれを起こした光子の一方から視覚情報を引き出すことで、高エネルギーの光線や放射線が対象物にダメージを与える危険性のある画像を撮影することができる。量子もつれ(エンタングルメント)とは、光子などの2つの粒子が同じ量子的性質を共有し、一方の粒子の性質を変化させると、その「もつれた」粒子の性質が同じように影響を受ける現象のことだ。

研究者らは、完全に暗闇に留まる物体を見るための、より簡単で効果的な方法を発見した。この研究は、学術誌『Optica』に「Revealing the embedded phase in single-pixel quantum ghost imaging」と題されて掲載された。

この研究では、まず非線形結晶に光を通すことで、1つの光子(フォトン)を破壊して2つのエンタングルフォトンを生成する。2つのエンタングルフォトンは波長などの物理的な性質を共有している。

ゴーストイメージングでは、1つの光子を送って対象物と相互作用させ、単純な検出器でキャッチする。もう一つの光子は、別の方法で送られ、詳しく調べられ測定される。 このとき、2番目の光子は何も見ていないにもかかわらず、その状態から相手の経験について驚くほど詳細な情報を得ることができるのだ。

この研究の主執筆者であるBereneice Sephton氏は、「もつれた光子の1つを暗闇の中で見たい物体に送り、そばにいる光子を見ることで、暗闇の中でその物体の特性を見ることができます」と語っている。

ゴーストイメージングの技術は、量子物理学の研究にとって目新しいものではないが、Sephton教授は、光子が検出されるまでの間に環境との相互作用を変化させることで、この方法を強化することに成功した。

この変化は、各粒子の確率分布(位相と呼ばれるもの)に影響を与え、新たな情報層となり、粒子が遭遇した物体の大きさや形状などの特性をより深く推測するのに利用できるのである。

「以前は、ゴーストイメージングでは、振幅(暗闇で光が物体を通過しているかどうか)しか見ることができませんでしたが、別のマスクを調整して加えることで、位相(光が物体によって速められたり遅くなったりするか)をこの技術に加えることができ、物体に関する追加の情報を見ることができるようになったのです。」

この技術によって、研究者は、光が強すぎると対象物が変化したり破壊されたりするような、極端に弱い光や光に敏感な状況でサンプルを照会することができるようになるという。例えば、ある種の生物学的サンプルにおいて、従来は追加的な調整が必要だった位相のずれた特徴を、この技術によって再構築することが可能になると期待している。

「既存の技術に、シンプルで安定した方法で位相情報を取得する方法を加えました」とSephton氏は言う。

この研究が印象的なのは、これまでのゴーストイメージングの方法を大幅に見直したわけではなく、むしろ、これまで隠されていたゴーストイメージングの「副作用」のいくつかが、その過程で役に立つと認識した点だ。

最終的には、ゴーストイメージングを使用する科学者に、より柔軟なアプローチと、より詳細な結果を提供し、特定の種類の天体をより簡単に捕らえることができるようになるはずだ。

「私たちは、この技術を、特に、敏感な生体サンプルのイメージングに応用し、この技術がなければもっと複雑で高価な方法を必要としたであろう特徴や特性を明らかにしたいと考えています」と、Sephtonは述べている。


論文

参考文献

研究の要旨

シングルピクセル量子ゴーストイメージングでは、非局所的な光子の空間相関を利用して、相互作用していない光で物体をイメージングし、射影マスクによる知的空間走査を用いて、検出をシングルピクセルに縮小する。多くの応用例があるにもかかわらず、複雑な振幅を持つ物体への拡張は依然として困難である。ここでは、位相検索に必要な干渉は、二光子量子ゴーストイメージングにおける従来の投影マスクから形成される相関測定値に自然に埋め込まれていることを明らかにする。これを用いて、複雑なオブジェクトの完全な位相と振幅の情報を得るための簡単なアプローチを開発する。位相ステップから勾配まで空間的に変化する構造と複雑な振幅を持つ物体を用いて、あいまいさのない素直な再構成を実証する。この技術は、生体内の光感受性構造の位相をイメージングするための重要なステップとなる可能性がある。



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