欧州連合(EU)の加盟国21カ国は、EU圏の科学および産業競争力を強化するために量子コンピューティング技術を発展させることの重要性を認識する「量子技術に関する欧州宣言」に署名した。
量子コンピューティングは、近年急速に進歩している。実用化の暁には、従来の古典的コンピュータで数千年かかる計算を一瞬でこなすことが出来ると目されているこの新たなテクノロジーは、医療、エネルギー、通信、サイバーセキュリティ、宇宙、防衛、気候・気象モデリングなど、さまざまな分野を変革する可能性を秘めている。
欧州委員会のThomas Skordas副総局長(通信ネットワーク・コンテンツ・技術担当)は、「この技術は、生産性を飛躍的に向上させ、産業を活性化させ、新しい市場、アプリケーション、雇用機会を切り開くだろう」と述べた。
Skordas副局長は、ベルギーのブリュッセルで開催された「Shaping Europe’s Quantum Future(欧州の量子未来を形作る)」会議で、Thierry Breton欧州委員長の代理として発言した。同氏は、この新たな宣言について、米国のシリコンバレーが世界を席巻したように、欧州を世界の「クオンタムバレー」にしようというEUの試みであると説明している。
「研究、産業、インフラ、人材、外部とのパートナーシップなど、あらゆる活動を対象とし、野心的に協力することによってのみ、われわれは欧州を、量子の卓越性と革新性において世界をリードする地域へと変貌させることができる。量子力学は、私たちが可能性の限界に挑戦する手助けをしてくれるでしょう」と、Skordas副局長は述べている。
この宣言は12月に初めて署名され、EUにおける量子コンピューティング技術への協力、投資、革新の舞台を整え、EUをこの分野における世界的リーダーとして位置づけるものである。
今日、この協定には欧州20カ国が署名した:クロアチア、キプロス、チェコ共和国、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、ラトビア、オランダ、ポーランド、ルーマニア、スペイン、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデンである。アイルランドは協定に署名していない。
署名加盟国は以下に同意する事になる:
- 量子技術の戦略的かつ高潜在的な領域において、互いにおよび欧州委員会と協力し、EUを世界のクオンタムバレーにすることを究極の目標とする。
- 主要なヨーロッパ、国家、地域のR&Dプログラムとイニシアチブを整合または調整し、量子技術におけるヨーロッパの取り組みを強化し、国際パートナーや関連する政府標準化機関と共に量子標準を形成するための協力活動を開始する。
- 「ラボ」から「ファブ」への移行を加速し、ヨーロッパのサプライチェーンのギャップを埋め、高品質なヨーロッパ量子研究を市場可能なデバイスやアプリケーションに変換する努力を調整する。
- 量子コンピテンスクラスターの調整されたネットワークをサポートする。これらのクラスターは、ヨーロッパレベルで会員国における量子技術エコシステムのさまざまな活動を促進し、ネットワークすることを目的とする。
- 地上および宇宙における未来の汎ヨーロッパ量子インフラを共同で構築するための活動に取り組む。
- ヨーロッパの量子エコシステムのすべての領域をさらに発展させ、特にスタートアップとスケールアップのサポート、および多くの産業部門の大企業が量子に投資するよう促す行動を通じて、行う。
- EU量子エコシステムをサポートおよび成長させるために必要なスキル開発とトレーニング措置を特定し、これらを実施するための調整された行動をとる。
- 量子技術の社会的および経済的影響、および量子コンピューティングが現在の暗号技術にとって提起しうる課題についての深い理解を得るための活動を行う。
- グローバルな量子技術展望を監視し、EUの経済的安全保障を強化するための国際的に焦点を当てた措置を調整し、重要な発展、機会、脅威を積極的に特定し、第三国および国際組織との量子に関する将来のEUレベルの合意および協力機会の特定および開発に積極的に取り組む。
先月、EUとカナダは、AI、量子科学、半導体、オンライン・プラットフォーム関連の公共政策、安全な国際接続、サイバーセキュリティ、デジタル・アイデンティティの分野など、「デジタル変革における新たな課題」に取り組むため、戦略的デジタル・パートナーシップを強化する意向を発表した。
量子科学に関しては、両地域は「互恵的な協力」を拡大し、この分野における研究、開発、革新の改善と加速を図るとともに、雇用と幅広い経済における量子技術の利用を促進する意向だ。
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