IntelのCEO Pat Gelsinger氏は、NVIDIAがAI分野で優位に立ったのは運のおかげであり、NVIDIAが過去数年にわたって開発してきたソフトウェアやハードウェアのおかげとは限らないと考えているようだ。
マサチューセッツ工科大学(MIT)主催のインタビューで、Gelsinger氏は、IntelのAIハードウェアへの取り組みと、それが競争優位性をもたらすと考えているかどうかについて質問された。Gelsinger氏はまず、Intelの過去の失敗を嘆き、NVIDIA CEOのJensen Huang氏がAIに賭けて「非常に幸運だった」と述べ、IntelもLarrabeeディスクリートGPUプロジェクトを諦めていなければ、同じように幸運だった可能性があると指摘した。
Gelsinger氏はさらに、自分が13年前にIntelから退社したことで、「AIの形を変えるはずだった」Larrabeeのようなプロジェクトがキャンセルされ、ハイパフォーマンス・コンピューティングの分野ではほとんど競争することなく、NVIDIAが繁栄することができたと述べている。そして、NVIDIAのHuang氏を、当初はグラフィックス技術に専念していたが、業界がその方向に進み始めたときに幸運にもAIアクセラレータに手を伸ばしたハードワーカーだと評した。
Gelsinger氏は、自身がIntelの指揮官となった今、AIを「民主化」する戦略で軌道修正する決意を固めている。そのために、Intelはすべてのマシンにニューラル・プロセッシング・ユニット(NPU)を搭載しようとしており、すでにMeteor Lake CPUのラインナップの発表でそれを見ることができる。Intelが注力するもう1つの分野はソフトウェアで、CUDAのような独自技術の必要性を排除するため、オープンソースのソフトウェア・ライブラリの開発に力を入れている。
Gelsinger氏によれば、AI分野では少なくとも20年のイノベーションが期待できるという。今日のAIは、ChatGPTのようなサービスを作成するために、テキストのような単純なデータセットを利用するために使用されることがほとんどであるため、より複雑なデータセットを使用する他のさまざまなアプリケーションのためのAIモデルのトレーニングには、多くの進歩の余地があると彼は考えている。
ただ、こうしたGelsinger氏の発言は勿論波紋を呼んでいる。NVIDIAの応用ディープラーニング研究担当副社長Bryan Catanzaro氏は、Gelsinger氏に反論し、NVIDIAが結果を出せたのは運によるものではなくビジョンと実行力の結果であり、Intelにはそれが明確に欠けていたため、現在の地位にいるのだと述べている。彼は2007年にLarabeeに取り組んでいたエンジニアの一人で、LinkedInのプロフィールを見ると、当時はIntelでインターンをしていたことがわかる。
当時、NVIDIAとIntelはHPC処理分野で実際に小競り合いがあり、NVIDIAはTeslaカードを、IntelはKnights Ferry GPGPUを宣伝していた。HPCアプリケーションにおけるNVIDIAのTeslaプラットフォームの採用が芳しくないことから、Intelは、このレベルの相互互換性によって、スーパーコンピューティングにおけるIntelの優位性が継続することを期待していたようだ。
IntelはLarrabeeプロジェクトを実質的に中止し、代わりにHPCタスクにはx86プロセッサを採用し、グラフィックスへの取り組みは統合GPUに集中することを選択したため、事態は Intel に有利には展開しなかった。
Catanzaro氏はツイートの中で、Intelは当時NVIDIAの10倍の規模だったと指摘している。そのため、IntelはLarrabeeでNVIDIAを粉砕しようと考えた。それでも、並列コンピューティングで優位に立つ現在のNVIDIAのように、プロジェクトをやり遂げるビジョンと実行力が欠けていた。
2023年の第3四半期になると、状況は一変する。NVIDIAの同四半期の売上高は180億ドルで、前年同期比206%増。一方、Intelは140億ドルで、前年同期比8%の減少となった。より重要なのは、両社がどこで稼いだかであり、NVIDIAがデータセンター製品から145億ドルを得たのに対し、Intelはわずか38億ドルであった。
この舌戦がいつまで続くのかは分からないが、確かなことはAIハードウェアの需要は急速に伸びているため、Intelの新しいチップ工場への投資も今後数年で大きな成果を上げる可能性があり、NVIDIAは、製造パートナーとしてIntelの利用を考えていると言うことだ。両社は今後手を取り合う可能性もあるだろう。
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