今回OpenAIで起こった衝撃的なCEO解任劇の内幕を我々は知ることはないが、分かっていることは、同社CTOのMira Murati氏が暫定CEOに就任するということだ。そして彼女がこれまで語ってきた事を顧みてみると、同社の今後進んでいく道が見えてくるかも知れない。
宇宙・電気自動車・AIを渡り歩く技術者
OpenAIでこれまで注目を集めていたSam Altman氏の陰に隠れてしまっていた同氏だが、OpenAIの今日の成功を導いた陰の立役者がMurati氏であるとの評価も高い。
アルバニア出身のMurati氏はダートマス大学で機械工学の学位を取得し、その後、投資銀行Goldman Sachsでインターンを経験し、フランスの航空宇宙グループであるZodiac Aerospaceで勤務した。
その後、彼女は電気自動車のTeslaで、Model X(同社のクロスオーバーSUV)のシニアプロダクトマネージャーとして3年間勤務したが、ここでの取り組みが彼女が後にAIに取り組むきっかけを与えたようだ。当時TeslaはAI対応のドライバーアシスタンスソフトウェア「Autopilot」の初期バージョンをリリースし、工場用のAI対応ロボットに取り組んでいた。
2016年には、PC用の手と指のトラッキングモーションセンサーを開発するスタートアップ、Leap Motionに製品およびエンジニアリング担当副社長として参加。
2018年にOpenAIに加わり、応用AIおよびパートナーシップ担当副社長として活動を開始した。2022年にCTO(最高技術責任者)に昇進し、AI対応のチャットボット「ChatGPT」、テキストから画像を生成するAI「DALL-E」、GitHubのCopilot製品を動かすコード生成システム「Codex」の開発を率いた。
そして暫定CEOとして今に至る。恒久的な後任を取締役会が決定するまでではあるが、場合によってはそのまま彼女が正式なCEOに就く可能性もある。そんな彼女はOpenAIの今後についてどのように考えているのだろうか?
彼女はマルチモーダルモデル、つまりテキストだけでなく画像の文脈も理解できるOpenAIのGPT-4 with Visionのようなモデルを、会社の未来であり、超高性能AIへの最も有望な道筋のひとつだと考えていることも、過去のインタビューから窺える。
「実社会と接触することなく、真空の中で技術を進歩させることは可能です。しかし、問題は実際に正しい方向に進んでいるのか、ということです」「テクノロジーを現実と接触させ、人々がそれをどのように使い、何が限界なのかを見る。そして、それを技術開発に反映させることができるのです。もうひとつの側面は、現実世界の問題を解決するために、(その技術が)どれだけ針を動かしているのか、それとも目新しいものなのかを実際に見ることができるということです」と彼女はFastCompanyのインタビューで答えている。
研究室の中だけで人工知能(AGI)を構築することは、それが世に出たときの社会的衝撃をさらに大きくする可能性があると彼女は主張している。人間のフィードバックによる強化学習を通じて同社の大規模な言語モデルを調整することが、AIがどのように機能するかという課題に対処するためのより効果的な方法だと。
彼女は、コンピュータが人間のように考えることができるかどうかを判定するチューリングテストを、”幅広い認知タスク”を取り入れるために再構築したいと考えている。しかし何よりも、彼女はOpenAIのシステムが本物の生きた人間から学ぶことを望んでいる。
「テクノロジーが私たちを形成し、私たちがそれを形成する。解明しなければならない難しい問題がたくさんある。どうすればモデルを自分の望むように動かすことができるのか、どうすればそれが人間の意図に沿ったものであり、最終的に人類に役立つものであることを確認できるのか。また、社会的な影響や倫理的、哲学的な問題など、考えなければならないことは山ほどある。哲学者、社会科学者、芸術家、人文科学者など、さまざまな意見を取り入れることが重要です」。
汎用人工知能(AGI)ついて、彼女はどのように考えているのだろうか?
「人工的な一般知能というのは、通常、経済的な生産物、重要な経済的生産物を生み出すことができる高度に自律的なシステムを意味します。言い換えれば、異なる領域にわたって一般化できるシステムです。人間レベルの能力ですOpenAIの具体的なビジョンは、AIシステムを安全に構築し、人間の意図に沿った形で構築する方法を見つけ出すことです」と、AP通信に語っている。
そんな彼女のお気に入りの映画は『2001年宇宙の旅』とのことだ。この映画は、地球から遠く離れた宇宙船のAIが反乱を起こし、乗組員を殺そうとする内容であり象徴的でもある。
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