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インドの月面着陸の意義と世界的な月探査競争について宇宙政策専門家が解説

インドは2023年8月23日、チャンドラヤーン3号着陸機で月の南極付近に着陸した最初の国として歴史を刻んだ。これはまた、2020年に中国が月面に着陸して以来のことでもある。

インドは、アルテミス計画を進めている米国を含む、月着陸を目指しているいくつかの国のひとつである。月の南極は、クレーターや海溝、太古の氷のポケットが特徴的な地表であるため、特に興味深い。

The Conversation U.S.は、国際問題の専門家Mariel Borowitz氏に、この月面着陸が科学と国際社会の両方に与える影響について尋ねた。

なぜインドのような国々が月へ行こうとしているのでしょうか?

各国が月へ行くことに興味を持つのは、それが人々にインスピレーションを与え、人類の技術的能力の限界を試し、太陽系についてより多くのことを発見することを可能にするからです。

世界中の誰もが夜空を見上げて月を見ることができ、人類が作った宇宙船が月面を歩き回っていることがどれほど素晴らしいことかを理解することが出来ます。

月はまた、平和的でありながら目に見える形で、国際的な協力と競争の両方を行うまたとない機会でもあります。

米国、ロシア、中国、インド、イスラエルといった多くの国々、さらには営利団体までもが月面着陸に関心を寄せているという事実は、新たなパートナーシップを築く機会が数多くあることを意味しているでしょう。

このようなパートナーシップは、各国がリソースを出し合うことによって宇宙でより多くのことを行うことを可能にし、個々の研究者や組織を結びつけることによって、ここ地球上でもより平和的な協力を促すことが出来ます。

また、月探査が経済的な利益をもたらすと考える人々もいます。近い将来、宇宙技術に取り組み、ミッションに貢献するスタートアップ企業が出現するかもしれません。インドでは最近、宇宙関連のスタートアップ企業が急増しているのです。

最終的には、水、ヘリウム3、希土類元素など、月で発見できる天然資源に基づいて経済的利益をもたらすかもしれません。

宇宙に対する世界的な関心が高まっているのですか?

ここ数十年の間に、宇宙活動に携わる国の数は大幅に増加しています。例えば、地球に関する画像やデータを収集する衛星の場合、これは非常に顕著です。この種の衛星ミッションには60カ国以上が参加している。そして今、この傾向は宇宙探査、特に月探査へと拡大しています。

ある意味、月への関心は、1960年代の最初の宇宙開発競争と同じような目標、つまり技術力を示し、若者や一般大衆にインスピレーションを与えることによってもたらされています。しかし、今回は2つの超大国だけが競争しているわけではありません。現在では多くの参加者がおり、競争的な要素も残っているが、宇宙探査のために協力し、新たな国際的パートナーシップを築く機会もああります。

また、このような新しい主体や過去60年間の技術的進歩により、より持続可能な探査に取り組む可能性もあります。これには、月面基地の建設、月資源の利用方法の開発、そして最終的には天然資源や観光をベースとした月での経済活動への従事などが含まれます。

インドのミッションは、他の国の月探査と比べてどうですか?

インドの偉業はこの種のものとしては初めてであり、非常にエキサイティングなものですが、注目すべきは、このミッションが現在月とその周辺で稼働している7つのミッションのうちの1つであるということです。

南極付近にはインドの探査機チャンドラヤーン3号に加え、将来の着陸地点を特定するために月面を調査している韓国のパスファインダー月探査機、NASAが資金提供した宇宙新興企業が開発したCAPSTONE探査機、NASAのルナー・リコネサンス・オービターがあります。CAPSTONE探査機は、月を周回する独自の軌道の安定性を研究しており、ルナー・リコネサンス・オービターは、月に関するデータを収集し、将来のミッションのための場所をマッピングしています。

また、インドの探査機「チャンドラヤーン2」は墜落しましたが、付属のオービターはまだ稼働しています。中国の「嫦娥4号」と「嫦娥5号」の着陸機もまだ月面で稼働しています。

他の国や商業団体も参加するために動いています。ロシアのルナ25号ミッションは、チャンドラヤーン3号が着陸する3日前に月に墜落しましたが、ロシアが探査機を開発し、ここまで近づいたという事実は、やはり重要な功績です。

同じことは、日本の民間宇宙企業であるispaceが開発した月着陸船にも言えます。この着陸船は2023年4月に月に墜落しました

なぜ月の南極を探査するのですか?

月の南極は、各国が将来の探査に力を入れている地域です。NASAのアルテミス計画の13の着陸候補地は、すべて南極付近に位置しています。

この地域は、宇宙飛行士のサポートやロケット燃料の原料となる水の氷を発見できる可能性が最も高いのです。また、南極には常に、あるいはほぼ常に太陽光が降り注ぐピークがあるため、月での活動を支える電力を生み出す絶好の機会にもなります。


本記事は、Mariel Borowitz氏によって執筆され、The Conversationに掲載された記事「India’s Chandrayaan-3 landed on the south pole of the Moon − a space policy expert explains what this means for India and the global race to the Moon」について、Creative Commonsのライセンスおよび執筆者の翻訳許諾の下、翻訳・転載しています。

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