The Wall Street Journalによると、米国Biden政権は、中国が半導体製造に必要なレアアース(ガリウムとゲルマニウム)の輸出を規制する立法措置をとったことを受け、中国への輸出規制をさらに強化することを検討している。ただし、今回はハードウェアや技術輸出の話ではなく、米国を拠点とするクラウド・コンピューティング能力(特にAI関連能力)へのアクセスに関するものだ。
米国が中国に課した技術輸出規制の成果があまり芳しくなかった数年間に続き、米国は今、中国が最新かつ最高の処理能力を手に入れるために利用するもうひとつの逃げ道、クラウド・コンピューティングに切り込もうとしているという。自社のデータセンター用に最新のチップを入手できなくても、クラウド環境であればいつでも最新・最高の能力を手に入れられるのが現代だ。
AWS、Microsoft、Googleなどのクラウド・コンピューティング・プロバイダーに、中国の顧客にサービスを提供するために米国政府にライセンスを求めるよう強制することで、ホワイトハウスは中国の抜け道を塞ぎたいようだ。通常通り、米商務省がこの追加規制の実施を監督することになっており、数週間以内に実施される見込みだ。
中国は世界のレアアース生産量の約55%(2020年時点)を支配しているため、欧米からの技術的独立を達成する計画を実行する上で、常に極めて有利な立場にあった。中国以外のサプライチェーン・ルートを調達する必要性について協議が行われているが、言うは易く行うは難しである。中国の影響力の及ばない場所で経済的に実行可能なレアアース鉱床を見つけるだけでなく、それを支えるインフラの構築も必要だ。中国の力は、世界のレアアースの約85%が中国の加工施設を経由しなければならないという事実から来るものだ。
その中国は昨日、ガリウムとゲルマニウム(ゲルマニウムは次世代半導体を支えるブレイクアウト材料のひとつ)の輸出規制を発動し、ついにその力を行使した。この2つのレアメタルの世界最大の生産国(および株式保有国)であるため、他に調達先があるとは思えない。
中国は、ガリウムやゲルマニウムを利用した半導体設計を十分に研究する技術的ノウハウを持っていないが、研究開発できる国にとっては、材料や研究開発へのアクセスを確実に遮断することができる。結局のところ、中国は(技術的な輸出制限のために)今ボトルネックになっているシリコンの生産を購入することはできなかっただろう。賢いことに、中国は自国の半導体需要に影響を与えかねない、必要不可欠なありふれた材料をボトルネックにしているわけではない。
両大国が世界の覇権をめぐって争う中、中国と米国の行き来には終わりがないように見える。しかし、摩擦が加われば、影響を受ける製品の価格は上昇する一方であろう。
Source
- The Wall Street Journal: U.S. Looks to Restrict China’s Access to Cloud Computing to Protect Advanced Technology
- via Reuters: US set to restrict China’s access to cloud computing – WSJ
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