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新たな素材「Qシリコン」の発見で量子コンピューティングに弾みがつく可能性

シリコンは1世紀以上にわたってエレクトロニクスの頂点に君臨してきた。ノースカロライナ州立大学(NCSU)のエンジニアは、量子コンピューターやスピントロニクスに重要な用途をもたらす新しい特性を持つ、Qシリコンと呼ばれる全く新しい形の材料を発見した。

NCSUの研究チームは、アモルファス・シリコンをわずかナノ秒のレーザーパルスでザッピングして溶かし、その後急速に冷却して再び固めることで発見した。これにより、研究チームはQ-シリコンと名づけた新しい形状を作り出した。

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研究者たちは、Qシリコンの発見に極めて短いレーザーパルスを使用した。 (Credit: NCSU)

Q-シリコンは、通常のシリコンにはない新しい特性をいくつか備えており、中でも最も重要なのは室温での強磁性である。この種の磁性は、データ・ストレージのいくつかの方法にとって不可欠であり、スピントロニクスとして知られる新興分野の解明に役立つ可能性がある。スピントロニクスとは、その名の通り、現在の電子機器のように電荷ではなく電子の「スピン」でデータを伝送・保存するものである。これにより、デバイスの小型化、高速化、エネルギー効率の向上が期待できる。

また、量子コンピュータの材料としても最適である。量子コンピュータは、情報を1と0だけでなく、両方の重ね合わせで同時に保存することができる。量子コンピュータは、情報を1と0だけでなく、その両方を同時に重ね合わせた状態で保存することができるため、従来のコンピュータが扱える計算よりもはるかに高度な計算を行うことができる。

強磁性だけではない。Q-シリコンはまた、通常のものと比べて硬度や超伝導性が向上しており、スピントロニクスや量子コンピューティングにも役立つ可能性がある。

「今回のQシリコンの発見は、スピントロニクスやスピンを利用した量子コンピューティングなど、新たな機能を追加することで、現代のマイクロエレクトロニクスに革命をもたらすでしょう」と、この研究の筆頭著者であるJay Narayan氏は語った。「つまり、Q-シリコンは、チップ上のマイクロエレクトロニクスとスピントロニクスを統合するための理想的なプラットフォームを提供するのです」。


論文

参考文献

研究の要旨

我々は、通常のシリコンと同じ結合特性を保ちながら、結晶シリコンよりも原子密度が60%高いQシリコンの発見を報告する。Q-シリコンは、1つ、2つ、または3つの四面体がランダムに詰まったアモルファス相と、<110>方向に沿って交互に穴の開いたサブユニットセルが並んだ結晶相を形成する。過冷却状態のアモルファスシリコンをナノ秒レーザーで融解し、急冷することで、シリコンの反磁性に比べ強固な強磁性を持つQシリコンが形成された。Q-シリコンのブロッキング温度は400K以上と見積もられており、スピンベース・コンピューティングと原子レベル・ストレージの新たなフロンティアが開かれることになる。

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