カリフォルニア工科大学(Caltech)の研究者は、宇宙空間での無線送電に成功した事を発表した。この世界初のデモンストレーションは、今年1月に打ち上げられた宇宙太陽光発電実証機(SSPD-1)の船上で行われたものだ。
宇宙太陽光発電は、再生可能エネルギーを利用するための次のフロンティアとなるものだ。この分野の研究は何十年も前から行われており、地球上のどこでも太陽光発電を利用できるようにすることで、エネルギー分野に革命を起こすことが期待されている。
日本でも、2025年までに宇宙太陽光発電の実証実験を開始するとの計画も出ており、今後この次世代のクリーンエネルギーとして期待されている。
カリフォルニア工科大学電気工学科のAli Hajimiri教授が率いる研究チームは、宇宙で太陽光発電を行い、地球に送電するスペース・ソーラー・パワー・プロジェクト(SSPP)を開始した。このプロジェクトの一環として、今年1月3日にSpaceX社のロケットに搭載された50kgのSpace Solar Power Demonstrator(SSPD-1)が打ち上げられ、最初の成功が報告された。
SSPD-1の成果
宇宙での太陽光発電を実現するためには、まずソーラーアレイを宇宙でコスト効率よく展開できることを実証する必要があった。そこで、SSPD-1に搭載された3つの実験のうちの1つ、Microwave Array for Power-transfer Low-orbit Experiment、略してMAPLEが開発された。
MAPLEは、カスタム電子チップで制御されながらも、低コストのシリコン技術で作られた軽量で柔軟な電力伝送装置で構成されている。アレイの柔軟性により、折りたたんでロケットで打ち上げることができ、その軽量性により宇宙空間での展開に必要な燃料を削減することが出来る。
SSPD-1はMAPLEを宇宙空間に展開することに成功したが、この実験の本当の試練は、太陽光発電を収穫して伝送する能力だった。
MAPLEは、送信機間の干渉を利用してエネルギーの焦点と方向を変え、可動部を不要にしました。電磁波のコヒーレント加算を利用することで、研究者たちは送信機アレイから希望する場所に動的に電力を集中させることができたのだ。
MAPLEの詳細
MAPLEは、送信機から約1フィート(30cm)離れた場所にある2つの受信機アレイで構成されている。これらの受信機に接続された一対のLEDを個別に点灯させ、切り替えて宇宙空間での電力伝送を実証することに成功した。この実験は密閉されていないため、温度変動や日射など、宇宙の過酷な環境でも機能することも示されたと、プレスリリースでは述べてられている。
また、MAPLEには小さな窓があり、そこで収穫した太陽エネルギーを地球に送り返すことが出来る。実験では、実際に太陽光エネルギーが、パサデナにあるカリフォルニア工科大学のキャンパスの屋上にある受信機で検出された。
研究者たちは今後、実験の個々の要素の性能を評価し、次世代SSPDの構築に役立つ知見を得る予定だ。SSPD-1には、まだ終了していない実験があと2つあり、結果は今後数ヶ月のうちに出る予定だ。
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