OpenAIと手を組み、Officeや検索エンジンのBing、果てはWindows 11のタスクバー自体へAIチャットボットを統合するなど、矢継ぎ早にAI製品をリリースするMicrosoftと対照的に、先月AIチャットボット「Bard」を発表して以来、Googleはその失敗や社内的な混乱が伝えられている。
新たなCNBCからの報道は、そんな社内の状況について、混乱の収拾に務めようとする幹部と、Googleの先行きを不安視する社員達のやりとりが垣間見える。そして、同社は当初「新たなAIテクノロジーが検索と統合される」とする当初の方針を転換している事も明らかになった。
CNBCは、Googleの社員が、GoogleのChatGPTの競合であるBardの発表の扱い方について、Sundar Pichai CEOを筆頭とする首脳陣を批判してから行われた初めての全社会議の音声データを入手した。
BardのプロダクトリーダーであるJack Krawczyk氏は、内部フォーラム「Dory」からの以下の質問に答えた。
「BardとChatGPTは大規模な言語モデルであり、知識モデルではない。人間に聞こえるテキストを生成するのは得意ですが、そのテキストが事実に基づいていることを確認するのは得意ではありません。なぜ、大きな最初のアプリケーションは、その核心が真の情報を見つけることである『検索』であるべきだと考えるのでしょうか?」
Krawczykはこれに対し、「はっきりさせておきたいのですが、Bardは検索ではありません」と即答した。
「これは、私たちが話し合った共同 AI サービスの実験です。私たちがこの製品を使うことで見出している魔法は、あなたが想像力の火付け役となり、好奇心を探求するのを助ける創造的な仲間になることです」
しかし、Krawczyk氏は、「ユーザーが検索のように使おうとするのを止めることはできない」 と、述べ、本来意図していない検索に使われることももちろん想定はしているようだ。
Googleももちろん検索自体を諦めたわけではなく、「Search It」という新機能を構築している最中だという。
Krawczyk氏は、「我々は、ユーザーに我々の自信を伝えるだけでなく、そこに関連するクエリをより良く生成することを試みるつもりです」と述べた。また、Bardには「他の原稿を見る」というタブが表示され、検索結果と明確に分離するようになる事も示唆している。
このBardを検索と分離しようとする動きは、同社の方針転換を示すものだろう。当初Google幹部は、社内で開発している新たなAIテクノロジーは検索と統合されると繰り返し述べていた。
この方針転換についてはもちろん社内で批判を呼び、複数の匿名Google社員はCNBCに対し、経営陣の一貫性のない回答がさらなる混乱を招いたと語っている。
検索担当のエンジニアリング担当バイスプレジデントであるElizabeth Reid氏は、Krawczyk氏のコメントと同じように、同社が大規模言語モデル(LLM)を多用していることに焦点を当てて話をしている。
「Jackが言ったように、Bardは検索とは全く別物です。私たちは、LLMを検索に導入したかなり長い歴史があります」と彼女は言い、BertとMumというLLMを過去に採用した実績を誇っている。
また、CEO Sundar Pichai氏は同じ会議の中で、Bardの様々な使用例についての質問をされた後、「これが実験的であることを認めることが重要です。これらの製品の限界も認めることも非常に重要です」と、Pichai氏はBardの失敗について思い起こしたのか、その限界について言及した。
だがPichai氏は、Bardが「時間の経過とともに改善されるだろう」と考えている。「このような製品は、使う人が増えれば増えるほど良くなっていきます。好循環です」
また、Bardの公開後にその失敗が明らかになり、大きく報道されたことについて社員の以下のコメントと質問が述べられた。
「最初の公開デモは意気消沈し、株価を急落させ、大規模なメディア取材を招きました。本当は何があったのか?」「Bardの発表会で何が悪かったのか、率直な感想を聞かせてほしい」
これについては、Pichai氏は答えず、Krawczyk氏が答えた。
「このような質問は公平であり、我々はBardが起動していないという事実を再確認したい。我々は、これは実験であることを世間に認めました。しかし、今、業界では大きな盛り上がりを見せています」
Krawczyk氏は、Googleがこの技術を「ユーザーの手元に届け、彼らの創造性を取り込むことに興奮している」と付け加えた。
また、Pichai氏がBardのブログ投稿の意図について(これが早すぎたのではという意見もあった)は以下のように述べている。
「ブログ投稿の目的は、外部の信頼できるテスターに公開すると決めた時点で、物事が漏れる可能性があり、それを位置づけることが重要でした。私たちはまだ製品を発売していません。そして、リリースするときには、実験的な製品であることを明らかにします」
Pichai氏は、年次開発者会議であるGoogle IOの後に、より詳細な情報を提供したいと述べている。Googleはこのイベントの日程をまだ発表していない。
また、社員からの「AIの立ち上げは戦略的に性急なのではないか」との質問に対して、Pichai氏はまず、GoogleがAIの研究開発に他のどの企業よりも多くの資金を費やしていることを指摘し、回答を始めた。
「この質問の前提には同意しかねます。私たちは、長い間、AIに深く取り組んでいます。ユーザーに焦点を当て、インパクトのあるものを作るようにしなければならないという意味では、その通りです。ユーザーの意見は重要な部分となるので、それを正しく理解することが重要です」
GoogleのAIチーフであるJeff Dean氏は、同社の優秀な人材の喪失に関する質問に回答した。具体的には、AIに使われる著名なアーキテクチャに関する論文に記載されていた重要人物を、なぜGoogleはこれほどまでに失ったのかという質問である。
「この分野が超競争的な分野であることを認識することが重要だと思います。この種のスキルを持つ人は、高い需要があります」と、人材獲得競争が熾烈であることを示唆した。
Dean氏は、Googleには「世界で最も優れた2つのAI研究チーム」があり、「AIの最先端を押し進めるために肩を並べて働く人々」がいると述べている。
Ppicha氏はさらに、「ここ数週間で、文字通り地球上で最高のML研究者やエンジニアであり、Googleへの入社を希望する人たちと話をしている」と、新たな人材獲得について示唆している。
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