ハンセン病を引き起こす “らい菌” が、肝臓を再生させる能力を持っている可能性

(Credit: Charles C. Shepard/CDC)

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ハンセン病は、人類の歴史の中で最も古く、最も根強い病気の1つであり、近代においても大きな問題になっていた病気だが、これは「らい菌(Mycobacterium leprae)」という2つの寄生菌によって引き起こされる。そんな、人類に大きな被害をもたらしてきた細菌が、新たな研究によると再生医療において大きな役割を果たし、人類の健康に寄与する可能性が浮上したのだ。

ハンセン病はそもそもが医療や病気への理解が乏しい時代に、誤解によってその外見や感染への恐怖心などから、患者への過剰な差別が生じた歴史がある。実際には、ハンセン病はあまり伝染しない。感染者の粘液に繰り返し過度に接触することで広がるが、菌に触れた人の95%は発病せず、現代では薬剤によって治療することが可能だ。

このらい菌は、細胞内のみで増殖する偏性細胞内寄生体であり、人工培養が出来ず、ヌードマウスやアルマジロ(Dasypus novemcinctus)で増殖されることによってのみ得られる。そのためハンセン病の治療薬の開発に困難をきたしていた。

そんな、アルマジロに自然に存在しているものについて、微生物と宿主の相互作用を研究する中で、このらい菌には細胞をハイジャックして再プログラムする予想外の能力があることが分かったのだ。

そこで、エディンバラ大学の医学研究者Samuel Hess(サミュエル・ヘス)氏らは、45匹のアルマジロにらい菌を感染させ、そのうち13匹を感染に耐えるようにし、その肝臓を感染していない12匹のグループと比較する試験を行った。

その結果は驚くべきものだった。なんと、感染したアルマジロの肝臓はそれまでよりも大きくなり、臓器が完全に超大型化したのである。しかし、肝臓は機能的には正常であり、血液や胆管も正常な大きさになっていた。

研究の概要図 (Credit: Samuel Hess et al.)

エジンバラ大学の細胞生物学者であるAnura Rambukkana(アヌラ・ラムブッカナ)氏は、「もし、バクテリアが生きた動物に悪影響を与えることなく、肝臓を機能的な器官として成長させる方法を特定できれば、その知識を活かして、老化した肝臓を若返らせ、損傷した組織を再生させるより安全な治療介入法を開発できるかもしれません」と語っている。

具体的なメカニズムは不明だが、らい菌は成人の肝細胞を幹細胞のような状態に変えて再プログラムし、そこから余分な肝組織をすべて正しく成長させているようである。

ちなみに、研究チームのメンバーは以前、ハンセン病がシュワン細胞と呼ばれる神経支持細胞に対して同様のことを行い、より多様な種類の細胞を生み出すことのできる若い細胞の状態に再プログラムする働きを持っていることも実証していた。

今回、アルマジロを使った実験では、瘢痕化、老化、線維化、腫瘍の兆候のない、完全に健康な超大型の肝臓が得られたのだ。

ヒトの肝臓は、少なくとも部分的には再生する能力を持っている(それが可能な唯一の臓器である)。しかし、慢性肝疾患による炎症性損傷を繰り返し、肝臓は時間とともに損傷を蓄積し、毎年、何百万人もの人々が慢性肝疾患で命を落としている。

もし、ハンセン病を引き起こすらい菌が、肝臓組織を再生する仕組みを突き止めることが出来れば、いつかヒトの治療にも用いることが出来る様になるかも知れない。

研究チームは論文の中で、「予想外で型破りではありますが、この進化的に洗練された生体内(in vivo)モデルは、本来の再生機構に対する我々の理解を前進させるかもしれません」と結論づけている。

研究の要旨

再生医療や健康な加齢のための理想的な治療法には、健全な臓器の成長と若返りが必要であるが、臓器レベルのアプローチは今のところ存在しない。我々は、天然の部分的な細胞初期化能力を持つMycobacterium leprae(ML)とその動物宿主である九帯アルマジロを用いて、進化的に洗練された成体肝臓の成長と再生のモデルを提示する。感染したアルマジロでは、MLは肝臓全体を再プログラムし、肝細胞の増殖と血管系、胆道系の比例した拡張を含む健康な肝小葉の増加により、総肝/体重比を有意に増加させる。MLに感染した肝臓は、損傷、線維化、腫瘍化することなく、微細構造的にも機能的にも正常である。バクテリアによる再プログラミングは、肝前駆/発生/胎児遺伝子を活性化し、成長、代謝、抗老化に関連するマーカーを増加させ、老化や腫瘍形成遺伝子の変化は最小限である。これはバクテリアが恒常性維持や再生経路を乗っ取り、de novo器官形成を促進することを示唆している。このことは、肝臓臓器の成長を効果的かつ安全に再活性化する内因性経路の解明を促進し、臓器再生や若返りなどの幅広い治療効果をもたらすと考えられる。

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