他人に“うんち”を移植する「糞便移植療法」に対してオーストラリア規制当局が世界初となる承認を行った

masapoco
投稿日
2022年11月14日 12:25
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オーストラリアの医薬品行政庁(TGA)は、重篤な細菌感染症の治療を目的として、他人の“大便”を移植する、“糞便移植療法”について、承認を行った。この承認は、世界の規制当局がこの種のマイクロバイオーム療法に対して正式に認可を下す初の試みとなる。

とはいえ、今回のTGAの承認は、一般にC.diffと呼ばれるクロストリジオイデスディフィシル菌による感染症を治療するためにのみ承認された、非常に特別な治療法となる。この細菌感染症は、抗生物質治療後の患者に定着し、時には生命を脅かすほどの激しい下痢を引き起こすことがある非常に危険な感染症だ。今回、その感染症の治療についてのみ、オーストラリアのTGAは特別に糞便移植について承認を行っている。

今回、TGAが承認を与えた「マイクロバイオーム療法」は、バイオテクノロジー企業BiomeBank社が開発したBIOMICTRAと名付けられた手法である。糞便を移植する方法として、同社はカプセルによる投与の開発にも取り組んでいるようだが、今回承認が得られたのは大腸内視鏡検査の際に医師が直接投与する方法だという。

同社の最高技術責任者である、Sam Forster(サム・フォースター)氏は、The Guardian紙の取材に対し、「大腸内視鏡検査で投与する利点は、短時間で大量に投与できることです。錠剤やカプセルで飲むと、上部消化管を通過して目的の場所に届かなければなりません。チュアブル錠は絶対に避けたい。問題はその量です。数百ミリリットルの糞便を入れようとすると、それはおそらく普通のコップの大きさです。そのような形で提供したいとは思わないでしょう。」と説明している。

こうしたマイクロバイオーム療法については、アルコール依存症や肥満、皮膚がん、自閉症など、あらゆる人間の抱える疾患などへの治療法として研究が進められている。だが、実はこの“微生物改変療法”という考え方は、実はまだ研究が行われて日が浅いのが実情だ。私たちの腸内に生息する何兆個もの細菌は、確かに健康全般に関与している事は分かっているが、その知識を具体的にどのように臨床治療に結びつけるかは、まだ理解が進んでいない。

糞便移植はそのようなマイクロバイオーム療法の一種であり、健康なドナーが提供した糞便を、カプセルや浣腸に加工して患者に摂取してもらう。その目的は、患者の腸内細菌叢に健康な善玉菌を植え付けることである。しかし、他人の糞便を自身の体内に取り込むと言うことには抵抗もあるだろう。また、この治療法自体も、従来の薬のように、大量の人々に効果のある“標準的なうんち”を作り出すことも難しい。

そういった不確実性から、世界のどの規制当局でも糞便移植療法を具体的に認可するまでには至っていない。例えば米国では、食品医薬品局(FDA)が “Enforcement discretion “という条項で糞便移植の臨床利用を非公式に認めている。つまり、患者が自分で「健康な」糞便を供給できるのであれば、医師が糞便移植の実施を監督し、FDAが違反を追及することはないのだ。

しかし、現在、特定の疾患を治療すると主張するマイクロバイオーム療法を製造・販売することは、一企業には許されていない。今回TGAがBiomeBank社に与えた承認は、非常に特別な例となる。

BiomeBank社は、既にドナーから“うんち”を集めてそれを移植するという糞便移植を超えた未来を見据えている。つまり、培養され、標準化されたマイクロバイオームの移植に向けて、様々な細菌株のコレクションを行っていると言うことだ。

BiomeBankの共同設立者であるSam Costello(サム・コステロ)氏は、「私たちは、マイクロバイオームが関与する疾患をより大きな規模で緩和することを目指し、培養したマイクロバイオームを用いた治療法の開発を進めることに興奮しています。マイクロバイオーム分野にとってエキサイティングな時期であり、これらの疾患を治療するための新たなソリューションを開拓できることを嬉しく思います。」と述べている。



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