一体何が変わったのか、変更点を見付けることが驚くほど困難なiPhone 14標準モデルに比べて、iPhone 14 Proは多くの変更点があり、多くのユーザーを惹きつけるに値するものだった。
特にカメラ機能は、これまで頑なに守ってきた1,200万画素センサーから、4,800万画素という高解像度センサーの採用を、初めて行ったiPhoneとなる記念碑的なモデルとなる。
ただし、アナウンスの中で、ただトリミングするだけの機能を「光学2倍望遠」を搭載として大々的に主張しているのにはいささか驚かされた。原理的には以下のようにニュースリリースで述べられているが、4,800万画素の中央の1,200万画素のみを切り取ることで“望遠”と表現しているのだ。
デジタルズームを使用せずに、センサーの中央部分の12メガピクセルを使用してフル解像度の写真や4Kビデオを撮影できます。
Apple ニュースリリース
「このアプローチでは、我々は、ユーザーのための新しい2倍の望遠オプションを追加し、Proカメラシステムの3つの固定レンズを超えて行くことができます。新しいセンサーの真ん中の1,200万画素を使い、光学的な品質でフル解像度の写真と4Kビデオを提供します。」と、iPhone 14シリーズ発表イベントの間に製品マネージャVitor Silva氏は述べている。
「光学2倍望遠」の謳い文句は、Appleのウェブサイトにも掲載されており、同社はこれを“光学品質”と表現している。しかしもちろん、これは別に2倍望遠カメラでも光学望遠でもない。メインカメラ(つまり非望遠カメラ)からのデジタルズームに過ぎない。メインカメラと望遠カメラの画像を合成して処理する訳でもなく、ただのトリミングなのだ。
Appleが2倍望遠機能を提供することに問題はないが、「2倍望遠」と「光学望遠」といううたい文句は、これが単なるデジタルズーム以上のものであると、ユーザーに誤解を与えるのではないだろうか。同社としては、むしろあえてそれを狙ってのことかも知れないが。
ただし、そもそもが4,800万画素と高画素化したことで一つ一つの画素自体が小さくなっていることもあり、画質の低下は否めないだろう。
既にiPhone 13 Proシリーズをお使いの方はお分かりと思うが、標準(広角)カメラの画質に比べると、光学3倍望遠で撮影した画像は、センサーサイズ、レンズの問題もあり、特に暗所での撮影時にかなりノッペリとした、どこか精細感を欠く画像になってしまう。(こだわらなければ気にならないレベルかも知れないが)
4,800万画素センサーでの標準カメラでの撮影についても、デフォルトでの設定は1,200万画素解像度での撮影になっており、通常の撮影ではピクセルビニングによって、4つの画素を1つにまとめて擬似的に大きな1つの画素として扱い、受光面積を広げ、特に暗所での撮影におけるノイズの低減を図っているようだ。だが、これは裏を返せば、4,800万画素での撮影では画素一つ一つの受光面積は従来よりも小さくなってしまうための対策だろう。
と言う事で、4,800万画素センサーの中央部分のみを使う“擬似的”な光学2倍ズームは、“光学”と謳ってはいるが、結局の所デジタルズームでしかないのではないだろうか。
とはいえ、以前、いくつかのAndroidブランドは、トリミングを光学望遠に見せかけて、販売していたこともあったので、この手の誇大広告はこれが初めてのことではない。ただし、Appleが「光学2倍望遠」を謳ったことは、他のメーカーにとっては「え!?そんなことしちゃっていいの?」と、スマートフォン業界全体にある意味衝撃を与えたのではないだろうか。Galaxy S23では2億画素となる「超高画素」センサーが積まれると言われており、今後、同様の手法で、4倍や5倍の望遠を謳い、Appleに対抗するメーカーが現れる可能性もありそうだ。
Appleが超高解像度カメラを採用したことは、理想的な照明の下でより精細感のある画像を提供し、8K動画に繋がる物であり、歓迎すべきことだろう。1人のiPhoneユーザーとして、どうか、ユーザーにとって正直な会社であって欲しいと願う。
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