AMDは、今後の同社にとって大きな意味を持つであろう新たな技術「フォトニクス」を用いたシステムの研究を密かに行っているようだ。今回、2020年に同社が、1つのチップに有機的につながるフォトニクスベースの通信システムをチップに直接接続可能にするスーパーコンピュータに関連する特許を米国特許庁に提出したと、Tom’s Hardwareは報じている。
- U.S Patent Office : OPTICAL DIE – LAST WAFER – LEVEL FANOUT PACKAGE WITH FIBER ATTACH CAPABILITY
- Tom’s Hardware : AMD Photonics Patent Reveals a Hybrid Future
フォトニクスは、光とその発生、検出、操作に焦点を当てた工学だ。光には「粒子と波動の二重性」と呼ばれる2つの性質があり、粒子としての光子と電磁波としての性質の両方の属性を持っている。1960年代のフォトニクスの最初の目標は、光を利用して、標準的なエレクトロニクスで使用されているのと同様の機能を実現することだった。1980年代に光ファイバー通信の時代を迎えると、研究者はその進歩を反映させるためにこの用語を変更した。
フォトニクスは、銅などの金属の代わりに光パルスを使うことで、電気抵抗がなく、それによって電流の損失が起こらないことからエネルギー効率が大幅に向上するとともに、光の速さによって驚異的なデータ通信速度を可能にするという利点がある。最近では、米国とドイツの研究者によって、現在のクロック周波数の100万倍もの速度が可能になる研究が発表され、フォトニクスコンピューティングの大きな可能性が示されている。。
AMDのような企業が、光パルスを組み合わせて1つのチップに伝送する可能性を研究することで、消費電力やレイテンシーが改善され、より高速で高性能なスケーラビリティを実現することができると予想される。
AMDの申請した特許は非常に技術的な物で、フォトニクスベースのコンポーネントについて、I/Oを処理する半導体チップを製造するためにAMDが取るべき必要な措置が示されている。実際の製造は、有機再分配層(ORDL)上に配置されたフォトニックチップとシリコンベースのチップを組み合わせることになる。
上図の各レベルは以下の通りだ。
- 100 – 半導体チップのパッケージ。
- 105 – システムオンチップ (SoC)
- 110 – フォトニックチップ
- 120 – 付属の光ファイバーケーブル
- 130 – モールドコンパウンド
- 135 – シングルウエハ基板
- 140 – 有機再配線層(ORDL)
- 145 – マイクロバンプ SoC (105) とフォトニックチップ (110) を ORDL (140) に接着しています。
- 150 – グロブトップ
- 155 – アンダーフィル
- 160 – 標準的なボールグリッドアレイ (BGA)
次に、標準的なSoCをORDLの上に取り付け、再分配される光パルスを取得し、特定の半導体チップに情報を出し入れすることを示す。次に、SoCはデータを処理し、ORDLを通じてSoCと並列にあるフォトニックチップへ伝送する。光ファイバーケーブルは、チップのフォトニックベースのセクターから送信された情報を、必要な宛先に運ぶことになる。
AMDは、公開された設計の中で、さまざまなコンポーネントをすべて整理して、工場でウェハ基板に直接作成することができ、同社のプロセスを加速させると説明している。
しかし、これは現在の規格では実現できない。現在の再分配層は有機物ではなく、金属製のインターコネクトで「チップの異なる部分にI/Oアクセスを再分配する」とTom’s Hardwareは述べている。つまり、有機ELテレビやモニターに使われている有機材料と同じようなアプローチで、その場合、電気周波数に応じて発光するように使用されているのだ。このような技術は、TSMCのTSV(Through-Silicon-Vias)と同様であり、2次元から3次元のチップ統合を可能にするものである。これら3つのコンポーネントはすべて、それぞれのウェハ基板上で製造できるため、製造プロセスが容易になり、その後、一緒にパッケージングされることになる。
現在見られる有機ベースの技術は有機ELディスプレイで、露光された電気周波数ごとに光を生成するために有機材料を使用するものである。
フォトニクスは、半導体を新たな次元に進化させ、より優れたエネルギー効率と高性能を実現するためのスケーラビリティを高めることができる。近年、トランジスタの高密度化によるメリットが減少する一方で、演算要件は高まる一方であるため、チップ設計者は、性能と、特に重要な電力効率を向上させる、より創造的な方法を模索し始めなければならなくなっている。そういった点でこのコンセプトは非常に高度であり、AMDが現在の技術的限界を超えて新しい戦略を検討していることを示すものだ。
この技術を今後数年のうちには実現しないだろう。しかし、危険で有害な材料の使用を制限し、より有機的な選択肢を選ぶことで、環境面を少しでも長く維持する未来への希望を与えてくれる。
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