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Armが初のハードウェアレイトレーシング対応モバイルGPU「Immortalis」を発表

Armは、次世代フラッグシップ・スマートフォンでの究極のゲーム体験を実現する、新しいGPUファミリー「Immortalis」を発表した。これまで同社が提供していた、GPU「Mali」も新製品が発表されており、これらはそれぞれ別のラインとして、並行して展開されていくという。

この記事の要点
  • Armは、モバイル向けGPUの新シリーズを発表した。
  • この新しい「フラッグシップGPU」は「Immortalis-G715」と名付けられ、将来のスマートフォンにレイトレーシングを導入することを目指している。
  • また、ArmはMailブランドで新しい「プレミアムGPU」を発表している。

2023年のモバイル向けゲームではレイトレーシングが導入されるか

Maliを超えるフラグシップモデルとして投入される第一弾が「Immortalis-G715」となる。これは、「モバイルでハードウェアベースのレイトレーシングサポートを提供する最初のArm GPU」とのことだ。

そもそもが、デスクトップ向けの数百ワットの電力を消費するディスクリートGPUですら処理が大変なハードウェアアクセラレーションによるレイトレーシングを(そのため、低解像度でレンダリングした物のアップスケーリングして表示させてGPUの負荷を下げてフレームレートを稼ぐDLSSFSR2.0などが最近積極的に導入されているわけだが・・・・・・)果たしてモバイルGPUで実現できるのかと言うところが興味深いところだが、Arm GPUではフレームレートを向上させるのに役立ついくつかの技術を搭載しているようだ。例えば、Immortalisと新しいMali GPUはどちらも、UnityタイトルでVRS(Variable Rate Shading:可変レートシェーディング)とAdaptive Performanceをサポートしている。さらに、Armの新しいGPUは、いずれも前世代と比較してラスタライズ性能が15%向上し、効率が改善されると言われている。

Armは、Immortalis-G715を搭載したデバイスのユーザーが期待するレイトレーシング機能や性能について、多くを語っていないため、実際のパフォーマンスがどの程度になるのか不明だ。

ただ、いくつかのデモビデオでは、新しい GPU でレイトレーシング機能を動作させ、2 つのシーンのレイトレーシング機能の有無を比較して表示している。確かに、レイトレーシングされたシーンは、ライティングとシャドウの面で遙かに表現が豊かになっている。ただ、デモの一部は明らかにレイトレーシングの有無だけではない差異があり、レイトレーシングのないものに関しても、あえてレイトレーシングの優位性を示すために意図的に通常用いられる表現が省かれている部分も見られたため、それをもって手放しに賞賛できるかというと微妙なところではあった。

ちなみに、Armによれば、Immortalis GPUのレイトレーシングのハードウェアは、シェーダコア領域の4%しか使っていないのに、ハードウェアアクセラレーションによって300%以上の性能向上が実現されているとのことだ。そのため電力消費はかなり抑えられているという。

ARM 2022 GPUs 8

また、ArmはImmortalis-G715を支える技術のキーポイントをブロックダイアグラムとともに提供した。

immortalis g715 spec

また、詳しいスペックは以下の通りとなる。

特徴スペック説明
アンチエイリアス4x MSAA
8x MSAA
16x MSAA
性能低下を最小限に抑えた4倍マルチサンプリングアンチエイリアシング(MSAA)
APIサポートOpenGL® ES 1.1, 2.0, 3.1, 3.2
Vulkan 1.1, 1.2, 1.3
OpenCL™ 1.1, 1.2, 2.0 Full profile
次世代およびレガシーの2D/3Dグラフィックスアプリケーションをフルサポート
バスインターフェースAMBA®4 ACE
ACE-LITE
AXI
様々なバスインターコネクトや周辺IPに対応可能
L2 キャッシュ512KB~2MBまで設定可能256K、512K、1024Kの2または4スライス
スケーラビリテ10 to 16 cores10コアから16コアまで構成可能で、高度なGPU性能を実現。
Adaptive Scalable Texture Compression (ASTC)ローダイナミックレンジ(LDR)
ハイダイナミックレンジ(HDR)
2D映像、3D映像の両方に対応。
ASTCは、既存のテクスチャ圧縮方式と比較して、画質の向上、メモリ帯域幅の削減、ひいてはエネルギー使用量の削減など、いくつかの利点を備える。
Arm Frame Buffer Compression (AFBC)Version 1.3.24×4 pixel block sizeAFBCは、4×4ピクセルブロックの粒度のピクセルデータへのランダムアクセスを提供するロスレス画像圧縮フォーマットだ。GPUの内部とSoCの外部の両方でメモリ帯域幅を削減するために採用されている。
Arm Fixed Rate Compression (AFRC)Version 1.04×4 pixel block sizeAFRC は非可逆画像圧縮フォーマットとなる。AFRCは、GPUからの外部テクスチャ入力とフレームバッファ出力の圧縮に使用できる。圧縮率を設定することで、そのようなサーフェイスの帯域幅の削減とメモリフットプリントの削減が保証される。
可変レートシェーディングYes可変レートシェーディングは、個々の光線がシーンの周りを通る経路をモデル化することによって、リアルな照明と影を生成するコンピュータグラフィックス技術となる。
可変レートシェーディング・パイプライン、プリミティブ、アタッチメントのシェーディング率

・最大4×4シェーディングレート
可変レートシェーディングは、フラグメントシェーディングの頻度とラスタライズの頻度を切り離すことで、知覚される視覚品質を維持しながらエネルギー節約を実現する機会を提供する。

最新のMali GPUと比較した物が下記の図となる。両者見比べてみるとかなり多くの共通点が見られる。どちらのGPUファミリーも第4世代のValhallaアーキテクチャを採用し、VRS、Adaptive Performance、新しいExecution Engineを提供するが、Immortalis GPUは専用のRTコアに加えて、より多くの従来のGPUコアが利用可能となる。

immortalis mali comparison

Arm Maliは、モバイル業界にとって非常に重要なGPUであり、Armのパートナーは、これまでに80億個という驚くべき数のMali GPUを出荷している。Immortalis-G715は、おそらくCESとMWCイベントで発表される新しいスマートデバイスとともに、2023年に登場すると見られる。Armは、CPUの設計と改良にも力を注いでおり、本日、上記のGPUとともに、新しいArmv9 CPUをいくつか発表している

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masapoco

TEXAL管理人。中学生の時にWindows95を使っていたくらいの年齢。大学では物理を専攻していたこともあり、物理・宇宙関係の話題が得意だが、テクノロジー関係の話題も大好き。最近は半導体関連に特に興味あり。アニメ・ゲーム・文学も好き。最近の推しは、アニメ『サマータイムレンダ』

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