7月末、韓国の研究者らが発表した常温常圧超伝導体であるとする「LK-99」について、これの正当性を確認するための世界的な検証が行われている。
論文が発表された直後の反応は静かな物で、世間一般の反応も懐疑的なものだったが、その後一部の研究機関が反磁性を確認出来たと発表したことや、シミュレーションの結果あり得ない話ではなさそうだと言われ始め、多くの報道機関もこれを報じるようになり、状況は過熱している。
現在、10を超える研究チームがこのLK-99が本当に常温常圧超伝導体なのかどうかを検証すべく取り組んでおり、その結果は英語版Wikipediaに即時反映されている。
Wikipediaによれば、今現在、合計16の別々のチームが再現実験に取り組んでいる。
結果については、8月4日時点では完全な超伝導特性を確認したチームは1チームもない。中国の華中科技大学の研究者がマイスナー効果の証である反磁性を確認したと発表したことや、中国南京の東南大学物理学部のチームが、-163℃ではあるが、電気抵抗ゼロを測定したと報告した。しかし、世界中の研究チームは、電気抵抗ゼロとマイスナー効果による磁気浮遊という超伝導の両方を備える物の検証には成功していないのだ。
韓国超伝導低温学会(KSSC)は、オリジナルの実験を科学的に評価する目的で検証委員会を設置した。そして、KSSCによる最初の評価は、利用可能な研究(不正な最初の論文と “公式な “2番目の論文の両方)、およびLK-99に関する公開データを検証した結果、「LK-99が室温超伝導体と呼べるという主張を支持しない」と、述べている。
この物質を作った量子エネルギー研究所が去る3月公開した映像でLK-99をぶら下げて磁石を持って対面反発する姿は銅など超伝導体ではない物質でも現れる現象というのが検証委の説明だ。
また検証委は超伝導体が空中に浮揚したまま固定されるには、マイスナー効果とともに超伝導体が磁石上の特定の位置に留まったまま固定される「磁気線束固定(フラックスピンニング)」効果が現れなければならないが、映像では常に一部が磁石に付いており、磁気線束固定とは言いがたいと強調した。
これらの最初の結論は、量子エネルギー研究所を刺激し、LK-99が本当に室温超伝導体であることを検証できるサンプルを委員会に提供すると回答した。ただ、論文が審査中であり、審査完了後に提供できるという回答を受けたと伝えた。検証委員会は「審査は2~4週間かかると言われ、さらに遅くなる可能性もある」としている。
一方、昨日超伝導を再現したと主張した中国の研究者たちは、arXivに論文を発表した。そこでは、LK-99(Pb10-xCux[PO4]6O)の多結晶サンプルを製造するために固体合成をどのように使ったかについて詳しく書かれている。彼らはまた、100ケルビン(-173℃)を超えると、元の韓国の実験で検証された110ケルビン(-163℃)に比べて、元の試料よりもわずかに悪い高温超伝導を検証した。
結論の説明で彼らが使っている言葉が示唆的である:LK-99は “高温超伝導体を探索する可能性のある候補である”。もしそうだとすれば、彼らが検証したLK-99は、実際には室温超伝導体ではないということになる。
Junwen Lai博士らが率いる瀋陽国家材料科学研究所の別の中国研究チームは、8月1日に極めて類似した結果を発表している。室温での確認は、これまでのところ、どこの研究機関も再現できていない。
LK-99が比較的扱いやすい温度(マイナスであれば)で超伝導を示すことは事実のようだが、それでは本来の主張とは異なる。歴史的な偉業とはいないだろう。
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