長年にわたり、さまざまな火星探査機や着陸機から、赤い惑星の埃っぽい風景を横切る塵旋風(ダスト・デビル)の画像を見てきた。しかし、今回、火星探査機「パーサヴィアランス」のマイクと、探査機の真上を通過した渦巻く砂嵐のおかげで、火星の塵旋風がどのような音なのかもわかってきたのだ。
パーサヴィアランスには、レーザーを照射する科学装置「スーパーカム」にマイクが搭載されている。スーパーカムが岩石を爆破すると、その音から岩石の組成を知る手がかりが得られるのだ。しかし、このマイクの最も期待された使い方のひとつは、火星そのものの音を聞くことができることだった。
スーパーカムの主任研究員であるパデュー大学のRoger Wiens氏は、「他の道具を使うよりも、音を使った方が多くのことを知ることができます。このマイクロフォンは、音速とまではいきませんが、1秒間に10万回近いサンプリングが可能です。火星がどのようなものか、より強く感じ取ることができるようになるのです。」と述べている。
火星探査機「パーサヴィアランス」は、1日に何度も塵旋風を目撃しているようで、塵旋風は決して珍しい現象ではない。今年初めに発表された論文では、ジェゼロクレーターでのパーサヴィアランスの最初の216日間のミッションの詳細が報告され、火星の最新のローバーが、火星を南北に走る「ダストストーム軌道」に位置しているように見えることが報告されている。ジェゼロクレーターは、特に塵と風の活動が活発な場所だ。しかし、塵旋風がローバー上空を通過する際にマイクをオンにしたのは今回が初めてだ。
データと電力を節約するため、マイクは常にオンになっているわけではない。2〜3日に1回、3分程度録音している。偶然にも、2021年9月27日、塵旋風がパーサヴィアランスの上空を通過した瞬間に、スーパーカムのマイクが戻されたのだ。音声には、約10秒間の突風(研究者は時速約40kmと推定)のほか、何百もの塵がローバーにぶつかったときのピーンという音も入っている。
「これらのユニークなマルチセンサデータとモデリングを組み合わせることで、塵旋風の大きさは約25メートル、高さは少なくとも118メートルで、毎秒約5メートルで走行する探査機の真上を通過したことがわかりました」と報告している。
塵旋風の音声記録は、気圧の測定やタイムラプス写真とともに、火星の大気や気象の理解に役立っている。
「気圧が下がるのを見たり、風の音を聞いたり、小さな嵐の目である少しの沈黙があったり、また風の音を聞いたり、気圧が上がるのを見たりすることができます」とWiens氏はプレスリリースで述べている。
それはすべて数秒間の出来事だった。
「風は速く、時速約25マイルですが、地球上の塵旋風のようなものです。火星の気圧は非常に低いので、同じ速さの風でも、地球で吹いている風の1%の圧力で吹いています。強力な風ではありませんが、ダストデビルを作るために空気中に砂粒を舞い上げるには十分です。」とWeins氏は述べている。
パーサヴィアランスの動力源は原子力であるため、探査機チームはスピリットやオポチュニティなどの以前の探査機のように、塵が太陽電池パネルに集まりミッションに影響を与えることを心配する必要はない。しかし、ジェゼロクレーターでは、もっと多くの塵が空中に舞い上がっているようだ。
一方、約3,452 km (2,145 マイル) 離れたところにある火星探査機 インサイトは、塵が太陽電池パネルを覆っているため、まもなく停止される予定だ。研究者たちは、インサイトの着陸機があるエリジウム平原で、風と塵の悪魔を報告している。
「地球と同じように、火星でも地域によって異なる天候があります。私たちのすべての機器やツール、特にマイクを使用すると、火星にいるような具体的な感覚を得ることができます。」と、Weins氏は述べている。
この記事は、NANCY ATKINSON氏によって執筆され、Universe Todayに掲載されたものを、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際)に則り、翻訳・転載したものです。元記事はこちらからお読み頂けます。
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