優れたオープンワールドゲームには、プレイヤーの没入感を高める小さなディテールが数多くちりばめられている。その重要な要素のひとつが、NPCによるおしゃべりだ。特に、直接対話するものではなく、ゲーム背景の中から聞こえてくるおしゃべりなどのセリフは「バーク」と呼ばれ、ゲーム制作者がひとつひとつ書き上げる必要があり、時間と手間がかかる作業である。『アサシン クリード』や『ウォッチドッグス』などの人気オープンワールドゲームシリーズを手がけるUBIsoftは、これに関連するゲーム開発者の負担を軽減するために、「バーク」の初稿を生成する機械学習ツール「Ghostwriter」を開発している事を明らかにした。
同社は、このツールはビデオゲームのライターに取って代わるものではなく、バークの執筆作業を軽減するものであるとしている。Ghostwriterは、脚本家が一般的なシナリオに集中する時間を確保するために、バークの初稿を出力するのだ。
「群衆のおしゃべりや吠え声は、ゲームにおけるプレイヤーの没入感の中心的な特徴です。NPC同士の会話、戦闘中の敵のセリフ、エリアに入ったときに発動するやりとりなどはすべて、よりリアルな世界体験をもたらし、プレイヤーの行動とは別に周囲のゲームが存在しているように感じさせます。」と、UBIsoftはブログ記事で述べている。
「しかし、どちらも脚本家の時間と創造的な努力を必要とし、他の核となるプロットアイテムに費やすことができる。Ghostwriterは、その時間を解放し、なおかつ脚本家にある程度の創造的なコントロールを可能にします」
このプロセスは、まず脚本家がキャラクターと、生成したい対話または発話の種類を作成することから始まる。その後、Ghostwriterがバリエーションを生成し、脚本家はその中から必要なものを選び、編集することが出来る。このプロセスでは、評価と改善の方法としてペアワイズ法を使用する。つまり、生成されたバリエーションごとに、ツールは2つの選択肢を提供し、脚本家はそれを比較し、選択することになる。1つが選択されると、ツールは選択された選択肢から学習していく。脚本家による何千もの選択が行われた後、ツールはより効果的で正確なものになる、というものだ。
Ghostwriterを開発したUBIsoftの研究開発担当のBen Swanson氏は、Ghostwriterのようなテクノロジーは、脚本家がツールの使い方だけでなく、ビデオゲームの制作プロセスに組み込む方法を学ぶ必要があると述べている。Swanson氏と彼のチームの目標は、このAIの力をシナリオ・デザイナーに与え、彼らが最終的に自分のデザイン・ニーズに合わせた独自のAIシステムを作ることができるようにすることだ。そのために制作側は、Ghostwriterで使用する機械学習モデルを誰でも簡単に自作できるErnestineというツールを作成した。
また、Swanson氏はブログ記事で、いくつかの洞察を披露している。Ghostwriterは、開発者がAI機能を活用しやすいはずのユーザーフレンドリーなインターフェースのおかげで、今後のUBIsoftのタイトルに実装されるだろうと考えています。
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