地球の表面は、物理的、化学的、生物学的なシステムをつなぐ、私たちの惑星の「生きた皮膚」である。地質学的な時間の経過とともに、この地表の進化に伴って景観が変化し、炭素循環や河川が土砂を海に運び込む際の栄養循環が調整されている。
これらの相互作用は、生態系や生物多様性(地球上に生息する多くの生物)に多大な影響を及ぼす。
このように、地球の景観が数百万年の間にどのように変化してきたかを復元することは、地球の形状の変化や、気候やテクトニクスなどの相互作用を理解するための基本的なステップとなる。また、生物多様性の進化を理解する手がかりにもなる。
シドニー大学の研究チームは、フランスの科学者(フランス国立科学研究センター、ENSパリ大学、グルノーブル大学、リヨン大学)と協力して、このたび、地球表面の変化に関する詳細な地質モデルを権威ある学術誌『Science』に発表した。
私たちが開発したのは、過去1億年間を10kmの高解像度で再現した初のダイナミックモデル(コンピューターシミュレーション)だ。このモデルによって、地球の表面が時間とともにどのように変化し、それが土砂の移動と沈降にどのような影響を与えたかが、かつてないほど詳細に明らかにされた。
100万年単位で、プレートテクトニクスや気候の力、地震や風化、河川の変化などの地表のプロセスを組み込んだフレームワークに基づいてモデル化されている。
3年の歳月を経て
このプロジェクトは、数百万年にわたる変化をシミュレーションできる新しい地球規模の景観進化モデルの開発に着手した3年前に始まった。また、地球の景観の歴史である古地理など、他の情報を自動的にフレームワークに追加する方法も発見した。
今回の研究では、最先端のプレートテクトニクス復元と、地球規模での過去の気候のシミュレーションを用いたフレームワークを採用した。
私たちの高度なコンピューターシミュレーションは、オーストラリアの国立計算機基盤を利用し、数百のコンピュータープロセッサーで実行された。各シミュレーションには数日かかり、過去1億年の地球表面の進化を再構築するための全体像を構築した。
このような計算能力により、地球上の地形の高低差(標高)や、水や土砂の流れがわかる高解像度の地図が全地球で作成されている。
これらはすべて、既存の地質学的観測とよく適合している。例えば、現在の河川の堆積物や水の流れ、流域面積、地震調査、地域や世界の長期的な侵食傾向などのデータを組み合わせた。
私たちの主な成果は、500万年間隔のタイムベースの地球地図として、オープンサイエンス・フレームワークから入手可能だ。
空間と時間を超えた水と土砂のフラックス
これは、土や岩などの物質が風や水によって削られ、運ばれていくゆっくりとしたプロセスだ。その結果、土砂の流れが発生する。
生命の根源である炭素を地球規模で循環させる「炭素循環」において、侵食は重要な役割を担っている。土砂の流れが時空を超えてどのように変化してきたかを調べることは、地球の気候が過去にどのように変化してきたかを理解する上で重要だ。
その結果、河川網の経年変化を描いた集水域ダイナミクスから、大規模な堆積盆の緩やかな変化まで、地球の土砂輸送の重要な要素を再現していることが分かった。
また、既存の岩石層(地層)の観測結果と、岩石層の予測との間にいくつかの矛盾があることも分かった。このことは、このモデルが過去の景観の復元を検証し、改良するのに有用であることを示している。
私たちがシミュレーションした過去の風景は、様々なプロセス、特に水の動きである水文系と完全に統合されており、より強固で詳細な地球表面の景色を提供している。
今回の研究により、常に進化する地球表面が、山頂から海底への堆積物の移動に果たした役割の詳細が明らかになり、炭素循環や地球の気候変動を深い時間軸で制御していることが判明した。
これらの成果を地質学的な記録と合わせて調べることで、地球がどのように栄養素を循環させ、私たちが知る生命を生み出してきたかなど、地球システムのさまざまな重要な特徴に関する長年の疑問に答えることができるようになるだろう。
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