ビデオゲームをプレイすることによる影響については、悪影響が大きく取り上げられることが多い。実際、際限なくゲームをプレイすることで視力への影響だったり、睡眠不足になるなどの有害な側面もあるだろう。しかし、ここ数年の新たな研究結果によると、ビデオゲームが認知面において多くのメリットをもたらすことを報告している。今回ご紹介する研究もそういったゲームのポジティブな側面を教えてくれる物だ。
- Neuroimage: Reports : Video game players have improved decision-making abilities and enhanced brain activities
- Georgia State University : Study: Video Game Players Show Enhanced Brain Activity, Decision-Making Skill
ジョージア州立大学の研究者らは、磁気共鳴機能画像法(fMRI)を用いて、ビデオゲームをプレイすることが脳の活動、とくに意思決定タスクに及ぼす影響を調査した。研究者らは、「ビデオゲームをプレイする際には、入ってくる感覚情報を素早く活用し、的確に判断を繰り返すことが求められることが多いため、意思決定タスクはビデオゲームプレイの効果を探るのに適している」と説明している。
この研究には50人弱の若い被験者が集められ、28人はハードゲーマー(週5時間以上のゲーム)、19人はライトゲーマー(週1時間未満のゲーム)と分類された。MRI装置の中で、被験者は意思決定能力を測定するために考案された動作分類の課題に取り組んだ。
課題では、2組の異なる色の点が反対方向に動く様子を観察した。2秒間ドットを見た後、被験者はすぐに、ある特定の色のドットがどの方向に動いていると思うかを答えなければならない。そして、3秒間の反応時間をおいてから、この課題が繰り返される。この課題は、脳が感覚的な情報を処理し、それに対してどの程度の速さで判断を下すことができるかを評価するために考案されたものだ。
行動学的な観点から見ると、ゲームをしていない人に比べて、ゲームをしている人の方が、より正確に答え、より速く反応することがわかった。しかし、より興味深いことに、脳画像データによると、ゲームをしている人は、課題に対する脳の反応も異なっていたのだ。
「本研究は、ビデオゲームプレーヤーが意思決定タスクのパフォーマンスを向上させ、これらの違いが舌回、補足運動野、視床におけるノードおよびネットワーク活動の特定の変化と相関していることを実証しました。これらの結果は、ビデオゲームのプレイが、意思決定能力を向上させるために、感覚、知覚、行動へのマッピングのサブプロセスのいくつかを潜在的に強化することを示しています。」と研究者は新しい研究で結論付けている。「
研究者達は、これらの知見が、ビデオゲームが認知トレーニングに使われる可能性を秘めていると指摘している。次のステップとして、意思決定に関する脳の反応が改善されるかどうかを調べるテストとして、ビデオゲームをしていない人に少量のゲームをさせることができないかどうかを探っている。
「これらの知見は、ビデオゲームのプレイがタスクパフォーマンスを向上させるために脳を変化させる仕組みと、タスク固有の活動を増加させる潜在的な意味を明らかにし始めました。この研究は、認知トレーニングの潜在的な方法だけでなく、トレーニングが脳にどのような影響を与えるかを理解することにつながります。」と研究者は指摘する。
この種の実験のバリエーションは、過去にも行われている。特に、ロチェスター大学のチームは、脳画像データはないものの、10年ほど前に非常に似たようなことを試みている。
その先行研究では、多数の非ゲーマーを募集し、2つのグループに分けた。一方のグループは50時間のファーストパーソン・シューティング(FPS)ゲームを、もう一方のグループは50時間のスローペースなストラテジーゲームをプレイしてもらった。
その後、意思決定能力を測定するためにデザインされたいくつかのタスクを全グループが完了した。その結果、アクションゲームをプレイした被験者は、ストラテジーゲームをプレイした被験者と比較して、意思決定テストの回答が25%速くなったことがわかった。さらに驚くべきことに、アクションゲームのトレーニングを受けたゲーマーは、その回答自体も正確であった。
アクションゲームのプレイヤーは素早いが正確性に欠けると言う認識が間違いであることが研究で明らかになったわけだ。。2010年、共同研究者のDaphne Bavelier教授は、「アクションゲームプレイヤーは、より正確な判断を下し、より素早く行動しています。アクションゲームプレーヤーは、単位時間あたりにより多くの正しい判断を下しているのです。もしあなたが外科医であったり、戦場の真ん中にいるのであれば、それは大きな違いを生むことになるのです。」と述べている。
さらに最近、27の研究の系統的レビューが昨年発表され、ビデオゲームが認知能力と意思決定を向上させることが分かった。しかし、そのレビューでは、ビデオゲームには脳を鍛える効果があるが、過度のゲームによって引き起こされる問題もたくさんある、と慎重な結論が出されている。最終的には、「生徒の認知学習を向上させるために、教師がコントロールできるビデオゲームを開発するための研究を今後行うべき」と提言している。
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