かつて、暗号通貨ブームの波に乗り、大きな恩恵を受けたNVIDIAは、そのことを忘れたいのか、なかったことにしたいのか、「暗号通貨は社会に役立つものではない」と切り捨て、同社のGPUをAIのために役立てるのが最も素晴らしい方法であると考えている。
「仮想通貨は並列処理が必要であり、NVIDIAが最も優れているため、その目的で使用されるようになりました。仮想通貨は社会にとって有益なものをもたらしません。ですが、AIはそうではありません」と、NVIDIAのCTOであるMichael Kagan氏はThe Guardianのインタビューで語っている。
MicrosoftのChatGPTは、10,000台のNVIDIA A100 GPUをベースにしたスーパーコンピュータで学習された(一部の実装では異なるハードウェアが使用されることもあります)。また、Generative Pre-trained Transformerは、NVIDIAのDGXサーバーを利用して動作している。
しかし、Microsoftが地球上のほぼすべての人々に利用できる製品を作るために10,000台のGPUを使用している一方で、BitcoinコインやEthereumのマイニングには何十万台ものGPUが使われているとされている。これらの仮想通貨は、リスクを冒して投資した人々や、資産を仮想通貨で運用することを選択した人々にとっては有益であると言える。
数年前、NVIDIAは前年比50~60%の収益成長を遂げていた。GPUはEthereumのようなコインを採掘するための最良の方法であり、その価値は上がり続けていた。ベンチマークであるBitcoin通貨は、2022年春、いくつかの有名な暗号通貨プラットフォームの失敗を受けて業界が崩壊し始める前に、6万ドル以上に達していた。同時に、Ethereumは、プルーフ・オブ・ワークのようにハイパワーコンピューティングを必要としないプルーフ・オブ・ステークへの移行を最終決定していた。現在、Bitcoinは25,000ドル前後で推移している。
Bitpro Consultingのアナリストによると、Ethereumのマイナーたちは、2021年初頭から2022年半ばの期間に、GPUに150億ドル(約1兆6500億円)を費やしたと推定されている。マイナーたちは最高のゲーム用グラフィックカードを購入し、この需要によってゲーム用ハードウェアの価格が一般の購入者にとって手が届かないレベルにまで高騰した。
公式には、NVIDIAはCMP(クリプトマイニングプロセッサ)GPUをプロフェッショナルマイナー向けに販売していたが、実際には、同社のゲーム用グラフィックカードも定価より高い価格で小売市場で暗号通貨マイナーマイナーに販売されていた。事実、NVIDIAは、2018年度の連続した四半期において、暗号通貨マイニングが同社のゲーム収益の年率成長の重要な要因であったことを開示しなかったため、米国証券取引委員会(SEC)に550万ドル(約6億円)の罰金を支払わなければならなかった程だ。
The Guardianとのインタビューで、Kagan氏は、暗号通貨マイナーがNVIDIAのハードウェアを大量に購入したことを指摘した。彼は、暗号通貨市場の崩壊を、これらのデジタル通貨が世の中の役に立つことは何もないからだとしている。Kagan氏によれば、AIは別の話である。ChatGPTのようなマシンは、何千ものNVIDIA GPUを使用して訓練され、世界に変革をもたらす技術を提供する。「ChatGPTを使えば、誰もが自分の機械、自分のプログラムを作ることができるのです」
「人々は狂ったようなことをすることがあるが、彼らがあなたの製品を求めている場合、あなたは彼らに製品を売る。しかし、会社をその目的に沿って再編するべきではない」と彼は付け加えた。
AIがついに好奇心の域を超えつつあるという確信を持っているのは、NVIDIAだけではない。MicrosoftはGPTを搭載したBingの公開で注目を集め、Googleはその数週間後にBard AIのプレビューを急遽公開した。MicrosoftやAmazonなどは、AI戦争の過熱に伴い、AIに最適化されたNVIDIA GPUを何千個も購入しており、NVIDIAもこの傾向が続くことを願っているに違いない。
NVIDIAは、暗号市場の底が抜けた後、収益が減少している。ある分析によると、GPUの売上は2022年第4四半期時点で前年比42%減少している。同社は20%の市場縮小を見たが、収益の減少はわずかなものだった。それでも、毎四半期の50%増とは雲泥の差である。NVIDIA CEOのJensen Huangは、チャットボットの到来を “iPhone登場のような衝撃”と呼んで、AIについても言及している。彼が正しければ、NVIDIAはここ数年の高騰した売上に戻るかも知れない。だが、一消費者としては、またGPUの価格が高騰し、手に入りにくくなることだけは避けてほしいものだ。
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