現在2030年代半ばに、有人火星探査が目標として掲げられており、様々な研究、ミッションが行われている。そしてその後には火星移住の計画もあるが、人類がいつの日か火星で生存し繁栄するためには、酸素の供給が不可欠だ。
酸素を生成するために、この分野でも様々な研究が行われているが、現在行われている中で先日有望な結果を残したのが、MITによるMOXIE実験だ。火星探査機パーサヴィアランスに搭載され、既に火星の惑星上で1年間のテストの後、昼でも夜でも、そして季節を越えて確実に生産できることが判明した。
金色のケーキ箱サイズの「MOXIE」は、Mars Oxygen In-Situ Resource Utilization Experimentの略で、2020年に探査機パーサヴィアランスに搭載されて火星に旅立った。2021年2月にジェゼロ・クレーターに着陸した後、このユニットは稼働を始め、約2カ月後に最初の酸素、約5.4グラムを生産したと言う。
MOXIEは、炭素を多く含む地球の大気から空気を取り込み、フィルターを通して汚染物質を取り除き、圧縮した後、加熱することでこれを実現する。この時、酸化物電解槽が二酸化炭素を電気化学的に一酸化炭素と酸素のイオンに分解する。このイオンを分離・再結合して酸素分子を生成し、呼吸可能な酸素とする。
MOXIEは、探査機「パーサヴィアランス」に搭載されている数多くの科学実験の1つに過ぎないため、科学者は常にそれを実験するわけにはいかない。その代わり、1回につき約1時間、さまざまなシナリオでMOXIEをテストするために、2021年を通じて7つの実験が行われた。つまり、昼と夜の大気の状態や、火星の季節の変化に合わせて実験が行われた。
どの実験でも、MOXIEは目標とする6グラムの酸素を確実に発生させた。MITの科学者は、これは地球上の適度な木が生産する酸素とほぼ同じであると指摘し、MOXIEが様々な条件下で信頼できるベースでこれを達成できることを実証することで、人類を維持できるより大きなシステムに向けて重要な一歩を踏み出したと考えている。
「これは、他の惑星の表面にある資源を実際に使用し、それを化学的に変換して人間のミッションに有用なものにした最初のデモンストレーションです。その意味でも歴史的なことです。」と、Moxie実験の副主任研究員であり、MITの航空学、宇宙学の教授であるJeffrey Hoffman氏は述べている。
これらの実験は成功したが、科学者たちはまだMoxieに期待する重要な項目がたくさんある。火星の大気は激しく変動しており、温度とともに密度も大きく変化する。このことは、MOXIEチームにとって挑戦であり、近い将来、温度が大きく変化する夜明けや夕暮れ時にシステムを作動させることを検討している。また、次のステップとしては、大気の密度と二酸化炭素のレベルが最も高くなる火星の春に、その運用を強化することだ。
MOXIEの主任研究員であるMichael Hecht氏は、「次の運転は、1年のうちで最も密度が高くなる時期で、できるだけ多くの酸素を作りたいのです。だから、あえてすべてを高く設定し、できる限り長く走らせるつもりです。」と述べている。
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