フランスのAIスタートアップ、Mistral AIがこれまでで最大の言語モデル「Mistral Large」を発表した。このモデルは、32Kのコンテキストウィンドウを持ち、とりわけヨーロッパの言語と文化の多様性を捉えるように設計されている。
Mistral AIによると、この新モデルはテキスト理解、テキスト変換、コード生成を含む複雑な多言語タスクに適しているという。
一般的なベンチマークでは良好な結果を達成しており、有名な言語理解ベンチマークMMLUでは(GPT-4に次いで)API経由で一般に入手可能なモデルの中で2番目に優れている。ちなみに、GoogleのUltraモデルはこれより更に高性能だが、まだAPI経由で一般に利用可能ではない。
特徴としては、Mistral Largeは、ヨーロッパ諸国の文化的差異と言語的多様性を捉えるように特別に設計されている点が挙げられる。特に英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、イタリア語に堪能で、Mistral によれば「文法と文化的背景をニュアンスで理解」しているとのことだ。
Mistral Largeのもう一つの強みは、開発者がモデレーションポリシーを形成できるような正確な指示に従うことができることだ。いわゆる「関数呼び出し」によって、内部コード、API、またはデータベースとの複雑な相互作用のために、他のツールやアプリケーションと言語モデルを使用することも可能になる。
コスト効率のために最適化されたMistral Small
Mistral AIは、合わせて、低レイテンシとコスト効率に最適化されたMistral Smallモデルも発表している。Largeモデルとは対照的に、Mistral Smallはオープンソースであり、Mixtral 8x7Bとほぼ同等とのことだ。
Mistral Largeは現在、社内プラットフォーム「La Plateforme」と、本日提携を発表したMicrosoftのAzure AIをAPI経由で利用できる。Mistral AIによると、ベータ版の顧客からの反応は上々のようだ。
Mistral AIは更に今回新たにMistralモデルに基づく多言語会話アシスタント「Le Chat Mistral」もリリースした。
Le Chatは、Mistral AIの提供する様々なモデルと対話するためのチャット型エントリーポイントとして設計されている。これは、OpenAIのChatGPTとGPT-4やGPT-3.5などの関係性と同様だ。
Le Chatでは、Mistral Large、Mistral Small、そしてMistral AIが開発を進めているプロトタイプモデル「Mistral Next」を使用することが可能だ。Le Chatのベータ登録はこちらから行う事が出来る。
また、企業向けには、Mistralが “Chat Enterprise “を立ち上げ、モデレーション・システムを提供し、ローカルに展開することができる。モデレーション・システムは、LLMが疑わしいコンテンツを生成する恐れがある場合に警告を発するように設計されている。
Mistral Largeのリリースにより、フランスのAIスタートアップは、言語モデルの分野でOpenAIやそのGPT-4モデルのような大手企業と、わずかな予算で競争する準備ができていることを示している。ヨーロッパの言語と文化に焦点を当てることで、Mistral AIはヨーロッパのAI市場において重要なプレーヤーになる可能性がある。
とはいえ、リリースから1年経った今でもOpenAIのGPT-4が他の追随を許さず、依然としてトップを維持していること点もまた注目に値するだろう。
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