機械翻訳と言えば、古くはエキサイト翻訳(2022年10月31日サービス終了)が良くも悪くもネット上で話題となり、その後はGoogle翻訳の精度に驚かされた物だが、近年この分野で急速に台頭してきているのが、ドイツ発のスタートアップ「DeepL」である。ニューラルネットワークを核としたその翻訳の精度は、一部では明らかにGoogle翻訳のそれを上回るものであり、ユーザー数を伸ばしている。そして、このスタートアップが本日新たな新たな投資を受け入れ、資産価値が10億ドル以上となる、いわゆる「ユニコーン企業」の仲間入りをしたことが明らかになった。
DeepLは、ほとんどのユーザーにとって十分な量の基本バージョンを無料で提供しており、iOS、Android、Windows、およびmacOSオペレーティングシステム用の独自のアプリケーションもリリースしている。精度は確かに高いが、まだ完璧ではない。そして、同社は更なる研究開発に投資する必要があり、その為の資金調達を実施したのだ。
出資額は正式には不明だが、TechCrunchは関係者の話として、1億ドル程度と推測している。
同スタートアップは、その他の財務数値も公開していないが、事情に詳しい関係者によると、10億ドル以上という評価額は、昨年末のDeepLの年間売上高が5,000万ドルに達していること。さらに、前年度比で100%成長し、収支が均衡に近づいた事からのようだ。
今回の投資によって、DeepLは、同社が主力とする法人顧客向けサービスをさらに充実させる予定だ。個人でも無料で使えるが、DeepL社のビジネスは、中小企業向けのソリューションの提供に本質がある。また、Twitterの対抗馬となりうる分散型ソーシャルネットワーク「Mastodon」内の翻訳も提供している。
このドイツのスタートアップは、より大きな企業へのリーチを拡大することに加え、有名なアプリ「Grammarly」のようなスタイルの、文章を校正する新しいツールも計画している。後者は現在クローズドベータが行われており、リリースが近いとされているが、その時期は不明だ。
ここまで快進撃を続けてきたDeepLだが、今日の市場を考えると、ポジションの強化は必要かも知れない。この1年で、非常に複雑な技術に基づきながらも、ユーザー視点では直感的に使いやすい、高度なAIを使ったツールが注目され始めている。例えば、「DALL-E」というコンピュータ画像生成ツールは、いくつかの単語から面白い作品を作ることができるし、「ChatGPT」という言語モデルは、会話をするように、ボットに様々な質問を投げかけたり、文章の作成を依頼したり出来る。
この2つのツールの背後には、最大300億ドルの価値を持ち、最大100億ドルの資金を投入しようとしているハイテク大手Microsoftの関心を集めているOpenAIがいる。人工知能の分野で経験を積んだ同社は、DeepLと言語翻訳の強力なライバルになり得るだろう。
「我々は、翻訳の面では常にレースモードにあります。我々は大きな敵に慣れており、それを乗り越えて突き進むことが我々の文化の一部なのです。」と、DeepL CEOのJaroslaw Kutylowski氏はTechCrunchのインタビューで述べている。
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